ここまでの回で「売らずに売れる」「アシスト効果」「中間コンバージョン」といった、ソーシャルメディア収益化のキーワードとその構造を解説し、従 来のマーケティングスタイルとの違いを理解いただけたと思う。次回からはいよいよ、「集客」などの実践的なスキルとノウハウを身につけてゆくことになる が、その前に、本プロジェクト前半のしめくくりとして、いくつかの注意点とともに下準備を行っておいてほしい。
フェイスブックページは無料で始めることができる。また、日々の管理も簡単だ。まだホームページを持たない事業者なら、フェイスブックページから ネットビジネスを始めてみるのも良いだろう。もし個人用のページとは別に、事業者用のfacebookページをまだ作成していない場合は、こちらを参考に作成してみて欲しい。
だが、すでに従来のオンライン・マーケティングに取り組んでいる事業者なら、無料のフェイスブックページに安易に過大期待してはいけない。洗練されたeコ マースですら、ソーシャルメディアから得られる収益は、まだ全体の10~30%前後を占める程度だろう。むしろ、従来の手法ですら十分に使い切れておらず 「伸びしろ」を抱えるサイトのほうが多い。そうした企業に、無理にフェイスブックページに取り組むことはお薦めしない。今までの既存のメディアへの取り組 みを、十二分に取り組みきっておかない限り、期待するような収益は得られないからだ。
現在、ソーシャルメディア同様、インバウンド・マーケティングや、コンテンツ・マーケティングといった言葉が、半ば流行語の様に語られているが、いずれも単体で、簡単でスグに効果がでる「魔法の杖」ではないことは、第一回で説明したとおりで「重要だが緊急ではない」という位置づけだ。
ただ、あなたが透明性やオープン性を保てるビジネスをコツコツと続けているなら、従来手法と組み合わせることで大きな追い風となってくれる。つまり、従来 のマーケティング手法は高い精度で極めつつ、同時にソーシャルメディアなりコンテンツマーケティングなりに取り組む事で、相互作用によって収益が向上する のだ。
では、フェイスブックで収益の見通しを実感するには、フェイスブックページに何人くらいのファン数が必要だろう。今までの経験では、おおよそファン 数が5000~6000人を超えたあたりから、目で見てわかる程の効果が出始める。だが、この時点では、まだまだ「前兆」の段階だ。実際には1万人を超え た当たりからが手応えを感じるレベルだろう。では、上手くフェイスブックページをビジネスに活用している事業者達は、どうやってファンを集めているのだろ うか。大きく分けると、コストをかけない方法と、有料の「フェイスブック広告」を用いる方法がある。
当然、できるだけコストをかけずに、上手にファンを集めたい、というのは、多くの事業者の願うところだ。実は、フェイスブックには無料で集客できるツールがいくつか用意されている。
フェイスブックページの管理画面には「ファン数を拡大」というボタンがある。ここから、「友達を招待」を選んで、 運用するフェイスブックページに賛同してくれそうな友達を招待してみよう。
この機能はつい数ヶ月前までは、ほとんど友達に到達することの無い貧弱なツールだった。しかし、現在の仕様では、メールやおしらせであなた個人からのページへの招待状が届くしくみになっている。
なお、この招待状をたくさんの人に送りたいがために、facebookの上限である5000人の範囲で、無作為に友達を増やしては削除し、削除しては新しく友達を増やして招待状を送る、といった方法は、理由は後述するが、本プロジェクトではお薦めはしない。
また、「ファン数を拡大」には、「ページをシェア」という機能もある。
これは友達のニュースフィードに、あなたがページをシェアしたことが掲載される。こちらは、1)に比べてやや効果が落ちる。
もしあなたが、自社サイトを既にもっているのであれば、次のツールを使って、サイト内やブログに「いいね!」ボックスを設置しておこう。日々サイトを訪れるユーザが、ここからあなたのページのファンになってくれることもある。
「いいね!」ボックスの作成
もしあなたがメールマガジンを発行していたり、「お申し込みの確認メール」などを送信しているなら、そのメールのフッタなどに「フェイスブックペー ジはこちら:https://www.facebook.com/MIYAMATSU.NET/app_4949752878 」などと記述しておこう。
このとき、上記の様にあらかじめ「ようこそページ」を作成しておき、そのリンクを掲載しておきたい。このとき前回ご紹介した、URL生成ツールでanalyticsのトラッキングを取得するのも一つの方法だ。
