2022年8月24日と25日に開催したマーケティング・Eコマースの最先端を発信するイベント「Connections to You 2022」には、リアル会場に100名以上、オンラインでは7500名以上が参加。
顧客中心型思考の「Salesforce Customer 360」が創り出す、顧客の想像を超えた「瞬感(WOW)」をもたらす最新のテクノロジーと、マーケティングやEコマースにおける数々の先進事例とともに29のセッションが展開されました。本記事では、Day1の注目セッション5つを紹介します。
Marketing Cloud / Commerce Cloudの新機能紹介と、通販事業を展開するベルーナ社と製造業Mipox社を特別ゲストにお招きし「ハイパーパーソナライズ」の世界を語る、Day1 基調講演のレポートはこちら。
Day2の開催レポートはこちらよりご覧ください。
「ビックカメラのDX宣言〜デジタルを活用した製造小売物流サーキュラー企業を目指して〜」では、『DX宣言』を発表し、店舗とECのシームレスな結合を通じて顧客体験を向上する戦略について、株式会社ビックカメラ 執行役員 デジタル戦略部長 野原 昌崇氏が発表しました。
株式会社ビックカメラ 執行役員 デジタル戦略部長 野原 昌崇氏
家電小売業のマーケットにおいてビックカメラはシェア2番手であるものの、利益率などは苦戦傾向にあります。家電小売業は、メーカー自身が寡占化、販売店も寡占化している状況にあり、メーカーと連携しながら進めていくビジネスモデルです。家電は耐久消費財で、ドラッグストアやスーパーなどであつかう低単価のリピート商材とは違って、何年も利用するため、商品を説明する接客が重要となります。販売力がなければ売上が創出できないのです。しかしながら、販売員は全体の振り返りや情報共有がうまくできていないという課題があります。
そこでビックカメラでは、Salesforceをプラットフォームとし、事業展開の機敏性・効率性を高めるためのシステム開発内製化の推進、コストダウン実現に向けた具体的な取り組みと、DX人材育成、コンタクトセンターでのAIの活用を行いました。
「ピザハットに学ぶ『想像以上』を届けるデジタル戦略」セッションでは、Marketing Cloudを導入して注文数1.4倍、工数4分の1 を果たした実績や、次なる打ち手などの取り組みが、日本ピザハット株式会社 マーケティング部デジタルマーケティング課 課長 薮内 浩平 氏によって披露されました。
宅配の料理といえばピザであった時代から、現在はあらゆる料理が届けられるようになっています。料理の宅配自体のマーケットは拡大しているものの、ライバルが増えていったのです。薮内氏は「私たちは、もっと日常に寄り添うブランドになりたいと思い、個人、個食にチャレンジしています」と語りました。
ピザハット社では2018年からMarketing Cloudを導入し、メール、アプリでのワン・トゥー・ワン・コミュニケーションと的確な効果分析によるPDCAにより、ブランドメッセージである「想像以上」の実現を目指しています。2011年ごろに17%ほどであったオンラインオーダーは、2021年には80%に達しました。スマートフォンアプリストアの評価も、2018年には3程度(満点は5)だったものが、4以上となり、顧客のデジタル体験向上も見てとれます。
Salesforce導入以前は、時間をかけてメールを作るなど非効率なこともありました。Marketing Cloud導入効果について薮内氏は「メールLINE、SMSプッシュ通知などを一つのプラットフォームの中で分析しながら、次に活かしていく活動を一気通貫で解決することができました」と語りました。Marketing Cloud Intelligenceによって、レポート作成の手間もなくなりました。工数を削減することによって、顧客に対するアプローチの数を増やし、よりダイナミックに対応できるようになったのです。
日本ピザハット株式会社 マーケティング部デジタルマーケティング課 課長 薮内 浩平氏
薮内氏は、2022年9月に、Salesforceと連携しながらローコードで顧客ロイヤルティ企画を展開できるLoyalty Managementを採用した「HUT REWARDS」をリリース予定であることを明らかにしました。最後に薮内氏は、ピザハットが大事にしている3つのことについて次のように述べました。
「まず、何をするにしても、ピザハットで食事してくれるお客様を見失わないこと。お客様のためになっていないことは潰していかなければなりません。次にチャレンジ精神。ブランドにいると保守的になりがちですが、デジタルなど新しいことを試して次に活かすことを大事にしています。3つ目はスピードです。数年前は珍しかったオンライン会議は普通になりました。世の中はダイナミックに変わるので、自分たちもそのスピードについていかなければなりません」
「ピザハットに学ぶ『想像以上』を届けるデジタル戦略」セッション視聴はこちらのオンデマンドで!
