注:この記事は、小売業担当副社長兼ジェネラルマネージャー、Rob Garl(英語)と著者による共同執筆です。
2022年に小売業者が追求すべき唯一の目標。それは、オンラインとオフラインのショッピング体験をつなげ、ジャーニー全体の摩擦を排除することです。
顧客にとって、これはすばらしいことです。これにより、オンラインと実店舗の両方でお気に入りのブランドとエンドレスにつながることができます。俊敏性と革新性を備えた小売業者は、デジタル革命が進む中での期待の増大(英語)に対応するため、サービスの乱立から拡充へと移行しています。
小売業者は、以下を実行することにより、時流をつかみ、存在感を高めることができます。
では、分散と収束が同時進行する小売市場で成功するには何が必要になるでしょうか。そのヒントは、すべてが顧客に始まり、顧客に終わるということです。ここからは、2022年に小売業者が変革を起こす、5つのエリアを予測していきます。
2022年度における、消費者のエンゲージメントについての新しい法則をご覧ください。
買い物客の66%が企業に対して自分独自のニーズや期待を理解してもらいたいと望んでいる一方で、データからパーソナライズされた体験を生み出すことができる小売業者はわずか32%にとどまっています。小売業者は、買い物客を有意義でパーソナライズされた方法で獲得および魅了するため、ロイヤルティプログラムを新たに構築したり、既存のプログラムを刷新したりするようになります。サードパーティ広告トラッカーの活用が難しくなる中で、これは大きなアドバンテージとなります。
ただし、顧客の生涯にわたるロイヤルティを獲得するには、特典だけでは十分ではない(英語)ことを念頭に置く必要があります。若い世代は、ロイヤルティプログラムに求めるメリットが 異なります。たとえば、ミレニアル世代やZ世代は、ベビーブーム世代やサイレント世代に比べて、限定商品や限定体験を提供するロイヤルティプログラムに約2倍の価値を感じています。
データが将来的に民主化され(英語)ると、ロイヤルティプログラムは差別化されるようになります。こうしたプログラムは、商品の好み、購入履歴、ポイント残高といった、貴重なデータを基礎としています。このデータがあらゆるタッチポイント全体で運用可能になると、小売業者は、顧客それぞれのニーズや期待に合わせた、ポイント付与よりもずっと優れたキャンペーンや顧客体験を提供できます。
購入方法や場所にかかわらず顧客を引き留めておくには、どうすればよいでしょうか。適切なテクノロジーを導入すれば、デジタルと実店舗のやり取りをつなげ、円滑で一貫したジャーニーを実現できるようになります。それらを踏まえ、私たちは小売業者がオンラインとオフラインのタッチポイントを統合し、シームレスな体験を提供するようになると予測しています。今年は、特に以下の2つのエリアが突出することになるでしょう。
小売業者はソーシャルメディア、メッセージングアプリ、ゲーム、さらにはメタバースなど、商品を発見し購入しやすい場所にEコマース機能を組み込むことでしょう。デジタルネイティブや他のD2C
(直販)ブランドが新しいEコマースプラットフォーム上で買い物客を魅了しているこの時代において、これは特に重要なことです。
需要創出と受注という2つの役割を担う店舗はデジタルの注文の60%に影響を与えていることから、小売業者は、業務を拡大してストアフルフィルメントや店舗からのオンラインの連携といった機能を円滑にする必要があります。
サービスは、体験の次のフロンティアとなっています。顧客の91%が、すばらしいサービスを体験すると次回もその企業から購入したくなると回答しており、同時に80%が、3回不愉快な体験をすると、その小売業者の利用を止めると答えています。デジタルの買い物客の高まり続けるニーズを満たすため、小売業者はあらゆる場所でデジタルサービスを提供し、体験に人間味を持たせるようになると予測されます。
顧客の83%(英語)が即座にサポート担当者からサポートを受けられることを期待していますが、従業員がいまだにリモートの現状ではそうしたサポートの提供は難しいこともあります。小売業者は、システムやデータを接続し、サービス担当者が、自宅や店舗、外出先など、どんな場所でも顧客とのやり取りをまとめて管理できるようにする必要があります。