なお、特別に「フェイスブック、はじめました。」などのメールマガジンを発行する場合は、件名や文面によって反応が大きく変わるので、一気に送らず、 100件ぐらいずつ件名を変えたり本文を変えたりして、数回に分けてテストを行い、最も効果の高かった件名や文面で残りの分を配信しよう。何をするにも、 「テスト」である、ひと手間かける労力を惜しまないことがWebサイト運営の鉄則だ。
ちなみに、上記の1)と2)の方法を使って、25名のフェイスブックページのファンを獲得できたら(※1)、あなたのフェイスブックページ専用のURLを 取得しておこう。フェイスブックページを登録した直後のURLは場合によっては非常に長い文字列となるが、以下のリンクから、適切な文字を使って専用の URLを作成することができる。
・Facebookページ用にユーザーネームを取得する
※1 通常、あなたにとって、初めてのフェイスブックページなら、25名という人数の制限は無いが、もしあなたが2つ以上のフェイスブックページを所有しているなら、専用のURLを作成するには25名のファンを揃えておく必要がある。
こうして、無料でできるファンの獲得方法をひととおり終えておこう。また、紹介の前には、ようこそページ以外に、タイムラインにも投稿して、記事を3~5つ程度は用意しておこう。
なお、こうした無料でファンを増やせるツールは、基礎となるファンを獲得するには最良の方法だ。ただ本格的にフェイスブックをビジネスに取り入れようと考えるなら、この時点で、「コストゼロでファンを獲得したい」という思考は今すぐ断ち切るべきだ。
筆者としては「無料でファンが集まるツール」といった裏ワザめいた国内外の情報商材なども一通り購入して目を通しているが、今の所、クビをかしげざるを得ないものばかりである。
そもそも、いつまでもコストをかけないままのビジネスが軌道に乗るはずもない。どこかのタイミングで「腹をくくる」ことをしない限り、何の成果も得られな いまま人件費コストとのバランスから、おそらくあなたはフェイスブックページを投げ出してしまうだろう。人件費をかけないように、無人化や自動投稿ツール を使うケースもみかけるが、かえって逆効果になるのでやめたほうが良い。
無料集客術にこだわる余り、フェイスブックが息苦しいものになった、という例もある。システムの上限である5000人まで無作為に友達申請をおこな い、フェイスブックページなどへ誘導することは、誰もがすぐに思いつくところだろう。結論だけ言うと、そうした方法は最終的に事業を大きくするほどの成果 につながらない。
何も友達を5000人集めることが悪いこととはいわない。実生活でも膨大な人脈を持つ知人もいるので、一概に友達の数が多いことを否定するわけではない。 だが、そうした運用では一般的なフェイスブックユーザの感覚が分からなくなってしまうし、なによりも傍目からみていても楽しくなさそうだ。
つい先日も「つきあいで友達承認していたら、facebook上の友達が3000名ほどになってしまって・・・」と知人から相談があった。最初は、メッ セージなどもマメにチェックしていたが、今ではその数の多さにほとんど読んでいない、という。プライベートでフェイスブックを楽しんでいる、とは言いがた い状況だった。
こうしたユーザが肩の荷を下ろして楽になる方法がある。フェイスブックでは、5000人近くの友達をもつ個人アカウントを、著名人として「フェイスブックページ」に変換してくれるツールが用意されている。いくつかの注意点に気を配り、こうしたツールを利用すれば、またゼロから気心のしれた友達とだけで楽しむための個人アカウントを新規作成すれば良いのだ。(ただし、このツールを利用すると、今まで投稿した写真やコメントは無くなってしまうので、バックアップを取っておくことを薦める。)
では、仮に、フェイスブックが提供する無料ツールだけで、100人のファンを集めるとしたら、どのくらいの期間がかかるのだろうか。いくつかのテス トを行ってみたが、自社のブログやサイトもない無名の状態で、まったくのゼロから始めたとして平均3ヵ月は必要となった。ある程度、アクセス数があるサイ トなら数週間程度だろうか。しかし「フェイスブック広告」なら、たった1日(広告費5,000~10,000円)で同じ数のファンは集められる。
めざす規模にもよるが、低コストにこだわりすぎて、1日でできることを、2ヵ月も3ヵ月もかけるのは、ビジネス的に見ても「時間の無駄」だ。おそらく期待 する成果は半年たっても得られないだろう。それなら5000円をポンと払って即日でファンを集めるという行為を終わらせ、一日も早くフェイスブックページ に取り組むべきかどうかの「結論」を出して、ダメなら他の作業に時間を投資したほうがずっと良い。スピードアップこそが最大のコストダウンにつながること は、ネット関係者ならしばしば遭遇することだ。ただ、これも正しい手順でおこなわなければ、その5000円ですら、ドブに捨てることになる。
