4月から四半期が始まった方にとっては、6月は四半期末の区切りのタイミングですね。最近は日本各地で、例年にない暑い日があったりしましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。連載「営業現場の脱・3Kを考える」Vol.4では、予実のギャップに対して適切な介入をするには?というテーマでお話をしました。今回のVol.5では、TORiX株式会社の代表を務める私、高橋 浩一が、「日々の商談や活動を前に進める指導とは?」というテーマで解説していきます。
前回の記事で言及した「予実のギャップ」ですが、言うまでもなく、期末に向けて数字や見込みが足りなくなる前に手を打ちたいというのがマネジャーの心情でしょう。
しかし、目標に対して「順調に進んでいます!」という報告をいつも聞けるわけではありません。メンバーが思ったようにアポが取れない、お客様事情による突然の失注・・・など、想定外のマイナス要因というのも日々起こってきます。
このような事象に対し、月末や期末になって慌てて挽回とならないように、日々、何ができるかということを今回の記事では考えていきたいと思います。
私自身、今まで3万人以上の営業の方々を支援していく中で、多くのマネジャーの指導現場にも立ち会わせて頂きました。
そこで感じたのは、「後で慌てて挽回に走る」タイプのマネジャーは、メンバーからの定期報告をトリガーにして動いている傾向が強いということです。
メンバーからの定期報告をトリガーにするというのは、まずメンバーが日報や週報といった営業報告をあげ、マネジャーはあがってきた報告に対してコメントや返信をするというスタイルです。
メンバーとしては、当然、良い報告は詳しく書きやすいですし、良くない報告の詳細を書くことには抵抗が生じやすくなります。悪意がなくとも、「定期報告」である以上、なるべくその活動期間にはプラスの評価がされる材料を多めに、マイナスの評価をされそうな情報は少なめに、という心情が働きやすくなります。
このような中で、マネジャーがメンバーに「なぜしっかりと報告しないのか!」と叱責したり、「悪いニュースこそ早めに共有せよ!」と指導するだけでは充分ではありません。
そういった心情の問題だけでなく、メンバーのスキル要因で捉えきれていない「お客様の隠れた不満」や「潜在的に起こっている機会ロス(例えば、アプローチすべきお客様にそもそも接触していない 等)」といった重要な要素は、そもそも報告の中に入ってきづらいためです。マネジャーとしては「報告を待つ」のではなく、自分から情報を取りにいかねばなりません。
こういったポイントは、メンバーからの報告とは別に、マネジャー自らチェックをし、動いていく必要があります。
マネジャーが、メンバーからの報告のみに頼らず、成果を上げるために必要なポイントは以下の4点です。
では、1つずつ見ていきましょう。
以前、Vol.3の記事で、受注計画についてお話しました。ルート型、アカウント型でそれぞれ計画の立て方は異なりますが、「この数字を達成するためにこういう活動をしよう」という想定に対して、特にプロセスの実際がどうだったかを追いかけていく必要があります。
例えば7月に6件の受注をするためには、6月に24件の見積提示が必要、そこから逆算すると4月に72件の初回訪問件数が目安、というのが想定であれば、4月の初回訪問件数は72件行っていたかどうかをチェックします。
そして、
といったポイントを振り返っていきます。
こういったモニタリングを丁寧に行っているマネジャーは意外と少なく、どうしても、結果としての受注や売上に対して目が向きがちになります。
受注計画に対して、想定通りの活動ができていれば、あとは、案件に対する無駄な取りこぼしを減らしたり、そもそも、アプローチすべきお客様に対して提案活動の漏れがないかどうかを追いかけていくことになります。
その際、マネジャーの手元で、「マークすべき商談」や「アプローチすべき顧客」が一覧化されていると非常に便利です。
Excel管理でなくSFAを活用するメリットの一つとして、こういった、「マークすべき商談」がリアルタイム表示され瞬時に見られる、というのがあります。
「この案件はどうなっているのか」というのを、メンバーからの報告がなくとも、マネジャー自らチェックしにいくことが必要です。
特にアカウント型の営業組織では、1件1件の商談が動くスピードがゆっくりだったりしますので、メンバーからの定期的な報告を待つだけでは、気がつくと対応が手遅れになっていたということも起こってしまいます。
マネジャーが焦点を当てたい商談が、見やすい状態に一覧化されていると、重要な商談や顧客に対するアクションの漏れはかなり減らせますが、いざ商談の状況を確認しようとしたら、商談の履歴や活動記録が情報として入力されていないということが起こってしまうと、かなり大きなロスが発生します。
メンバーが活動履歴を入力する習慣がないと、マネジャーは1件1件、「これはどうなっているのか」ということをメンバーに対してつど確認することになります。
しかし、この確認に対してメンバーが返事を返してくるのを待ち、さらにそれに対してマネジャーがまたその返信を見て指示を出す・・・となるのでは、スピードが命の商談においては致命的な遅れを取ってしまいますから、日頃から、メンバーの情報入力が徹底されていることが重要です。
よく、SFAの活用度合いをヒアリングしていくと、「SFAに情報を入力するメリットをユーザーが感じられるかどうか」という論点が話題になることがあります。
「これはどうなっているのか」というつど確認が減っていくと、メンバーは入力さえしていれば余計なツッコミがマネジャーからくることもなく、適切な支援をしてもらえる状態が実現でき、マネジャーは知りたい情報をすぐ見られる、ということで、上司部下双方にとってメリットを感じられるようになります。
これは、日報や週報のみに頼るのではなかなか感じづらいメリットです。「商談単位での情報を記録し、それをマネジャーとメンバーが頻度高く使用する」ことによって、「情報を入れればその分だけ営業活動の生産性が上がる」状態に近づいていきます。
メンバーが目の前の仕事に忙しくなってくると、どうしても、中長期目線で見た仕込みの活動がおろそかになりがちです。直近にクロージング案件がいくつかあると、まだHotではない顧客に時間を使うことをメンバーはしたがらないでしょう。
また、いくつかの案件が同時に動いていると、ある案件が停滞していてもメンバー自身がそもそも気づいていない、ということも起こります。
そうすると、マネジャーの側が、先を見て動いておくべき案件や顧客への提案準備がされているかどうかをウォッチしておかねばなりません。
そこでおすすめなのが、多くのSFAに実装されているアラートや通知の機能です。
「あるステータスから30日間動いていない」
「この顧客には、3ヶ月後のこのタイミングで連絡する必要」
こういったことを、1件1件つぶさに抜け漏れ確認していくのは大変です。事前の設定によって通知がくるようになっているとかなり便利です。
また、こういった通知やアラートがあると、自然とSFAに入力されている情報にもマネジャーメンバー双方の目が向きやすくなり、SFAを活用すればするほどメリットを感じやすくなります。
さて、今回のVol.5では、「日々の商談や活動を前に進めるための指導とは?」についてお伝えしてきました。
後になって慌てて挽回とならず、先手を打ってマネジメントしていくために記事をご活用頂けますと幸いです。
次回は、日々の営業現場におけるSFAを活用したマネジメントについて、営業会議の場面を取り上げて解説します。(「Vol.6 - 成果が上がる営業会議はどこが違うのか?」はこちら)