業界のトッププレイヤーになるために重要になるのは自動化であると回答した成長志向の保険会社は85%にのぼります。
保険業界では、顧客が現状に必ずしも満足していないことが公然の秘密になっています。金融サービス業界が完全に顧客中心だと感じている顧客はわずか27%に過ぎません。投資家とイノベーターも、状況を改善する機会があることを認識しています。デジタルファーストな保険の新規参入プレイヤーはインシュアテック(インシュアランステクノロジー)スタートアップと呼ばれています。2016年から2020年にかけて、こうしたスタートアップに190億ドル以上の投資が行われました。この投資をきっかけに、業界そのものだけでなく、顧客の期待値(英語)にも変革が起きています。
"既存の保険会社は、今すぐに顧客の期待以上の成果を達成する必要があります。さもないと、インシュアテック企業にシェアを奪われ続けることになります。"
既存の保険会社は、デジタルチャネルを導入して今すぐに顧客の期待以上の成果を達成する必要があります。さもないと、インシュアテック企業にシェアを奪われ続けることになります。保険業界に求められる新たな「デジタルの喫緊の課題」に対処するには、顧客をすべての中心に据えて、顧客に期待される一貫性のある体験を提供する必要があります。
保険業界で求められている「喫緊の課題」で柱となるのは、1)オムニチャネルアクセス、2)パーソナライズされた体験、3)顧客一人ひとりに合わせた保障/補償内容、4)簡単・簡潔な手続きの4つを顧客に提供することです。これら4つの柱が顧客中心の実現にどう役立つかを詳しく見ていきましょう。
多くの保険契約者が求めているのが、デバイスや時間帯を問わずに保険契約の確認や保険金を請求できる環境です。カスタマーサービス担当者との電話やチャット、保険会社のWebサイト、AlexaやSiriなどのAIを活用したデジタルアシスタント、その他のプラットフォームなど、自分の好きな方法で保険金請求や保険料の支払いを行いたいと保険契約者は考えています。ポータル、モバイルアプリ、情報のやりとり、APIの新たな時代を迎えるなか、見積作成やサービス提供のためにデジタルでのコミュニケーションを保険会社に求める代理店も増えています。
オムニチャネルを実現するには、複数のシステムからデータと機能にアクセスできる機能が欠かせません。 残念ながら、保険会社の多くがレガシーシステムのAPI不足に苦慮しています。導入後10年以内の比較的新しいシステムでも同様です。時代に追いつくには、APIを活用するか古くなったプラットフォームを刷新する必要があります。さらに魅力的なWebサイトとモバイルアプリを構築しなければなりません。保険会社では、新たなアジャイル手法の習得、そしてITチームとビジネスチームのスキルの最新化によってこうした課題に対処しています。
しかし、簡単にはオムニチャネルアクセスを実現できない場合もあります。多くの保険会社は、新たなデジタルシステムに急激に移行し、新しいスキルセットを従業員に習得させることにリスクを感じています。幸いなことに、迅速に対応し、新たなソリューションを導入する時間はまだ残されています。保険業界におけるデジタルトランスフォーメーションに求められる喫緊の課題への取り組みの大半は、まだ始まったばかりです。つまり現時点では、他社の一歩先を行き、顧客が求めるオムニチャネル体験を構築できる機会が大いにあるということです。
営業、カスタマーサービス、保険金支払の各部門を連携すれば、卓越した顧客体験を提供できるだけでなく、最新の各種法令にも対応できます。
真にパーソナライズされた顧客体験を実現するには、過去のエンゲージメントにもとづく関連性の高い情報を、Webサイトやモバイルアプリなどのあらゆる顧客接点で提供する必要があります。今や、保険会社は保険契約データと保険金請求履歴を活用し、顧客一人ひとりの状況に合わせてパーソナライズされたアドバイスを提供することが期待されるようになりました。
"信頼される保険のセールスパーソンであり続けるには、「人間味」をそのまま残しながら、自動化を活用してパーソナライズされた体験をすべての顧客接点で提供しなければなりません。"
パーソナライズされた保険体験を実現するには、保険会社が進化を遂げる必要があります。メールでのやりとりや、手書きによる申請書作成を顧客にお願いすることは、もはやベストプラクティスとは言えません。フォームへの入力は今でも保険の契約プロセスの一部ですが、入力するフォーム数、入力項目が以前よりもはるかに少なくなりました。そして、その状況に顧客は慣れてきています。自動化テクノロジーのおかげで、保険会社やとビジネスパートナーのWebサイトで顧客が過去に入力した情報が、多くのフォームにあらかじめ入力されるようになっています。