話は少しフェイスブックからそれるが、仕事柄、オンラインショップのオーナーから「売上が伸び悩んでいる」という相談を受ける。だが、よく話を聞いてみる と通常のPPCなどのネット広告にさえ踏み切れず、地道に無料でできる範囲だけで取り組んでしまっている。ネット広告は正しく運用さえできれば大きく失敗 することはない。たとえ、部分的には失敗をしても、全体で利益を出す構造さえ理解しておけば、次で回収できるものだ(第3回記事参照)。
しかも最近の広告システムは、小さな事業者でも自分達で運用できるように、非常にわかりやすく親切に設計されている。特に、グーグルやヤフー自体が主催す るオンラインセミナーなら、無料でネット上で多数用意されているので、やる気さえあれば自分の好きな時間に学習することができる。
だから、多くの事業者が有料の広告導入にとまどっている「広告代理店への不透明な手数料」を支払わなくても、自社で勉強さえすれば、低コストでス タートできるのである。そして、ネット広告で利益が出せることがわかり、作業量も増えて大変になってきて、手数料の価値を明確にできるようになってから外 部に委託しても遅くはない。しかしこれも、「正しく運用できていれば」の話だ。誤った運用で出た結果で、誤った結論を出してはいけない。
フェイスブックページも同様である。フェイスブック広告のシステムの使い勝手にはまだ課題が残るところだが、早い段階から挑戦し、新しい売れるしくみの効果を体験してみて欲しい。
筆者の本業はオンライン収益の向上支援だが、最近セミナーなどで「フェイスブックページのファン数が多いですね、いったいどうされているのです か?」と聞かれることがある。実は今まで「ファン数が○○万名を達成しました!」と当社のフェイスブックページ上でファン数を話題にしたことは一度もない し、フェイスブックのセミナーに呼ばれても「ファン数が成果では無い」と締めくくるようにしてきた。ただ、こうした相談を受けるたびに「実は、自社ページ のファン数は、フェイスブック広告の機能検証を繰り返した結果です。人一倍、失敗もしました。ひとつ言えることは、各事業にとって適正なファン数があると いうことです。例えば・・・」と、その事業者にとっての適正なファン数を算出して、正しい使い方をお伝えするようにしている。
筆者の場合の最大の誤算は、フェイスブックの国際化であった。その当時は、クライアントへの提案前に行っていた機能検証や攻略法をみつけるための広告テス トも含め、日本国内のほぼ全てのユーザに広告掲載しきっていた。だがある日「フェイスブック上の全言語が自動翻訳される」というニュースが舞い込み、世界 中のユーザに日本語で広告を掲載したことがある。確かに多くのファンが増えたが、翻訳機能がなかなか上手く機能してくれない。みるみるうちに、当時の弊社 のファンページの投稿が、オリエンタルな言語で埋めつくされていった。と、同時に、それまで活況だった日本人ユーザからのコメントや投稿はピタリと止まっ てしまった。いわゆる「ドン引き」の状態である。あれほど多言語共存は成功しないと自社で言っておきながら、翻訳機能に期待してしまい大きな失敗をしてしまったことがある。結果として、あわてて各言語ごとに特化したページを作成し、そちらへの引っ越しを呼びかけて対処した。
そうした自社ページでの手痛い勉強の成果も活かして、一方の実際の各クライアントのフェイスブックページは、活性化し収益を上げてくれている。例え ば、最も早く結果が出たのは語学系サービスである。ユーザ層自体もネットとの親和性が高く、ネットマーケティングの様々な手法においても、他の業界よりも 反応が1年ほど早い。facebookといった新しいツールもユーザがいち早く使いこなす傾向にあり、多くの業界は語学系サービスから数年後にそれらの成 功事例を取り入れる事は多い。第2回でもご紹介した、「恋と仕事に効く英語(公式)」などがその好例ではないだろうか。ただし、そこでファン数を急激に増やしたクライアントはひとつもない。中小企業であれば、ファン数が1万~3万前後のフェイスブックページをベンチマーク(参考サイト)としてピックアップすると良いだろう。
実際、フェイスブックページのランキングサイトで、上位のフェイスブックページを参照しても、これといって参考にできそうな事例を見つけられない、という 声は多い。自社のクライアントでも、収益をあげているフェイスブックページは、ランキングサイトとは無縁である。だからといって、ランキングサイトを否定 する訳では無い。むしろ、積極的に、ファン数が1万~3万前後を「安定的に成長」させながら運用しているフェイスブックページを見つければ、大変良い勉強 になる。
