本ブログの第2回では、化学業界において、率先してCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)/SFA(セールスフォースオートメーション)を導入・利活用することに挑むTrailblazer(道なき道への先駆者)たちが集まり、悩みや問題点を共有しながら解決策を探った様子をご案内。パネルディスカッション(パネリスト企業は株式会社クラレ、積水化学工業株式会社、東レ株式会社、株式会社レゾナック)、そして出席者約30人が6班に分かれて行ったワークショップ「世界で戦える化学メーカーになるためのデジタル変革を考える」を通して、化学業界におけるDX、とりわけCRM/SFA導入・利活用へのカギをご紹介する。
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パネリストには、前半パートで講演を行った積水化学工業株式会社 環境・ライフラインカンパニー 営業DX統括部 営業DX課 課長の大橋拓平さんに加え、東レ株式会社 マーケティング部門 マーケティング企画室の宮澤貴裕さん、株式会社クラレ DX-IT本部 GDX推進部 GCRMグループ グループリーダーの今宮智子さん、レゾナック株式会社 コーポレートマーケティング部 プラットフォームグループ グループリーダーの竹内良一さん-の4人が登壇した。進行役はセールスフォース・ジャパン 執行役員 カスタマーサクセス統括本部の伊原滋章さんが務めた。
パネリストの企業はいずれもすでに Salesforce を活用中で、導入に当たって苦労した点や今後の活用についての話し合いが行われた。近年、製造業においてCRMやSFAの大型導入が増加しているが、有効活用に向けた課題の点で、業種ごとに特徴があることがわかってきているという。これらのシステムを導入し単に使うだけでなく、その先のビジネス成果にいかにつなげていくかという視点が重要であることが強調された。
<東レ>
<クラレ>
<レゾナック>
<東レ>
<クラレ>
<レゾナック>
ワークショップのファシリテーターは、セールスフォース・ジャパンのインダストリーズトランスフォーメーション事業本部 ディレクターの國村太亮さんが務めた。出席者はA~Fの6班に分かれ、グループワークとして自社DXの取り組みとそれを加速させるKey Enabler(成功へのカギ)を共有し合い、ホワイトボードと付箋を使ってグループごとに議論。最後にそれぞれ議論した内容をグループごとに発表した。
Key Enablerを見つけるため、経営の4要素である「ヒト」「モノ」「情報」「カネ」を縦軸に、横軸には「営業・マーケティング・物流」と「生産計画・生産・技術開発」を置き、Key Enablerと思われるアイデアを書き込んでいくという方法で議論が進められた。以下にグループディスカッションの結果を簡単に報告する。
意見抜粋
今回のワークショップではグループ内で積極的な議論が展開された。化学業界においてCRM/SFAを導入し、利活用を図るための実際的な気づきがたくさん得られたと思われる。全体としては、縦軸(ヒト、モノ、情報、カネ)からの議論が中心だった印象で、なかでも「情報」と「ヒト」の視点からの報告が多かった。とくに、「情報」では基幹システムとSalesforceへの入力が二度手間になりがちなことを課題だとする意見が目立った。マスターデータの統一やシステム間連携など、まさにこのあたりがKey Enabler(成功へのカギ)になりそうだ。また、システム導入そのものを目的にしてはいけないということも再三にわたって強調されていたように思う。それぞれの企業に特有の経営的な課題、各部署の仕事の流れの中で課題となる部分を明確にし、システム導入の目的をはっきりと描き出した上で、あるべき姿に向かって改革を進める意識を全体で共有することが重要だとわかった。
今回、参加者が活発に議論できたのは、やはり試行錯誤を重ねながら共通の目的に向かってプロジェクトを推進している各々の経験が共感を呼んだからだろう。また、コロナ禍での抑圧された状態が長く続いたため、人と人との顔を合わせた交流・情報交換にみなさんが飢えていたとも感じた。活発な交流は、イベント後の懇親会でも精力的に続けられたからだ。
同時に、化学業界における“DX”の本気度、真剣さも鮮明になった。このようなイベントに、次の機会があれば、ぜひ参加されるようにお勧めしたい。
日本の化学・素材企業において、研究開発や製造におけるデジタル化は進行しているものの、市場環境が激変する中で重要となる顧客との接点、つまり販売・サービスでは、欧米企業と比べて領域や深度で格差が出ているようです。
本資料では、顧客価値創造の視点でDXを展開し、ビジネスモデルを変革、企業を成長させる方法について、ご紹介いたします。
黒坂 厚
化学工業日報 記者
記者歴40年。スタートがコンピューター専門誌だったため、化学・材料・医薬業界の研究開発や生産現場におけるコンピューター活用を長年の取材テーマにしている。計算化学、情報化学、プロセスシミュレーションなどが専門だが、IT業界のメインストリームの話題にも関心を寄せてきた。