厳しい経済状況でも満足度の高いショッピング体験を小売業者が作り上げる方法
消費者意識がますます悲観的になっているため、今年の年末商戦では、なんとか消費者に満足のいく買い物をしてもらえるよう、これまで以上に工夫を凝らす必要があります。小売業者は、オンラインと店舗でのショッピング体験のバランスをどのように取ればよいでしょう。購入までの過程が複雑化する問題にどのように取り組むことができるでしょうか。どのようにすれば、顧客に満足してもらいつつ、多くの買い物をしてもらうことができるでしょう。
これに対する簡単な答えは、デジタルのタッチポイントと物理的なタッチポイントを統合した、シームレスな小売ショッピング体験(英語)を作ることにあります。企業側から見ると、そのためにはまず、オンラインコマースチャネルとモバイルコマースチャネル全体で俊敏性を高める必要があります。それだけでなく、顧客がブラウジングや購入する際の柔軟性を高め、自由な方法で買い物できる環境を整える必要があります。
ここでは、2022年の年末商戦に向け、オンラインおよび実店舗の両方のチャネルを準備する方法についてご紹介します。
年末商戦でこれまでになく簡単かつ快適に買い物を楽しんでいただけるようにするためのヒントを集めた『『小売業界のための2022年 年末商戦ガイド』をご覧ください。
時間に追われる年末商戦の買い物客の立場に立ってみてください。不意に注文しなければならないギフトがあることを思い出しました。その場合、車や電車で店舗に出向くでしょうか。ノートパソコンを取り出してスイッチを入れるでしょうか。いいえ、スマートフォンを使って手早く注文したいと思うでしょう。
年を追うごとにモバイルコマースが人気となり、刻々と収益環境が悪化する中、モバイルコマース体験の最適化がかつてなく重要になっています。事実、2022年第2四半期には、トラフィックの71%をモバイルが占めており、合計注文金額でも61%をモバイルが占めています。スマートフォンとタブレットを使って簡単に買い物を楽しめるようにするには、以下のような仕組みを用意する必要があります。
モバイルに特化したマーケティング:在庫切れだった商品が入荷し、年末商戦のお届けに間に合うときに、モバイルアプリにプッシュ通知を送信していますか。期間限定セールが始まったときに、適切なタイミングで最優良顧客にテキストメッセージを送っていますか。このような仕組みを用意できていなければ、今すぐ年末商戦の小売戦略に盛り込みましょう。
簡単なブラウジングと決済:読み込みが速いシンプルなデザインを採用し、大きくてモバイルデバイスでも見つけやすい「今すぐ購入」ボタンを用意します。商品ページからワンステップで購入できる仕組みを用意します。利便性を追求した決済オプションの追加も忘れてはいけません。たとえば、モバイルウォレットで支払えるようにすると、購入する段階になって慌ててクレジットカードを探す必要がなくなります。
購入後の優れた体験:デジタル分野のリーダーの41%が、今後2年で、返品の最適化など、購入後も優れた体験を提供できるよう、重点的に取り組む姿勢を示しています。セルフサービスチャネルをモバイルに最適化し、顧客がルーティンタスクをスマートフォンから簡単に行えるようにします。
小さな画面でInstagramの画像のみを見ていたのでは、顧客は自分に適した商品を効率的に見つけることができないでしょう。スタッフ(場合によってはインフルエンサー)がライブショッピングを通して顧客と直接交流することにより、単なる仮想的な小売ショッピング体験が、パーソナライズされた、まるで直接対面しているかのようなやり取りへと生まれ変わります。
ライブショッピングを取り入れれば、顧客はさまざまな角度から商品を見ることができ、当日配達や店頭受け取りなどの柔軟な配送オプションについて質問することができます。あるいは、返品ポリシーについて尋ねることもできます。このような場を設けることで、顧客は想像していたものと違うギフトを購入してしまうことがなくなります。
スマートフォンは、消費者の生活にとって欠かせない存在となっています。これらのソーシャルネットワーク上でブランドを体験し、決済まで行えるようにすれば、商品を見つけてから実際に購入するまでの面倒な手順により消費者が感じるストレスを取り除くことができます。
Rob Garf、Salesforceの小売担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー
大手の小売業者は、すでにFacebook、Instagram、TikTokなどのプラットフォームを活用して、顧客の関心を引き込むことに成功しています。これは、単なる見栄えの良さを求めての取り組みではありません。ソーシャルコマース(英語)はこれから大きく成長する余地があることを示すさまざまなデータがあります。事実、ソーシャルコマースは、今後4年間で従来のEコマースの3倍の速度で成長する(英語)と予測されています。
