カスタマーデータプラットフォーム(CDP)による顧客データの管理方法、そしてマーケティングや企業にもたらす影響とその重要性についてご紹介します。
1962年、ウィスコンシン州の片田舎に、時代の数十年先を行くマーケティング組織がありました。その組織は、IBM 650コンピューターとダイレクトメールプログラムを備えたデータ処理センターを運営し、読者がメッセージに反応する頻度を示す、初期の顧客予測も備えていました。
そのマーケティングの反応率は、驚くほど高く、80%もありました。
この組織は「Society of the Divine Savior」(英語)として知られる、カトリックの小さな宗派のコミュニケーション部門でした。60年近く経った今でも、人間の行動をもとにデータを扱うそのスタイルは、まさにマーケティング担当者が必要としているものです。そして80%という回答率が、彼らがデータを正しく活用していたことを示しています。
このデータ処理センターの時代から数十年の間に、私たちは革新的な技術によってマーケティングにまつわる状況が一変するのを目の当たりにしてきました。そして、企業がデジタルトランスフォーメーションの意味を再考する時を迎えるなか、データが成功の中心であることに疑いの余地はありません。だからこそマーケティングリーダーは、顧客データプラットフォーム(CDP)を非常に頼りにしているのです。
"しかし、CDPがマーケティングにおいて普遍的なものであるにもかかわらず、多くのユーザーがCDPに少しばかり困惑しています。"
ですが、CDPがマーケティングにおいて普遍的なものであるにもかかわらず、多くのユーザーがCDPに少しばかり困惑しています。CDPとは何なのでしょうか、そしてマーケティングにしか使えないものなのでしょうか?どう機能するのでしょうか?今回のブログでは、CDPによる顧客データの管理方法、およびマーケティングや企業に与える影響の重要性について説明します。
CDPとは、データを集約して顧客のプロファイルを一元的に作成するソフトウェアです。CDPは、一般に、顧客データベース、マーケティングオートメーション、マルチチャネルキャンペーン管理、データ分析、リアルタイムインタラクション管理で構成されます。基本的には、CDPはブランドとのすべてのインタラクションに関するデータを含むマーケティングデータベースを作成します。リッチな顧客データが詰まったプラットフォームを所有することは素晴らしいですが、その実用化にはシステムやデータを統合する必要があります。(英語)
世の中には100社以上のCDPベンダーが存在し、その統合機能はさまざまです。たとえば、Salesforceでは、Customer 360(英語)の機能を拡張し、各顧客の統一プロファイルを構築するデータ管理およびアクティベーションプラットフォームを追加しました。
その結果、マーケティング、Eコマース、サービスまたはそれ以上にわたる、かなりパーソナライズされたエンゲージメントを実現できます。 SalesforceのCustomer Data Platformは、マルチクラウドプラットフォームにCDPの全社的な機能を組み合わせ、MuleSoft、Tableau、AppExchangeなどを統合することで、企業が顧客とより良い関係を構築するための唯一の情報源を構築できるのです。
"カスタマージャーニー全体でパーソナライズされた体験を創造することは、マーケティング部門だけの責任ではありません。"
しかし現在、CDPを重要と考えるのはマーケティング担当の役員だけではありません。IDCのホワイトペーパー(英語)によると、カスタマージャーニー全体でパーソナライズされた体験を創造することは、マーケティングの領域を超えたものとなっています。企業は、カスタマーサービスや営業など、他の部門をこの取り組みに参加させる必要があるのです。さらに、データプライバシーと同意に関して懸念を抱く顧客は、企業全体が共通の認識を持ってデータを保護することを求めています。
CDPの主な強みは、顧客データを統合してセグメント化し、統一された顧客プロフィールを作成できる点です。したがって、顧客体験を向上させるために近代的な変革に取り組んでいる企業にとって、CDPは最適なソリューションとなるのです。
CDPを最大限に活用するには、「データ統合」「人間中心のマーケティング」「顧客の識別」「クロスチャネルでのリアルタイムの顧客エンゲージメント」の4つが重要なポイントになります。
