2022年4月13日と14日の2日間に開催したオンラインイベント「Service Change Makers 一度の機会から生涯のお付き合いへつなぐ至高のサービス体験」。本記事では開催2日目、基調講演を含めた注目の4つのセッションを紹介します(Day1のレポートはこちら)!
Day 2は基調講演「Service Cloud Keynote つながるプラットフォームで実現する お客様との生涯のお付き合い」からスタート。セッションの冒頭で、セールスフォース・ジャパン 執行役員の湯浅 雅達によるSalesforce Customer 360のコンセプトと、サービス領域に焦点をあてたService Cloudの紹介からはじまりました。
セールスフォース・ジャパン 執行役員
クラウドセールス統括本部 統括本部長 湯浅 雅達
コンタクトセンターやカスタマーサービス部門は、社内外の期待に応え、モチベーション高くサービス品質を上げていくチーム運営の必要に迫られており、その下支えをするのが「Service Cloud」であると湯浅が続けます。電話、メール、ウェブチャット、フィールドサービスなどのさまざまな窓口を一つのプラットフォームに集約し、お客様の属性や購買履歴、問い合わせ履歴などの情報を360度見渡せるよう一元化。
「AIやナレッジワークフローによって業務の効率化や、人間らしさ・親しみを感じてもらえる対応、業務の効率化やメンバーの教育を強力にサポートする重要な役割を担います」(湯浅)。
そのService Cloudがどのようにお客様を成功に導くのか、2社の活用事例が紹介されました。
湯浅は、アフラック生命保険株式会社 執行役員 デミヨン・ハウレット 氏を招き、その活用方法を聞きました。アフラック生命保険では、顧客への提案や手続きをストレスなく実施するためにコールセンターや代理店のシステムをSalesforceに統合。お客様は、専用サイトを通じて保険契約の確認や変更、追加加入検討が行えるようになっています。コールセンターでは、問い合わせを分析することで、継続的な業務改善、FAQの充実による問題解決時間の短縮、適切なトレーニングに役立てています。
アフラック生命保険株式会社 執行役員
デミヨン・ハウレット 氏
デジタルプラットフォームの構築の秘訣についてハウレット 氏は、「お客様と、コールセンターのオペレーター、営業代理店は、本来統一されたフォームで必要なデータを参照できることが重要です。もうひとつのポイントは、パッケージを導入することです。Salesforceが用意している機能を使うことで早く安く導入することができます」と述べました。
2つ目の事例ストーリーは、千葉県北西部で都市ガスを供給する京葉ガス株式会社です。同社では、「お客様接点における期待を超える」というビジョンのもと、ガスや電気、ハウスクリーニングなどの幅広い暮らしのサービスを提供しています。
当初、ガス器具の点検やガス漏れ検査、あるいはガスメーターの検針業務などは個別のシステムで作られていたため、顧客情報・データが点在していた状況を、仮想的に連携・一元化する仕組みを構築し、Salesforceで統合的に利活用する基盤を整えました。現在は、メッセージやDMなどのさまざまなチャネルで顧客とコミュニケーションを行い、ガス機器の情報を一元管理することで顧客を深く理解し、セールス、マーケティング、サポートに活用することを計画しています。
「属人的になりがちなお客様情報を可視化できるようになりました。Salesforceの柔軟性、機動性のある機能によって、従来型の勘と経験による営業から、数値やデータによる科学的なマーケティング、あるいは営業施策変革を図ることができると考えています。データ分析によって多様化するお客様のニーズを分析、それぞれのお悩みごとに対して最適のご提案ができるようになりたいと考えています」と、同社 取締役 常務執行役員 江口 孝 氏は、お客様のロイヤリティ向上を目指しています。
京葉ガス株式会社 取締役 常務執行役員
江口 孝 氏
基調講演のオンデマンド配信はこちら
