日本政府ではクラウドの活用としてIaaSの利用が始まっています。Salesforceは新たに公共機関向けに特化したPublic Sector Solutionsの提供を開始しました。今回のブログではIaaSの先の段階にあるSaaS、Public Sector Solutionsの強みを通して公共機関での活用そしてTime To Valueという視点をご紹介します。

 

日本政府のデジタル トランスフォーメーション

2021年に発足したデジタル庁により主に日本の公共機関のデジタルトランスフォーメーションが進められています。デジタル庁のもとで、大きく以下の4つのデジタル関連の政策への取り組みが進んでいます。

  1. デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及:マイナンバー、ガバメントクラウド、地方公共団体システムの統一や窓口DX
  2. 国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現:サービスデザイン、公共フロントサービスや準公共分野のデジタル化
  3. 国等の情報システムの整備及び管理:国等の情報システムの統括管理や各府省共通の共同プロジェクトの推進
  4. その他:デジタル田園都市国家構想やデジタル人材の育成や確保

これらの取り組みは、大きな効果を生み出しつつあります。例えば、マイナンバーカードは現在国民の約69.8%が申請(令和5年2月19日時点 総務省公表)が進んでいます。健康保険や運転免許等が統合されていくことから、国民が安心して使えるようにマイナポータルや認証の基盤といったものの改善や整備が進んでいます。また、民間で急速に利用がすすんできているクラウドサービスの活用も日本版のガバメントクラウド(政府用クラウドサービス)として整備が進んでいます。現在、クラウドサービスのInfrastructure as a Service(以下 IaaS)領域において4社(アマゾンウェブサービス、マイクロソフト、グーグル、オラクル)が認定されており、クラウドサービスによる高いセキュリティと拡張性を活用するとともにインフラコストの削減 を実現する取り組みが進んでいます。既に公共機関が個別で運用管理していたインフラやアプリケーションのクラウドサービスへの移行は始まっており、大きな効果が期待されています。

インフラ面は良くなるかもしれないが、これまでの公共機関の国民向けサービスのアプリケーションはどちらかというとデザイン面で使い勝手が悪く、直感的にわかりにくいという課題がありました。デジタル庁では、デザインと開発の効率化、さらに利用者に使い勝手のよいものを提供していこうというデザインシステムという取り組みも開始されています。使い勝手をよくするということはアプリケーション間のデータを連携させ活用していくということも必要ですが、こちらも取り組みが進めており、ワンストップでの国民サービスの実現に向けて適切な推進がされているようです。

国民サービスの構築でデザインと開発の効率化、かつ利用者にとって使い勝手が良くしていく、さらにワンストップ実現にデータを連携させるというのはかなり大掛かりです。ルール整備や定着化、開発における規約を公共機関側やアプリケーションを構築するIT関連企業への周知徹底もあります。何より、利用者である国民や公共機関職員がこれは使いやすい、使っていきたいと思わせるのはなかなか容易ではないでしょう。この使い勝手のよい、利用しやすいから積極的に使っていこうと認識する迄にかかる時間をSalesfoceではTime To Valueと呼んでいます。言い換えると、お客様が製品・サービスの利用を開始してから、その価値を実感するまでにかかる時間という概念です。

 

 

Time To Value を実現するSalesforceの Public Sector Solutions

Salesforceはお客様の情報を管理し接点を強化し、関連するデータを管理するためのCRMと言われるアプリケーションや開発環境をクラウドサービスのSoftware as a Service(以下 SaaS)で提供している企業です。Salesforceでは、2020年より世界の公共機関のデジタル化ニーズに応えたSaaSアプリケーション、Salesforce Industry Cloud Public Sector Solutions (以下 PSS)という製品を日本以外でご提供をしておりました。(以下、Salesforceグローバル資料)

 

 

 