幸い、顧客の82%が、簡単な作業であれば現在セルフサービスを利用しているか、利用することを望んでいます。インサイトを活用して個人の好みに対応するサービスの自動化により、返品用の送り状の作成や配送ステータスの確認といった、単純なジャーニーを合理化することができます。
同様に、顧客の70%が、現在のポイントの残高や取り寄せ中の商品のステータスの確認など、シンプルな質問の答えを得るのに現在チャットボットを利用しているか、利用することを望んでいます。チャットボットでは、人工知能を使用してよくある問い合わせをすばやく解決することができますが、ブランドがコストを抑えつつ、パーソナライズするための、充実したつながりを感じられる方法でのやり取りが課題となります。
実店舗での買い物は当面なくなりません。実店舗での買い物客がもたらす経済的影響を過小評価してはなりません。2020年のパンデミックの拡大期にさえ、販売の82%は、実店舗で発生 しています。また、2021年を通して新型コロナウイルスの影響が長引く中、小売業の求人件数は120万件(英語)に上っています。そうしたことから、小売業者は店舗やスタッフへの投資を優先すると予測されます。
イノベーションは、進化の時を迎えています。たとえば、小売業者の3分の1が、拠点をオンライ ン購入・店舗受け取り(BOPIS)などの一般的なフルフィルメントオプションに対応したマイクロフルフィルメントセンターに変更することを計画しています。実際、クリスマス前の5日間で、クリエイティブなストアフルフィルメントオプションを提供している小売業者は、そうでない小売業者と比べ、収益を2倍成長させています。このことは、消費者にオンラインの買い物に対する安心感を与え、発送期限を延長するのと同じ効果をもたらしました。これは、年末商戦に発生した配送遅延において大きなアドバンテージとなりました。
また、小売業者は、店舗スタッフへのモバイルデバイスの配備を進め、顧客データやインサイトへのアクセスを可能にしています。これにより、従業員が実店舗で買い物客に接客しながら、商品や返品についての質問があるオンラインの買い物客にすばやく対応できるようになります。
2020年のサプライチェーンの問題(英語)と従業員不足(英語)は、小売業者に業界外の企業とのクリエイティブな方法での提携を促しました。2022年には、小売業者は、従来の境界を越えた企業との提携による革新への意欲をさらに実証していくと予測されます。
商品を約束どおりに顧客の元に届けることは、成功のためには不可欠です。小売業者は、前年の配送サービスとの関係を強化したり、AmazonやWalmart(英語)のように、自社で引き継ぐようになります。
2020年の輸入減少を受けて小売業者が調達と製造を米国に移した(英語)ことは、驚くことではありません。
小売業者は、温室効果ガスの削減の加速を求める、さまざまな関係者からの圧力に直面しています。排出量ネットゼロ目標達成に向けて提携(英語)し、収益性と独自性のある方法を考案することでしょう。
これらの小売業の予測は、顧客と小売業者の両方にとってショッピングの黄金時代の始まりを予見するものです。大手企業がすでにソーシャルコマースやパーソナライゼーションといったイノベーションを使いこなしている中、Web3.0(ユーザーが自身のデータをより詳細に制御できるようになるインターネットの分散型バージョン)における新たな戦略により、新たなブランド体験の基準が確立されるのは時間の問題といえます。
それぞれの企業に最適な、ビジネス成長に役立つヒントやガイド、ハウツーをお届けします。
Alex Drinkerは、現在、Salesforceの副社長兼Retail Industry Advisorチームのグローバル責任者です。Salesforceへの入社以前には、ShinolaのCMOを務め、ブランドナラティブの構築と監督を担当し、Shinolaとその姉妹ブランドであるFilsonの大規模なデジタルトランスフォーメーションに注力しました。Shinolaの前にはGEでパートナーシップと製品イノベーションのグローバルディレクターを務め、世界で10億ドルのライセンス商品ビジネスの管理を担当しました。また、AlexはGS ICommerceとShopRunnerでもリーダー職を歴任しています。