企業は、自社の製品やサービスをどのように親しみのあるものに仕立てていけばよいのでしょうか。
「ハイボールの仕掛け人、語る。ヒットからブーム、そして文化へ。長く愛されるための『届け方』とは」では、セールスフォース・ジャパン チーフマーケティングオフィサー 鈴木 祥子が、株式会社dof 代表取締役/コミュニケーション・デザイナーの齋藤 太郎氏をお迎えし、その戦略やクリエイティブな思考法をお聞きしました。
以前は古めかしいイメージのあったウイスキーですが、ハイボールは一般的になりました。齋藤氏は、15年にわたる角ハイボールのキャンペーンを振り返りながら「ブランドを作っていく上で、現在地をちゃんと把握することと、どこを目指してくかという北極星みたいなありたい姿、この2つを意識することが重要だと思っています」と語りました。
古臭いけど、琥珀色でどこか奥ゆかしい印象のウイスキーの特性を認識し、ハイボールを日本人のソウルドリンクにするというゴールを置き、テレビCMや全国の店頭の黄色いポスター、専用のジョッキなど、「ハイボールのある時間」の価値を一つひとつ提案し、トライ&エラーを繰り返しながら浸透させていったのです。
タクシーアプリ「GO」は、当初CMの相談を受けたものの、先にタクシーのラッピング広告を展開し、街中での認知を得ることを提案します。齋藤氏は、「街をGOのタクシーが走っている中で、CMを見たら『これは使えるんだ』とわかります。広告やっても、還元されないと意味がないので、仕組みを考えることは重要です」と説明しました。
株式会社dof 代表取締役 コミュニケーション・デザイナー/
クリエーティブ・ディレクター 齋藤 太郎氏
その齋藤氏が考えるデータ活用とはどのようなアプローチなのでしょうか?続きはオンデマンドでご確認ください。
「マーケティングと営業の連携が成功の鍵〜 Account Engagement Product Keynote 〜」では、マーケティングと営業の連携をテーマに、「Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)」(以下 Account Engagement)の最新事例と製品イノベーションが共有されました。セールスフォース・ジャパンの川越 悠右は、B2B企業の多くの顧客がパーソナライズされた対応を求めていることを明らかにし、製品やサービスと同じくらい体験が重要になっていることを説明。その上で、企業のマーケティングと営業が組織的にもシステム的にも分断していると、その期待に応えられないと、連携の重要さを説き、Account Engagementのデモンストレーションを披露しました。
デモンストレーションでは、セミナーの案内をテーマにしたシナリオが展開。マーケティング担当と営業担当が1つのプラットフォーム上で、データやAI、テンプレートを使うことで労力をかけず、顧客一人ひとりに最適な提案・フォローといった取り組みを連携できることが示されました。
プロダクト説明のあとは、富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 デジタルセールス統括部 統括部長 友廣 啓爾 氏をお招きし、セールスフォース・ジャパン マーケティング本部 デマンドジェネレーショングループ統括 シニアディレクターのカルデラ 久美子との対談が行われました。
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部
デジタルセールス統括部 統括部長 友廣 啓爾 氏
富士通では以前、CRMとMA(マーケティングオートメーション)のツールが連携しておらず、部門の壁もありました。友廣氏は、既存のツールをつなぎ合わせるのはやめて、マーケティングと営業の活動をワンプラットフォーム上で可視化すべく、Account Engagementを導入し、Sales Cloudと連携するプランを提案。システムの改革を進めると同時に、全てのマーケティングの活動は会社の売り上げに貢献するためであるとし、マーケティングと営業が共通のKPIを持ち、ともに会社の成果をあげていく組織改革を行っています。
Salesforce製品の連携について友廣氏は、「UIは、本当にシームレスすぎて、どこからがCRMでどこからがMAかわからないくらいです。だからこそ、営業とマーケティングが徐々に同じ言葉、同じプロセスを持って語り始められました」と評価しました。
営業担当が8000人、マーケティング担当も500人と、非常に規模の大きい組織において改革を行っている友廣氏。改革のために、Account Engagementの導入だけでなく、それらを効果的に使うために新たに作られたのがインサイドセールス組織です。最初の協力者は3人で、小さな成功を積み重ねながら仲間を増やし、現在は40名ほどとなり、来年度には200人ほどまで広げていく予定です。2年間で上層部や営業部も含めて営業マーケティングのあり方を説いてきた友廣氏は「営業部門にも仲間が増え、徐々に全社展開の流れを作り始めています」と現在の状況を語りました。
