スタートアップ企業の加速度的な成長を支援することを目的として2021年度から始まった「Salesforceスタートアッププログラム」。国内スタートアップ企業を対象に、セールスフォース・ジャパンの知見やノウハウ、Salesforce製品の無償提供を通じて、組織体制の構築や営業スキルの向上などをサポートする取り組みです。今年も第2回目の実施を検討していることを受け、2021年10月~12月実施の第1回プログラムの参加企業4社の皆様へのインタビューを行いました。参加の理由やプログラムで学んだこと、そこから成果につながったことなどについて、対談形式でお話をうかがいました。
株式会社estie
事業開発 宮内亮輔氏
2018年12月設立。
オフィスビル情報プラットフォーム「estie pro」、
賃貸オフィスマッチングサービス「estie」の開発・提供
株式会社エーアイセキュリティラボ
代表取締役社長 青木歩氏
2019年4月。
次世代クラウド型Webアプリケーション脆弱性診断サービス
「AeyeScan」の開発・提供
株式会社Rockets
代表取締役 鴻上大輔氏
企業データと自動ワークフローで商談を生み出す
セールスエンゲージメントSaaS「LEADPAD」
株式会社KiZUKAI
代表取締役 山田耕造氏
2016年3月設立。
サブスクリプションプロバイダー向け
顧客ロイヤルティ向上ツール「KiZUKAI」の開発・提供
宮内氏 - 弊社は当時、2019年9月にリリースしたSaaSの不動産データプラットフォームサービス「estie pro」がお客様に受け入れられ始めて、シェア拡大を加速させるフェーズに差しかかっていました。それに対応するには、組織自体を拡大するとともに、営業の仕組みづくりに着手しなければならない。そういう課題が浮上してきたタイミングで、今回のプログラムのお話があって、それならぜひ、ということで参加を決めました。
青木氏 - 私たちも似たような状況でした。弊社には、私を含めてセキュリティ業界に長年携わってきた社員が多く、それまでのおつき合いや人脈を活かして電話1本でアポを取る力はありましたが、その反面、営業スタイルは“勘と経験と度胸”に依存した属人的なもので、今後の成長のためには、営業の標準化・定型化が必要になると考えていました。そうした中で今回のプログラムを知り、Salesforceの構築から活用までを含めて、セールスフォース・ジャパンの営業の仕組み「The Model」を直接学べるということでしたので、宮内さんと同じく、これは乗らない手はないな、と(笑)。
鴻上氏 - 弊社は、もともとSaaSといってもコンサル寄りのサービスを提供していて、そこから完全にSaaSサービスへ切り替えるという重大な意思決定をした、まさにそのタイミングで、今回のプログラムに出会いました。SaaS型の営業組織へとシフトチェンジするいいきっかけになると思いましたし、弊社のプロダクト自体もSales Tech領域ですので、Salesforceのノウハウを得ることがプロダクトの磨き込みにも大いに役立つのではないかと考えました。
山田氏 - 弊社もRocketsさんに近いですね。プロダクトをリリースしてからまだ半年ぐらいで、SaaSを運営する組織に変えていこうという、まさに変革期でした。弊社は顧客ロイヤルティ向上のためのツールを提供しているので、その領域において世界一の企業であるセールスフォース・ジャパンから、組織面でもプロダクト面でも学べることは多いのではないか、と。また、弊社のお客様の多くがSalesforceを利用しているので、将来的に弊社のツールとSalesforceを連携していきたいという、事業シナジー面でも大きなメリットがあると考えました。
鴻上氏 - セッションやワークショップで教えていただいたことを、そのままプロダクトに取り入れています。たとえば、リードプールの「30~45日保留して、ダメならリリースする」という考え方を仕組みとしてプロダクトに落とし込みました。また、「The Model」に対する理解が深まり、商談などで自社のサービスについてお客様にしっかり説明できるようになったことも大きな成果です。従来は、本やWebサイトなどから得た知識だけで、なんとなくわかったつもりになっていましたが、そういう状態でお客様に説明しても、やはり薄いというか、説得力がないと感じていました。現場の方の実体験や数字などを踏まえて説明できるようになったのは大きな前進で、お客様にもしっかりと伝わっている実感があります。