信頼される保険のセールスパーソンであり続けるには、「人間味(顧客とのつながりやアドバイス)」をそのまま残しながら、自動化を活用してパーソナライズされた体験をすべての顧客接点で提供しなければなりません。多くの保険会社がオンラインでのダイレクトモデル導入を試みています。一方で、生活者のニーズの多様化により、従来の募集人型チャネルの価値も無視できないものになっています。これまでと同様、好きな保険会社との契約を継続するかどうかの決め手になるのは、カスタマーサービス担当者の専門知識の高さです。そして、カスタマーサービス担当者が提供する価値はデジタルテクノロジーによってさらに高めることができます。
保険会社が提供する商品は複雑で理解しにくいものだと思われてきました。しかし、ここ数年、保険会社は多くの複雑な保険商品を簡略化することで、保障/補償内容をオンデマンドやカスタムメイドに対応し、利用しやすくしています。こうしたイノベーションの大きなカンフル剤になったのがインシュアテックの存在です。顧客は質の高い体験を味わったことで、同じレベルのシンプルな体験と顧客一人ひとりに合わせた保障/補償内容を既存の保険会社にも求めるようになったのです。
"パーソナライズされたサービスがスピーディに提供されることを顧客が期待するなか、新商品の投入や保障/補償内容の変更に保険会社が何か月もかけている余裕はありません。"
コロナ後の生活や労働市場の変化、ギグエコノミーをきっかけに、個人のニーズに合わせた保障/補償内容を求める声が高まっています。パンデミックをきっかけに保険会社のデジタル化に対する期待が上がったと回答した顧客は、全体の68%(英語)にのぼります。
パーソナライズされたサービスがスピーディに提供されることを顧客が期待するなか、新商品の投入や保障/補償内容の変更に保険会社が何か月もかけている余裕はありません。今では、数週間のうちにこれらを行う必要があるのです。短期間での新商品の投入、競合の動きに合わせた保障/補償内容のスピーディな管理と調整を可能にするプラットフォームの導入もまた、喫緊の必須課題となっています。
保険に求められるカスタマーエクスペリエンスの提供に向けた「シンプルさ」を実現するために必要なアクションについてご紹介します。
「簡単・簡潔な手続き」を整えることで、保険金請求、保険への加入、契約変更など、あらゆる場面における手続きが即座に、リアルタイムで完結する状態を目指す必要があります。これを可能にするための大きな手段の一つ自動化です。デジタル化された契約手続きや保険金請求のプロセスを保険会社がバックエンドで備える必要があります。
"自動化によって、プロセス全般がスピーディかつシンプルになります。"
主要な業務プロセスを自動化することで、保険会社は効率化された環境を顧客に提供できます。成長志向の保険会社の85%(英語)が業界でトップになるには自動化が重要であると回答しましたが、その目的はリアルタイム完結だけではありません。
引受審査業務も自動化が求められるプロセスの一つです。これは多くの保険会社と代理店やブローカーにとって、時間のかかるマニュアルプロセスとして知られています。新たな自動審査業務ソリューションによって募集人とのコラボレーションを促進し、ビジネスを効率的に成長させることが可能となります。申請、見積もりと契約、審査業務、保険証券発行、支払いなどのあらゆるプロセスが、自動化によってスピーディかつシンプルになります。
新たな自動審査業務機能としては次のようなものがあります。
新たな募集人の効率的なオンボーディング、育成においてマネージャーを支援する管理機能
顧客情報の効率的な取得、必要に応じたニーズ分析のための申込書の入力、あらゆるチャネルでの簡単な見積作成を可能にする、スピーディな保険見積もり機能
アンダーライターが申請と顧客全体を把握し、保険料の調整、必要な文書の管理、審査業務の決定内容の確認を可能にする、効率化されたアンダーライティングワークフロー
自動化は個別のプロセスのためだけにあるのではありません。顧客ライフサイクル全体(英語)に導入して初めてその威力が遺憾なく発揮されます。この統合型エンゲージメントシステムは、見積もりや保険金支払い以外の業務にまで拡張する必要があります。
予想を超えるレベルの投資やイノベーションが保険業界で起こるなか、業界トップの座を守る既存の保険会社の喫緊の課題となっているのがデジタル変革です。オムニチャネルアクセス、パーソナライズされた体験、顧客一人ひとりに合わせた保障/補償内容、簡単・簡潔な手続きは今や、保険契約者が求める最低条件となっています。これらの条件を満たし、顧客をサポートするツール、サービス、体験を提供することで、顧客中心の保険を実現できます。
今こそ保険業界でもデジタル変革を推進し、競争の激しい時代にトップに躍り出る時です。