Salesforceで小売担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるRob Garfは、今年の初めにRetail TouchPointsのインタビュー(英語)に対し、「スマートフォンは、消費者の生活にとって欠かせない存在となっています。ソーシャルネットワーク上でブランドを体験し、決済まで行えるようにすれば、商品を見つけてから実際に購入するまでの面倒な手順で消費者が感じるストレスを取り除くことができます」と話しています。
オンラインで注文した商品が後から在庫切れが判明したり、サプライチェーンの混乱によりどこかで配送が止まってしまったときほどがっかりすることはありません。小売業者が引き続き在庫と配送に課題(英語)を抱えている中、デジタル分野のリーダーは、この問題を配送と在庫の最適化に優先的に取り組むことで解決しています。もう少しわかりやすく説明しましょう。簡単に言うと、「自分が注文した商品がどこにあるかがわからない」問題を、きっぱりと解決することです。
透明性に重点を置く:同等の商品を提供しておけば、配送が遅延したり、在庫が切れたりしても顧客は気にしないのでしょうか。いいえ、そうではありません。しかし少なくとも率直に透明性の高い情報を提供することができます(英語)。透明性は、74%の顧客(英語)が重要だと答えています。顧客とのコミュニケーションを常に絶やさないことで、何か問題が生じたときでも解決策を提示し、顧客に年末商戦で満足のいく買い物をしてもらうことができます。
顧客がさまざまなオプションやセルフサービスを利用できるようにする:顧客が注文履歴にアクセスし、配送を追跡し、セルフサービスを使用して返品や交換の手配を行えるようにします。「オンライン注文、店頭受け取り」(BOPIS|Buy Online Pickup In Store)などの柔軟な配送オプションを用意します。BOPISは顧客に人気のある配送方法で、小売業者の85%が導入済みあるいは導入を検討しています。
注文管理を刷新する:適切な注文管理システムを導入すると、オンラインおよび店舗のスタッフが、リアルタイムで在庫データや配送データにアクセスすることができます。従業員が、購入の瞬間から配達されるまでを通して顧客の注文を追跡することができると、問題が発生しても、たとえば配達期日までに間に合うように類似の商品を提供するなど、積極的な対応が可能になります。
つまり、「自分が注文した商品がどこにあるかがわからない」問題を、きっぱりと解決することです。
2022年のOmnichannel Retail Index (英語)によると、オンラインで売り切れた商品に対して「再入荷」の通知を提供している小売業者やブランドはわずか24%です。コマースおよびデジタルクラウド変革を専門とする企業であるOSF Digital社の専務取締役Kathy Kimple氏は次のように述べています。「特に、サプライチェーンやロジスティクスの問題が絶えず生じている現在、この機能は他社との差別化につながると考えています。顧客とのコミュニケーションを円滑にし、顧客に常に情報を提供できる、再入荷されたときに再度売上につなげることができる、代替の選択肢についてメッセージを送信できるなど、さまざまなメリットがあります」。
インフレが長引く中、今後人気を得るためには、柔軟な決済オプションを用意することが重要となるでしょう。今年はそもそもギフトを購入しない可能性があると答える消費者もいる中、「後払い決済」(BNPL|Buy Now, Pay Later)などのプログラムを導入することで、小売企業のショッピング体験を大きく差別化でき、収益拡大につなげることができます。デジタル分野のリーダーでは、柔軟な決済オプションへの投資に力を入れる企業がデジタルに後れを取る企業と比較して2倍にのぼっています。ある企業では、後払い決済の導入後、平均注文額が50%増加(英語)しました。
小売企業において柔軟な取引を実現するための方法は、後払いや分割払いだけではありません。Apple Payなども人気を高めています。現在Apple Payでの決済を受け付ける企業は54%ですが、この決済方法を2年以内に導入する計画の企業は34%にのぼります。モバイルウォレットの決済方法は、1クリックで決済でき、取引をスムーズにできるだけでなく、顧客が決済時に利用できる選択肢の幅を広げることにもなります。
今年の年末商戦の買い物客に簡単快適な小売ショッピング体験を提供しましょう。
世界のショッピングトレンドを学び、年末商戦を成功に導きましょう。
グローバル産業アドバイザー担当SVP
Mattは消費者向け小売業分野における30年の経験があります。Salesforceの前はBergdorf Goodmanで最高執行責任者を務め、120年の歴史を持つ象徴的ブランドを、デジタル対応の顧客体験を提供できるブランドに変革しました。彼は消費者人類学の観点からビジネスにアプローチしており、人間の行動、関係、体験に深い関心を持っています。
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