続く注目セッションは、株式会社髙田屋 代表取締役副社長COO 高橋 隆太 氏による「問い合わせ対応漏れ0件!秋田の老舗企業が実現した顧客満足度と働き方改革」です。エネルギーやプラント、電力、家電、水、薬品などの事業を展開する髙田屋は、70年近い歴史を持つ秋田の老舗企業です。
同社では紙ベースの業務・情報の属人化から脱却し、Salesforceを中心としたマルチクラウドでビジネス状況・全体像の可視化による経営判断の迅速化、現場作業の効率・正確性向上、マーケティング施策・問い合わせ対応の最適化など業務改革を実現しました。
デジタル技術による変革の実現には、導入するツールがしっかり運用されるよう定着することが肝心です。数年前はパソコンを使い慣れないスタッフも多かった髙田屋では、勤怠や経費清算など、給与に関連するシステムについてもSalesforceに統合し、組織改革に取り組む意思を共有したことで利用を進めていきました。
株式会社髙田屋 代表取締役副社長COO
高橋 隆太 氏
「勤怠、経費精算、社内の連絡もSalesforceにログインしないとできない状況を作るところが、定着化の第一歩です。もう一つ、意識の部分も大事です。全社員に対し、どうしてSalesforceを導入するのか、どうして組織改革をするのかというところを理解していただくことが極めて重要となります」(高橋 氏)
続いてのセッションは、株式会社atsumel 代表取締役 鳥居 儀彰 氏による「お客様の期待の一歩先を実現する中小企業の顧客接点改革」。根強いアナログ文化が残る不動産業界において、営業・マーケティング・カスタマーサポートを横断したデジタル化を推進し、顧客生涯価値の向上と業務効率化を同時に実現した事例です。
同社は2020年全国中小企業クラウド実践大賞最高賞、総務大臣賞を受賞していますが、10年前はITツールといえばExcelとメール程度で、データ活用や可視化・分析などは全くできていませんでした。集客はチラシとポータルサイトへの広告に大きな投資を行い、社内の情報共有は週次で口頭やExcelで実施していたため、日々の行動やアプローチのシナリオが見えない状況でした。従業員は目標に達成せず、残業時間も月間100時間を超え、モチベーションが高まる環境ではありませんでした。
そこで2012年にSalesforceを導入。データの収集を徹底し、問題点の可視化をすることで行動改善を実現します。鳥居 氏は「営業スタッフが月次実績ゼロとなる件数は、前年と比較して半減し、入社1年目のスタッフの手数料収入が800万円から2000万円と2倍以上になりました。Salesforceでお客様の情報が見られるようになったので、チラシでの集客は思い切って削って、Webでの集客に舵を切りました」と振り返りました。
株式会社atsumel 代表取締役
鳥居 儀彰 氏
商談設定を行うインサイドセールスチームを作り、マーケティングオートメーションの仕組みも取り入れ、効率よく成約を獲得できる組織を確立。
「お客様とのコミュニケーションをよりライトにしていき、Salesforceを通して顧客満足を高める術を広げていきたいと思っています」(鳥居 氏)
クロージングセッション「経営貢献するセンターの作り方『1to1』を究めるデータ活用の要諦」では、株式会社リックテレコム 『コールセンタージャパン』編集長 矢島 竜児 氏をホストに、リコージャパン株式会社 マーケティング本部の木内 聡 氏、株式会社WOWOWコミュニケーションズ マーケティング事業本部の渡邊 博 氏の2人をゲストに迎え、コンタクトセンターが収益に貢献する方法について両社の事例を交えながら議論が行われました。
コールセンタージャパンの調査では、コールセンターの設立目的は顧客満足度の向上であるものの、そこで重視される管理指標は応答率(つながりやすさ)となっており、応答したお客様の継続率や利用金額を指標としている割合は少ない傾向にあると説明。矢島 氏は、つながりやすさは顧客体験の一部であるとし、お客様の声(VOC)からもたらされる個別最適化(1to1)した対応やコスト削減によって経営貢献がなされると補足しました。
株式会社リックテレコム 『コールセンタージャパン』
編集長 矢島 竜児 氏