山田氏 -「The Model」のセッションからは、弊社も多くのことを学びました。特に、営業のフェーズ管理のノウハウなどについては、学んだ次の日からどんどん実践して、成果につなげています。カスタマージャーニーのワークショップについても同様で、明日からはこれをする、しない、というそのときに決めた事項を、実際に翌日から活用して動くことができています。参加したメンバーは「すごく勉強になった」と喜んでいましたし、メンバーの成長を見て私も本当に嬉しかったですね。
宮内氏 - 弊社では、フィールドセールスやインサイドセールスのセッションで学んだことを受けて、社内の体制を見直しました。従来は、4人の営業メンバーがそれぞれお客様を担当し、アポの取得から商談、受注、活用支援までを1人で行っていたのですが、セッション後、メンバーの得意分野を踏まえて、セグメントを跨いで新規アカウントとの商談機会獲得から受注までにフォーカスする担当者と顧客セグメントの特性に応じたサービス活用の提案及び受注後のカスタマーサクセスに注力する担当者という形に役割を分担し、業務をより効率化しました。プログラム終了の直前にその意思決定をして、以降はセールスフォース・ジャパンの方にアドバイスしていただきながら、実務をSalesforceに落とし込んでいます。いい意味で、業務が日に日にSalesforceに侵食されている感じです(笑)。
青木氏 - 弊社では、組織体制の変化はありませんが、これまで手を動かしてがんばっていたところをやめて、Salesforceにデータとして蓄積していこう、データをしっかり見ようと皆が意識するようになりました。「Salesforceに全データが入っているから、そこを見ればすべてわかる」という文化ができたことによって、営業の型や意思決定の型がある程度固まりました。宮内さんがおっしゃったのと同様に、弊社でもかなりの部分で“Salesforce依存”が始まっていると感じますね。
宮内氏 - セールスフォース・ジャパンの営業マネージャー大平宏美さんによるフィールドセールスのセッションが、パワフルな人柄と相まって非常に印象的でした。「Salesforceを使って営業の管理はここまでできます、実際にこうやっています」と具体的に説明していただき、学ぶところが多かったですね。
鴻上氏 - 私も大平さんがセッションの終盤におっしゃった、「最後は熱意と覚悟です!」という言葉が強烈に印象に残っています。「そうか、やはりああいうマインドは必要なんだな」と。それまで、私たちの中では、営業でもなんでも、ロジックを組んでスマートにやることを美徳とするようなところがありました。大平さんの言葉には「ビジネスは甘くないんだよ」というメッセージが込められている気がして、背筋が伸びる思いでしたね。
青木氏 - プログラム全体を通して感じたのは、「自分たちの知識やノウハウを可能な限りすべて渡そう」という、セールスフォース・ジャパンの皆様の思いです。どんな質問に対しても、いいことも悪いことも一切隠すことなく答えてくださる、その姿勢に驚きました。普通、いいことだけを伝えたい、よくないことは隠したい、という思いがどこかに出てくるものですが、セールスフォース・ジャパンの皆様にはそれがまったくなかった。だからこそ学びがより深まったのだと思います。
山田氏 - 傍目には起業からずっと順調に成長し続けてきたように見えるセールスフォース・ジャパンでも、やはり失敗を繰り返し、それを組織として乗り越えながら会社を作ってきたんだな、というのは私も思いました。ビジネスに魔法はなくて、けれどもしっかりとしたプロセスを経て取り組むことで、着実に成長できるんだ、やはりそこが大事なんだ、ということを改めて感じました。
青木氏 - Salesforceをベースとして、マーケティングと営業、カスタマーサポートをどうつなげていくかが具体的に見えてきたことや、さまざまな数字が可視化されたことによって意思決定が進化したことを踏まえ、会社として次のステージへ進みたいと考えています。一方で、先ほどの大平さんの話と重なりますが、セールスフォース・ジャパンの他の営業の方も、「いやいや、私たちもコールドコールからやっていますよ。これはというお客様にはお手紙も出しています」ということを話されていて、セールスフォース・ジャパンのような大企業でさえそのように地道に営業しているのに、私たちはいったいなにをやっているんだと、会社全体がピリッと締まった感じがあります。改めて一から教わった、そういう営業のマインドセットを実践していきたいと思っています。