世界各地の公共機関との対話を通じて、公共機関向けに必要となるデータモデルや業務プロセスを搭載した製品となっており北米を中心に多くの公共機関で採用が進んでいます。採用が進んでいる最も大きな理由としてTime To Value がとても早い点があげられています。つまり、Salesforce製品の豊かなデザイン性と開発生産性をさらに向上し、国民・公共機関職員共に必要なデータ項目や業務フローがセットされて使い勝手がよくなっていることから、これは使える、使っていきたいと感じるスピードが圧倒的に早いという事です。

これまで、日本市場への導入については長らく検討してきました。今般、デジタル庁の設立と公共機関でのクラウドサービスの定着を見てPSSのラインアップの一つである許認可・検査管理業務(License&Permit,Inspection Managemen 以下LPI)の日本市場市場での展開を発表致しました。(2023年3月2日弊社プレスリリース参照)
国民と公共機関の間で最も執り行われる業務の一つは許認可の申請・承認と許可証の発行、そして検査管理で、LPIはこの業務に対応しています。

 

 

これまでの公共機関向けのアプリケーションは適切にしっかり設計、開発を行ない、導入IT企業が中心となって保守・運用を進めていくスタイルです。今回のLPIでは従来のやり方も可能ですが、素早くサービスを立ち上げ、実際にリリースし運用をしながら公共機関が単独で、あるいは導入IT企業が公共機関に伴走しながら公共機関が主体的に運用開発していく、アジャイル的かつTime To Valueアプローチが本当に提供できます。

 

 

USの公共機関はPSS LPIをガバメントクラウドとして活用

このPSS LPIはUSにおいて既にガバメントクラウドとして利用されています。日本ではIaaSしかガバメントクラウドとして認証されていませんが、USはIaaSやPlatform as a Service(以下 PaaS)、そしてSaaSにも取り組んでおり、クラウドサービスの種別にこだわらず最適なものを活用するスマート・クラウド戦略を掲げています。PSS LPIはそういった状況の中でPaaSおよびSaaSとして認証を受けUS各地で活用いただいています。

成功しているお客様のひとつにアメリカ ニューメキシコ州があります。ニューメキシコ州の許認可業務を担っているNew Mexico Regulation and Licensing Department ではLPIを使って多くの許認可業務を実施しています。

 

 

また、イリノイ州にあるエルジン市においてもLPIが利用されています。LPIが提供しているポータル機能を活用し、住民にわかりやすいデジタルサービス窓口を提供し申請から受付、許可発行という一連の業務を実装しています。

 

 

公共機関におけるSalesforceの導入はUSを中心にすでに世界中で始まっています。とりわけ公共機関むけのデータモデルや、業務プロセス、なによりもSalesforceで実現する表現力豊かで使い勝手が良いLPIは導入実績も多く、今後の日本政府のデジタル化においてIaaSの次のステージであるPaaS、SaaSの活用の選択肢の一つとして、間違いなくお役に立つと確信しています。

最後に、PSS LPIのような公共機関向けに特化したアプリケーション同様にSalesforceでは各業界に特化したSalesforce Industry Cloudを提供しています。これまでの導入実績で培った業界特有のデータモデルや業務プロセスを組み込んでおり、素早く、適切な機能をご利用することができます。公共機関では経済活性化や企業育成支援等の業務も他の業界のクラウドサービスを活用することができる可能性があります。関心をお持ちになりましたら、是非お問合せください。

 

 

新時代の公共システムに求められるDXとセキュリティのあり方とは?

公共システムにおける「クラウド導入の現状と課題」、「クラウド・バイ・デフォルト原則」のほか、組織的な攻撃を防ぐための「サイバーセキュリティ対策」について、政府発行の各種ガイドラインなどにもとづき紹介します。


上田 歩央
株式会社セールスフォース・ジャパン
インダストリーズ トランスフォーメーション事業本部
執行役員 公共公益事業開発室 室長

コンサルティング企業において公共、公益、通信メディアのお客様のDXプロジェクトを支援。セールスフォース・ドットコムへ入社後は公共系のお客様のDX構想からシステム導入アドバイスを担当。また、東北大学 特任教授として人工知能、サイバーセキュリティの一般教養としての教材開発を実施しています。

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