シリーズ: Salesforce営業組織の今を知る
#1-1 Salesforceのインサイドセールスを知り尽くした人

こんにちは。セールスフォース・ジャパン(以下、Salesforce)でインサイドセールス部門を統括している鈴木淳一です。今回、ブログにて「Salesforce営業組織の今を知る」という連載を始めることとなり、その第1回目の記事として恐縮ですが「Salesforceのインサイドセールスを知り尽くした人」というタイトルでお届けしたいと思います。このブログ記事はインサイドセールスのシニアメンバーが企画している新たなアプローチの1つなんです。大変嬉しいことに弊社のインサイドセールスの仕組みをモデルケースにしたいというお話をいただく機会も年々増加しており、できる限り最新の状況をブログ記事にてご紹介致します。

 

 

インサイドセールスのミッションとは?

新型コロナウィルスによってフィールドセールスが対面での営業に制約がかけられたことで、インサイドセールスの重要性は、昨今ますます注目されています。昨年実施したインサイドセールス立ち上げご相談回数は515回に達しました(1日2回実施している計算です)。しかし多くの企業はインサイドセールスの効果を十分に発揮できていない、期待していた組織運用が出来ていないと感じているのが事実ではないでしょうか?こちらで改めてインサイドセールスのあるべき姿、Salesforceが信じて実践しているポイントについてお話させて頂きます。

私たちはインサイドセールスを、お客さまの最も近くにいる組織として、常にお客さまに寄り添いながら、それぞれのニーズや状況の変化をとらえること、そしてそれをマーケティングやフィールドセールス、カスタマーサクセス、さらには製品担当などの各部門にフィードバックし、お客さまの満足度向上やカスタマーサクセスへと繋げていく重要な役割としています(図1)。

まさにお客様と企業を繋ぐハブ、お客様と企業の間にある溝を埋める役割です。

 

図1:インサイドセールスのミッション

 

ところが、大切なミッション実現を明確に設定せず、インサイドセールスをマーケティングやフィールドセールスの下部組織のように位置づけてしまう企業が多いのも現状です。そうした各部門での連携が上手くなされていない組織では、マーケティングとフィールドセールスのプロセスを抜本的に改革することも、時代の変化に対処することも困難です。

こうした考え方のもと、Salesforceでは、マーケティングとフィールドセールスの両部門から独立した経営直下の組織としてインサイドセールス部門を設置しています。そのうえで「The Model」(図2)と呼ばれるフレームワークをベースにインサイドセールス、マーケティング、フィールドセールス、そしてカスタマーサクセスの4者が共通のKPIを持って協業する体制を築いています。

 

図2:Salesforceの「The Model」

 

この協業体制のポイントは、各部門がお互いの目標数値に合意したうえで、それぞれが目標の達成を目指していくことにあります。

今回の新型コロナウィルスの影響で、SalesforceでもThe Modelの見直しが行われました。オンラインセミナーへの移行でイベント登録者数は増加したものの、商談化率が低下し、商談期間が伸びる。今までの目標数値では理想の成長を維持できない事が明確になり、各部門の目標数字を修正する作業です。この場合でも他部門の数字がリアルタイムに確認できている事は大きな強みとなりました。マーケティングのオンラインセミナーでの参加率低下を確認し、インサイドセールスが集客のターゲットを変えて補填する。インサイドセールスのアポイント率を上げる為にEnablementが教育コンテンツを追加する。商談期間延長を防ぐ為に商談の決裁者同席率を上げる。状況を理解しているからこそ、正しい打ち手を最短で補填するチームワークで立ち向かう事が出来ています。

 

SaaS ビジネス成功の基礎「The Model」

新規顧客獲得から解約抑止まで、Salesforceのベストプラクティスを凝縮。SaaSビジネスを最適化することが可能な「The Model」の基礎知識を学べる動画です。

 

データの見える化でインサイドセールスを科学的に変える!

お互いの部門状況を正しく理解する為には状況の共有だけでなく、数字に基づいた事実の共有が重要です。SalesforceではSalesforceとBIツールである「Tableau」を活用し、インサイドセールスによるお客さまとのアポイント獲得からフィールドセールスによる受注に至るまでのプロセスや進捗状況を、ダッシュボードでリアルタイムに確認しています(図3)。

インサイドセールスが出したアポイントの50%しか有効商談になっていないチームがある。作成した商談金額が受注時に半減している。この様な情報を見出し、マーケティング活動から受注まで「どこで誰に問題が発生しているのか」数字で正しく理解する事が改善への最短ルートとなります。このデータを経営陣から新人営業メンバーまでリアルタイムに閲覧する事で、全社員がお客様の成功に向けて改善点を見いだせるのはSalesforceならではの強みと言えます。感覚や経験だけでは正しい事実にたどり着かず、改善が後手になってしまいます。特に変化の激しいこの1年では、データで素早く判断できる事で沢山の課題に迅速に対応する事が出来ました。

 

図3:Salesforce とTableauによるセールス状況の可視化イメージ
(※数値はサンプルとなります)

 

このダッシュボードでは、インサイドセールスが商談化した個々の案件の状況が、部門ごと、マネージャーごと、さらには担当者ごとに詳しく閲覧できます。これによりそれぞれのお客さまへの対応状況が明確になり、目標達成に向けて必要なアクションの決定やボトルネックの解析もスムーズです(図4)。