マーケティング部門が利用するデータソースの数は年々速いペースで増加しています。調査によると、マーケティング担当者は来年、使用データソースの数が40%と大幅に増加すると予想しています。一元化された顧客データを得るためには、これらの異なるデータソースをつなげる必要がありますが、CDPにはそのサポートが可能です。たとえば、Salesforce Customer Data PlatformはMuleSoftと統合されており、多くの異なる企業システムを接続できます。また、AppExchangeとの統合により、オープンなエコシステムと顧客データを共有することもできます。
"最終的にCDPは、組織が顧客との有意義な時間を生み出し、あらゆるタッチポイントで共感を呼び起こすうえで役立つのです。 "
デジタル変革は、テクノロジーの枠を超えています。人間そのものに関わるものです。「人間中心のマーケティング」(英語)とは本質的に、信憑性を大切にして、オーディエンスを個人として尊重することを意味します。CDPは顧客のペルソナ、嗜好、親和性、人口統計などの特徴に基づいて、製品体験をパーソナライズし、彼らにエンゲージすることを簡単にします。オーディエンス分析とモデル活用し、マーケティング担当者はEメール、モバイル、ソーシャル、ウェブで、高度にパーソナライズされたマーケティングキャンペーンおよび体験を活性化できます。最終的にCDPは、組織が顧客との有意義な時間を生み出し、あらゆるタッチポイントで共感を呼び起こすうえで役立つのです。
マーケティング担当者がオーディエンスを個人として理解するためには、高度な顧客識別技術が求められます。プライバシーに準拠した方法(オーディエンスがブランドによりデータが使用されることを知っており、また認めている状況)で、顧客アイデンティティのさまざまなチャネルをすべてまとめることは、重要であると同時に複雑です。そのためCDPでは、大きなメリットとして複数の方法によりデータを保護するプライバシーツールが含まれており、さらに組み込み機能やアイデンティティおよび同意ソフトウェアプロバイダとの提携を使用して、顧客の同意を管理できるようになっています。
リアルタイムの顧客エンゲージメントは、企業のマーケティング担当者にとって最優先事項であると同時に、最大の課題でもあります。この課題の一部には、「リアルタイム」が実際に何を意味するのかについての誤解から生じているものもあります。
マーケティング担当者は、リアルタイムに実施できること、できないことを選択する必要があります。たとえば、人工知能(AI)モデルをリアルタイムで構築することはできません。しかし、ルックアップ、ルール設定、データベースへのPing送信、過去のモデルをもとにした質問などは実施できます。
"ブランドが顧客体験を改革するには、データ主導型の戦略が必要です。"
マーケティング担当者にとっては、CDP内の顧客エンゲージメントやAIベースのツールを使ってセグメントを作成し活性化することの方がずっと容易です。データインフラの最適化によりオーディエンスのプロフィールを判断し、最適なコンテンツを提供できます。最終的には、オーディエンスのロイヤルティおよび信頼をより短時間で獲得することにつながります。
Martin KihnはMarketing Cloudのマーケット戦略担当シニアバイスプレジデントです。Martin Kihnは、現職に就く前はGartnerの調査担当バイスプレジデントとしてマーケティングテクノロジーに関する執筆や講演で幅広く活動し、顧客である数多くのFortune 500企業にマーケティング戦略に関するアドバイスを行っていました。4冊の書籍も著しており、『House of Lies(ハウス・オブ・ライズ)』は米国のテレビ局「Showtime」にドラマ化され、Chris O'Haraと共著の『Customer Data Platforms: Use People Data to Transform Marketing Engagement』も刊行されています。豆知識:Kihnには1997年から1999年までMTVシリーズ『Pop-Up Video』の脚本チームリーダーを務めた経験があります。
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