衛生放送事業者であるWOWOWのコンタクトセンター事業から生まれた株式会社WOWOWコミュニケーションズは現在、その半分の収益を外部の顧客に提供するプロダクトから得ています。プロダクトは、コンタクトセンターだけでなく、Web開発、SNS運営、ECサイト、教育・研修など多岐にわたっています。WOWOW向けの事業で培ったノウハウを、さまざまな外部向け事業に活かしているのです。
そのひとつが、月額課金のサービスであるWOWOWの解約抑止の取り組みです。顧客の解約のパターンを分析し、それを抑止するための対応をコンタクトセンターで行っています。顧客のエリアや視聴履歴、趣味趣向やこれまでのトランザクションデータなどを分析し、そのパターンを62に分類し、解約の意思を持つ方に個別の提案を行っています。
「お客様から解約の問い合わせがあった際に、いくつかのヒアリングをして、その結果からパターンにあわせたスクリプトを使って応答しています。これをすることで、引き続き3ヶ月後も利用する率がアップしました。これだけで1億円ほどのビジネスの損失を抑止できています」(渡邊 氏)
株式会社WOWOWコミュニケーションズ マーケティング事業本部
営業部 部長 渡邊 博 氏
リコージャパンでは、販売した製品やITソリューションの顧客からの問い合わせを受け付けるセンターと、機器の故障の自動通知をもとにして連絡を行うセンターを運営しています。年間339万件の問い合わせに対応していますが、VOCの活動やチャットボット、オンラインでの情報提供によってサービス品質を高め、年間10万〜20万件の削減を実現しています。
「問い合わせ対応をCRM基盤であるSalesforce上に集約し、コンタクトセンターの機能やお客様の情報、販売、サービスの対応などをすべて共有しまして、タイムリーにお客様との接点活動を確認できます。訪問販売で行ってきたリアルの営業やエンジニアの活動に加えて、AIなどの利用によってデジタル情報が非常に活用できるようなりました。全社員がワンチームであたかも1人の担当がお客様のサービスを提供するような形でご支援をし、さらなるお客様の満足度向上に取り組んでいます」(木内 氏)
リコージャパン株式会社 マーケティング本部 マーケティングセンター
Neo ONE準備室 副室長 木内 聡 氏
矢島氏は、本セッション前に視聴者に行ったアンケート「顧客との関係作りとロイヤルティ向上に向けての大きな課題」の結果を発表しました。もっとも大きな課題として選ばれたのは回答者約半数の48%が選んだ「VOCを含めた顧客データの有効活用」、続いて23%の「電話以外のテキストコミュニケーションチャネルの活用」、13%の「オペレーターの採用は育成」となり、VOCを経営に取り入れる考えが大きく浸透していることがわかりました。
最後にService Change Makersとは何かについて、木内 氏と渡邊 氏は次のようにコメントしました。
「これからは困っている人に我々自身から手を差し伸べる。やはりそもそも困っていることにお気づきでないお客様もいらっしゃいますので、能動的にお声掛けするといった変革がService Change Makersとなるでしょう」(木内 氏)
「ユーザーが何をして欲しいか、どんなことをしたら喜ばれるかを分析してサービスとして昇華していくのが本当の意味のユーザーライクな活動です。このあたりがまさにService Change Makersとなると感じています」(渡邊 氏)
2日間にわたって展開されたSalesforce LIVE Japan Service Change Makersでは、企業と顧客とのサービス体験についてのセッションが展開されました。
Service Cloudについてもっとくわしく知りたい方はこちらへお問い合わせください。
ロボット工学の第一人者である大阪大学の石黒 浩 氏と世代トレンド評論家として活躍される牛窪 恵 氏をお招きした特別講演のほか、Day 1のレポートはこちらからご覧ください。
また、5月はコンタクトセンター/サービス分野に続いて、セールス(営業)のChange Makerを集めたイベントを開催します!ぜひこちらもお見逃しなく!