この1年間、在宅勤務でのトーク力改善の為に新たな挑戦も行いました。以前はマネージャーが隣の席に座り、コール内容をモニタリングし指導していましたが在宅勤務ではその様な指導が出来ません。代わる手段としてインサイドセールスの営業トークをAI分析し、最適なトークの方を再構築。スコアリングを実施する事で定量的にトーク力を改善するアプローチを行いました。メンバーへのフィードバックは全社公開のSlackグループで行い、常にノウハウが共有できる体制を取りました。以下がトーク力分析のTableauダッシュボードです。電話冒頭での「なぜあなたに電話したのか?」理由付けが弱い。事例のストーリーテリングに改善の余地がある。定量データを用いれば、マネージャーによってフィードバックのポイントが違う!という様な誤差も改善する事が出来ます。明確なトークスコアで他者比較ができる事でメンバー同士でもトーク力改善の情報交換が進んだ事が大きな成果となっています。今では成績優秀者のノウハウシェアがメンバー主体で毎週開催される程、ノウハウの交流が盛んになりました。これもIP電話やWEB会議を使いトークデータを詳細に分析してスコア化できる。インサイドセールスならではの変化への対応だと考えています。

 

図4:Salesforceで使用されているトーク分析ダッシュボード
(※数値はサンプルとなります)

 

10分で学ぶ、テレワーク時代のインサイドセールス・ワークフロー

インサイドセールスは、従来の営業スタイルを大きく変え、大きな効率化を実現する有力な手段です。インサイドセールスの実際の業務でどのようにツールを使い、効率的な運用ができるのか、デモンストレーションを中心に10分でご紹介します。

 

優れたインサイドセールス組織の作り方

インサイドセールスの組織としての成功には、適切な人材の確保と育成が不可欠です。その出発点となるのが、インサイドセールスのミッションを明確に定義することです。組織のミッションが定義されていれば、どのような人材を配置/育成すべきかの方針も定まります(図5)。

 

図5:インサイドセールス組織を作るための7つのステップ

 

インサイドセールスの重要なミッションは、お客さまに寄り添い、それぞれのニーズや状況の変化をとらえて満足度を高め、かつ、成功を支援することです。そのミッションを担う人材に最も必要とされる資質は、人の話に興味を持って耳を傾け、理解し、共感できる「傾聴力」。その資質がなければ、お客さまの満足のゆくサービスを提案することはできません。また、傾聴力を支える一つは「好奇心」ですが、インサイドセールスとして成功するうえでは、最先端分野の技術やビジネスに常に興味を持ち、アンテナを張り巡らせていることも大切です。

もう1つ、インサイドセールスには物事の本質を追い求める姿勢も必要とされます。上述のとおり、Salesforceを活用することで、データを駆使しながら、セールス活動の効率性と結果を科学的に高めていくことができます。また、Salesforceではインサイドセールスの担当者を「最先端の技術を用いて最も生産性の高い営業をする人」と定義しており、その可能性に惹かれ、多くの人材がインサイドセールス組織に集まっています。

ミッションを明確にし、業務の価値を高める。データから事実を掴む事を習慣化させる事でデータドリブンで改善策を見出す人材を育成する事が出来ます。これからのデジタル人材を育成する土壌としてインサイドセールスは最適な環境です。

 

役割別 Salesforce導入のメリット
~経営者、営業部門、情報システム部門での活用方法~

すべての役割の方にこれまでにないメリットをまったく新しい手法で顧客、従業員、パートナーをつなぐSalesforceは、営業の業務にかかわる方にさまざまなメリットを提供します。

 

最後に…

インサイドセールスを、とりあえず始めてみようという企業も多いと思いますが、道のりはそう簡単ではありません。実際に私たちも、多くの壁を乗り越え、現在も変化に対応できる組織としてアップデートを続けています。マーケティングとフィールドセールスの間で、最初にお客さまへインサイトを与えることが求められる、とても難しい部門です。ただその分、組織として確立され成果が出た時、企業が手にする価値はとても大きなものです。インサイドセールス部門のミッションは何なのか、どんな人を配置し、どんなデータを揃え、どんな部門間連携をして、どんな成果を出すのか。さらに、メンバーのキャリアプランや育成についても考えていけば、お客さまに最も近い組織として素晴らしい働きを果たすことは間違いありません。しっかりとステップを踏んで向き合えば、おのずと成果は現れるはずです。上記のステップを1つ1つ丁寧に実施する事で、単なる電話営業の組織から会社に大きく貢献できる有効な組織へ進化する事が出来ます。このステップについて詳細を知りたい方は是非個別にお問い合わせ下さい。

 

売れる営業マンを仕組みで作る マネージャー必見の"社内大学"とは?

中長期的に優秀な人材を育て上げる仕組みの一つとして”社内大学”の取り組みについて、セールスフォース・ジャパン社内で実際に行われている講座科目も含めて解説いたします。

 


 

鈴木 淳一

株式会社セールスフォース・ジャパン
執行役員
セールスデベロップメント本部 本部長

広告系ベンチャー企業の営業マネージャーを経て、 2010年インサイドセールスとして現職に入社。 外勤営業を経験した後、 インサイドセールス部門にてマネジメントを行う。インサイドセールスにてスタートアップ/中堅中小およびエンタープライズ部門を統括。インサイドセールス、The Model、SaaSのノウハウ提供も行う。

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