宮内氏 - 弊社は2022年1月にシリーズAラウンドの資金調達を完了し、プロダクトの売上やシェア拡大の進捗管理をより厳しく行っていかなければならないフェーズです。その上では、商談の管理や経営全体の設計など、足元のところからSalesforceをもっと活用していく必要があると思っています。また、ビジネスをさらに伸ばして行く為に、組織の拡大を進める計画です。今後、人員がどれだけ増えてもすぐに一定の成果を出してもらえるよう、Salesforceを基盤とするマーケティング・セールス・カスタマーサクセスの型をさらにしっかりと確立することが求められます。そこで、今回のプログラムで学んだことの真価が問われるのではないでしょうか。
鴻上氏 - 弊社もまさに今組織を作っている段階なので、Salesforceの仕組みの上で判断し、人を動かすという、今回教えていただいたインサイドセールスやフィールドセールスを実践していきたいと思っています。もうひとつは、プログラムで得たノウハウを私たちのプロダクト自体に反映させ、それを通じてお客様に提供していく、ということです。たとえば、「失注リードのリサイクルは大切で、このようにすればできますよ」と言葉で啓蒙するだけでなく、先ほどお話ししたように、実際に仕組み化してプロダクトに盛り込むことによって、お客様の課題を解決していきたいと考えています。
山田氏 - SaaSを提供する組織づくりという面においては、今回のプログラムによって、目指すべき姿が見えてきました。もちろん、教わったことのすべてが弊社に当てはまるかどうかはわかりませんが、そこをひとつの解として目標に掲げながら、自分たちに合う組織をしっかり作っていきたいと思います。また、今回のプログラムをきっかけに実現したいと考えていた、弊社のツールとSalesforceのデータ連携の話も実際に進んでいて、弊社としては非常にうれしく思っています。ただ、もともとプログラムへの参加目的としては、そうしたプロダクト連携をしたいという理由が大きかったのですが、実際に参加してみると、セールスフォース・ジャパンのノウハウを得られることの価値をそれ以上に強く感じました。そこはいい意味で誤算でしたし、結果として満足度150%という感じですね。
米鴻上氏 - 弊社のように、まさに組織を作っている、もしくは再構築しているような段階の企業には本当にお勧めです。ビジネスの仕組みづくりやチームづくりに課題を抱えているスタートアップの方には、ぜひ参加していただきたいですね。
山田氏 - 私もまったく同感です。やはり組織やインフラが一旦できあがってから、もう一度立て替えるのはなかなか大変ですので、今そこに取り組んでいて課題をお持ちの企業には、非常に有益なプログラムだと思います。
宮内氏 - これから組織を大きくしていこうというスタートアップの方なら、セッションやワークショップに積極的に参加することで、本当にいろいろなことを得られると思います。「The Model」をそのまま適用しなければならないわけではなく、ポイントごとに自社に合う形で取り入れればいいのではないでしょうか。
青木氏 - 皆さんのおっしゃる通りですが、個人的には、“営業のアンラーニング”ができたことにも感謝しています。20年間エンタープライズ営業に携わって培った自分の感覚ややり方の中で、変えたほうがいいものと、続けたほうがいいものを再定義することができました。そういう営業経験の長い方に大きなメリットのあるプログラムだったと思います。
<エンディング>
初めての試みでしたが、皆様様々な思いを持って本プログラムに参加いただき、自社の事業ブラッシュアップに生かしていただきました。
また、今年度も10月のプログラム開始にて「Salesforce 中小企業 イノベーション支援プログラム」と名前を変え、開催が決定いたしましたので、ぜひ皆様のご応募お待ち申し上げております。
7月1日のプレスリリース掲載とともに、オンデマンド説明会ページをオープンいたしましたので、ご興味をお持ちの皆様はまず説明会をご覧の上、エントリーのご検討をお願いいたします。
また、スタートアップ企業様やSaaSプロダクトをお持ちの企業様に向けてのコンテンツも多数用意しておりますので、そちらも併せてご覧ください。