6月末になりました。四半期締めのタイミングに重なる会社など、仕事のスケジュールもお忙しく活動されている方々も多いのではないかと思います。連載「営業現場の脱・3Kを考える」Vol.5では、日々の商談や活動を前に進めるための指導とは?というテーマでお話をしました。今回のVol.6では、TORiX株式会社の代表を務める私、高橋 浩一 が、「成果が上がる営業会議はどこが違うのか?」というテーマで解説していきます。
多くの会社で行われている営業会議は、「各自の数字の状況と商談状況を、それぞれのメンバーが順番に報告し、マネジャーから質問やツッコミが入る」というスタイルです。
しかし、このスタイルで会議を進めると、このような問題点が起こってきます。
また、最近はSFAの画面をプロジェクターに映しながら会議を行う会社も増えていますが、沢山あるKPIのダッシュボード画面をそのまま映して見ていくだけだと、集中すべきKPIが複数にまたがっており、トレードオフの議論がされないために、どこに集中すべきかよくわからない、といったことも起こります。
「テレアポ件数が足りないな・・・もっと増やせるよね。あと、YYYの案件とZZZの案件が提案のタイミングだけど、提案内容はしっかり練られてる?」のように、見えている事象に対して、次から次へとマネジャーからの確認が飛んでしまうのです。
このように、営業会議を行うことの難しさはいくつかありますが、改めてここで、営業会議の目的と、焦点を当てるべきポイントを確認しましょう。
営業会議の目的は、「成果を上げるためのすり合わせやディスカッション」です。
営業会議が単純に「マネジャーの確認業務」を置き換えたもので終わってしまわないよう、焦点を当てるべきポイントを5つに整理してみました。
目標がいくらで、いま達成率が何%で・・・という会話はどの営業会議でもされると思いますが、肝心なことは、「このままいったときに、期末は達成できるのか(どのぐらいで着地するのか)」「確実に達成するためには、どのぐらいの活動が必要なのか」ということです。
ただし、ここで「着地予想」や「必要な商談金額(ヨミ)」を算出しようとすると、受注率や受注金額の変化トレンド(月/週/日あたり、どんなペースで増えていくか)のようなデータが必要になってきます。
目標達成状況として結果としての受注や売上を追いかけていくだけでは、方針や戦略がきちんと実行されているかどうかが把握できません。
組織としての方針や戦略を、「どのぐらいできていたらよいのか」の基準とともに、プロセスのKPIに落とし込んでいく必要があります。
そのKPI状況を見て、営業組織の「健康状態」を把握していくのです。
例えば、商談発生から決着までのリードタイムが長いような商材ですと、途中のプロセスを丁寧に追いかけないと、活動の質が上がりません。
KPIを見るときのポイントは、数字の大きさだけを見るのではなく、「メンバー同士の比較」や「時系列における比較」など、比べる分析の観点が必要です。
この際、どのぐらいできていればよいのかという基準値がないと、GoodかBadかが判断つかないので、こういった基準値については、トップから提示があると望ましいでしょう。
受注前の案件については、ヒアリングは済んでいるのかどうか、見積もりは出しているのかどうかなど、進捗度合いに応じてフェーズが定義されます。
このフェーズごとにいくらの金額が積まれているのかというのがパイプラインの考え方です。
パイプラインについては、
といった観点で見ていきます。
KPIやパイプラインの状況は、ダッシュボードで一覧化されていると非常に便利です。
これからの案件に関する確認や議論のみならず、メンバーのパフォーマンスを上げるためには、「決着案件の分析」が有効です。決着案件の振り返りが効果的にできると、特に経験値の少ないメンバーが、成果の上げ方を理解しやすくなります。
決着案件ですが、ここでは3種類に分けます。
特に「接戦が決着」したとき、その決着要因をカテゴリ分析して、増やしたいパターンの受注を増やしつつ、減らしたいパターンの失注を減らしていくのが決着案件分析です。
この際、
といった点がポイントです。
接戦における「減らしたい失注」については、時間をかけて減らしていくことができると望ましいのですが、そのためには、全員が集まった会議で、接戦の決着要因を分析する場があると望ましいです。
注意すべきは、失注を責めたりする雰囲気にならないようにし、「組織単位で、減らしたい失注パターンを減らし、増やしたい受注パターンを増やしていくことがみんなのためにもなる」という趣旨を都度確認することです。
会議では、単なる確認や議論にとどまらず、「では、次にどうするのか」のアクションが明確になるのが望ましいのですが、この決定アクションに関する実行度合いを追いかけるか否かで、組織のパフォーマンスが大きく変わってきます。
会議の際に、「前回決まったことが実行されているかどうか」についての振り返りがあったり、あるいは会議の議題にせずとも、きちんと実行結果が見える化されていると望ましいです。
そのためには、会議の中で決まったアクションについて、「誰が、いつまでにやるのか」を明確にし、会議後すぐに議事録を共有することが必要です。
さて、今回のVol.6では、「成果が上がる営業会議はどこが違うのか?」について、5つのポイントを解説してきました。
次回は、中期目線に立ったメンバー育成について解説します。
Vol.2 - 仕組み化を支えるプロセスマネジメントの5W1H