だから、急激にファン数を増やしているページを見つけても、あまり気にする必要は無い。診断アプリで定期的に「いいね!」の数を増やしているか、シェアの 広い海外マーケットを対象としたページがほとんどだ。また大企業の場合は、フェイスブックにユーザが新規登録した際、自動的にお薦めされるしくみとなって いる。自力でユーザとのコミュニティを育み、収益化をめざす本プロジェクトのテーマからは外れる。
自社のユーザ層を見極め、1万~3万人のファン数をめざして運用していれば、まず間違い無く、成果を体感できる。それも、いっきにファン数を増やす必要は 無い。先にも述べたが、規模に見合ったスピードで、コツコツと増やして行く方が、フェイスブックページ広告の特性を考えても、最も効果的でなのである。
また、他サイトを分析する際、決して投稿へのいいねやコメント、シェアの「数」に目を奪われてもいけない。「相互いいね」や「義理コメント」といった類のものも多く、あなたがめざすべきフェイスブックページではないかもしれない。
また、ペットの画像や美味しそうな食べ物の画像、癒やし系の投稿が、どんなに「いいね!」やコメントが多いからと言って、その投稿があなたのビジネスを言 い表さないのであれば、それをマネしたところで、仕方が無い。本プロジェクトの第2回や第3回の記事を参考に「価値ある投稿」「楽しい投稿」で、自分たち の事業性を特徴的に「印象」づけているページを見つけて、投稿の幅を広げてみて欲しい。
先月、PCやモバイルの「ニュースフィード」上にもfacebook広告が表示される機能がリリースされ、何の脈絡も無い企業ページの宣伝投稿が、 自分のニュースフィードに表示されることに違和感を覚えたユーザも多いようだ。中には「これは、ステルス・マーケティングだ。」といった識者の声も聞こえ てきた。しかし、こうしたシーンを眺めると、ちょうど10年前、日本にグーグルの「アドワーズ」が上陸した時のことを思い出す。
2001年、グーグルはすでに「早い・新しい・まとも」といった、画期的な検索結果で、なみいる検索エンジン達を一網打尽としていた。まだ今のようにスポ ンサー広告など表示されておらず、有益なコンテンツを持つSEOを知り抜いたサイトオーナーが、検索結果からの集客を制していた時代だ。そこへ突然、お金 さえ払えば、googleの検索結果の最上位に広告が掲載できることになった。当時は、「googleも終わった」「不愉快な広告だ」「純粋な検索結果が 汚される」など物議を醸したが、結果的にはすぐにadwordsやYahooリスティングなどの検索連動型広告はすっかり市民権を得てしまった。
同じように、facebook広告もまだ始まったばかりで、ルールも甘く、広告主や掲載内容も、まだまだ整備されてゆく必要があるだろう。だからこそ事業者は、ソーシャルの住人としての市民性を重んじて適切な内容で広告活用をすべきだ。
友達の名前とともに表示されるフェイスブック広告の例
また、こうした自分の名前が広告に使われることに敏感なユーザもいる。そうしたプライバシーに配慮して、ソーシャル広告に自分の名前が掲載されないように、フェイスブックはユーザに設定画面を提供している。
アカウント設定>facebook広告
ネットユーザの間では、こうした設定に今後のfacebook広告の行く末を危ぶむ声も上がるほど話題にもなった。
だが、現在、多くのクライアントがフェイスブック広告を利用しており、様々な話題とは裏腹に、ますます活況を呈している。グーグルのアドワーズ広告がそうであったように、フェイスブックのソーシャル広告も、すでに情報の一つとして市民権を得ていると考えて良いだろう。
ちょうどこの連載も今回で5回目を迎え、第一回からすでに一ヶ月以上がたった。次回からは、いよいよfacebook広告を使って、ソーシャルでう まく収益化するためのしくみを構築してゆく。一般にネットの世界では8月は閑散期を迎え、オフィスはややゆったりとしたムードとなっているだろう。いわ ば、第一回で説明した「緊急かつ重要」な仕事が減った状態だ。しかし、こうした時こそ「緊急では無いが重要なこと」に取り組むチャンスだ。9月から本格的 に始まるネット商戦に向けて、今のうちにソーシャルへの体制を整えることで、前年比アップや競合との区別化対策に取り組んでみて欲しい。
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