組織改革のためのアドバイスとして友廣氏は、仕事の根本を楽しくすることが大切で、そのためにエグゼクティブスポンサーたちが心理的安全を作ることが重要だとし、「(改革者の)背中を押してあげるというか、多少の失敗は擁護するなど、見守ることが重要です。楽しくやるためには、未来志向を持った人をアサインすることです」とコメントしました。
富士通の営業・マーケティング改革と「Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)」のデモンストレーションはオンデマンドで。
ビジネスパーソンは世界基準の視点を持つため、最新Techトレンドにも敏感でなければなりません。Day1最後のセッション「グローバルで進化するWeb3トレンド最前線 -メタバースに統合されていくコンシューマーエコノミーの未来とは?」では、Web3領域のトップイノベーター3名を招き、グローバルのWeb3最新トレンドと、企業がビジネスに活かすためのヒントについて意見交換がなされました。
株式会社Thirdverse / 株式会社フィナンシェ 代表取締役CEO 國光 宏尚氏は、メタバースやWeb3にコミットする日本でも有数のイノベーターです。國光氏は、現在のWeb3は第四世代であると切り出しました。最初の世代がBitcoinとそのライバルたちの戦い、第二世代がイーサリアムとその仲間、第三世代がイーサリアム上で動くアプリ、そして第四世代は、イーサリアムのスケーラブルの問題や環境問題をどう解決していくかという段階になっていると言います。
「以前はPh.D.の人や超ギークのエンジニアしかわからないようなプロトコルの差別化だったのが、環境が整ってきて、NFTやゲームなどのコンテンツやDAOなど多くの方にもわかりやすくなってきた状況で広がりをみせています。(スマートデバイスも)iPhoneが生まれたことによって多くの人に伝わりやすくなりましたね。いまはそんなタイミングだと思います」(國光氏)
株式会社Thirdverse / 株式会社フィナンシェ 代表取締役CEO 國光 宏尚氏
Miss Bitcoinとして知られるエンジェル投資家 藤本 真衣 氏は、Web3の可能性のひとつとして、個人の信用の裏付けになるとしました。行動や契約などを改ざんしにくい状態で残せるため、社会的信用が高い人を企業が見つけて割引をするなどの特典を与えられるなど、SDGsの文脈でも利用できる可能性があるとしました。
また、プレイヤーが遊んで稼げるというブロックチェーンゲームの「STEPN」や「Axie Infinity」は、生活に困窮している人たちにお金を稼ぐ手段を与え、ゲーム自体の時価総額も日本の大企業を凌ぐようになっていることを説明。さらに藤本氏自身は映画制作をWeb3の特性を活かしたコミュニティベースで実施していると説明します。
「NFTの購入者は(映画の)出資者でもあるし、応援者でもありながらマーケターでもあり、将来の視聴者でもあります。国境もないので最初からグローバルなリーチを得られるのもポイントです」(藤本氏)。
Miss Bitcoin / エンジェル投資家 藤本 真衣氏
アーティストとして活躍しながら、アパレルブランドを立ち上げるなど、起業家としても活動するVERBAL 氏は、その活動においてテクノロジーを使用し、仮想空間でのライブ活動も展開してきました。NFTのムーブメントが起きたとき、音楽もファッションもテクノロジーですべてがつながると感じたといいます。
「例えば仮想空間の中でトークンによってある部屋に招待できます。ファッションでは自分のアバターのウェアラブルをアンロックしたり、NFTを使ってフィジカルのものと連動したりできます。『これだ』と思ってスタートしようと決心しました」(VERBAL 氏)。
アーティスト AMBUSH® CEO / LDH JAPAN 取締役 /
m-flo / PKCZ® / TERIYAKI BOYZ® VERBAL 氏
そして、仮想空間でアバターのアイテムやゲームやライブへの参加がNFTによってできるメタバース空間のサービスをリリース。発行したトークンが数分で完売し、ほかにもさまざまなプロジェクトに参加するなど、Web3ブームの中心で活躍されています。
NFTによって、デジタルデータながら限定商品が作れるようになったり、デジタル上のメタバースのアバターであっても唯一無二の存在であることを証明できるようになったりと、新しいビジネス展開を期待する一方で、國光氏は、日本は規制が多いため、法規制の対応スピードが鍵となると言います。スイスで起業している藤本氏は「日本がWeb3を国家戦略とするのは素晴らしいですが、Web3時代は企業単位でなく、DAOやコミュニティの戦いになります。その中で日本が選ばれるようにするには、個人の権利や税制面を整えることが大事です」と述べました。
VERBAL氏も同様に法規制の課題を唱え「外国の人たちから見ると、日本はミステリアスな国だと思われています。いいものがたくさんあるけれど情報発信が下手だとも言えます。外国の人たちがもっと日本で、Web3をチャレンジしてみたいって思えるようにするためにも、法的な側面に加え、情報発信もしていくと、さらにシナジーが生まれると思います」とコメントしました。
白熱した「グローバルで進化するWeb3トレンド最前線」。セッション全視聴はオンデマンド配信でご確認ください。