12月11、12日の2日間、セールスフォース・ドットコムが日本で初めてハッカソンを主催しました。ハッカソンは、Hack(ハック)とMarathon(マラソン)を組み合わせた言葉で、主にエンジニアがチームを作り、ビジネスやテクノロジーのプロトタイプを制限時間内に創り上げるイベントです。今回は、初日に与えられたテーマを解決するために、Salesforceでアプリケーションを開発するという内容。Salesforceプラットフォームがベースになるため、技術力の高いメンバーが競う一般的なハッカソンとは異なり、コーディングの知識だけでなく、課題をつかむ能力に長けたコンサルタントやマーケターといったビジネス知識の豊富な人材など、多様なスキルを持ち寄ってコラボレーションできることが特色です。
チームは3~5名とし、参加費は無料。オンラインでの開催となります。多数の申し込みの中から、事前選考を通過した6チームが参加しました。Salesforce経験の極めて少ないメンバーや、IT経験のないメンバーが入っているチームもあり、多様なバックグラウンドを持つ仲間が集まってハッカソンに挑みました。プロジェクトの開始は11日10時。終了は12日15時です。審査のために15時30分より各チーム10分間のプレゼンテーションを行うため、29時間以内にアプリケーションだけでなく、プレゼンの準備まで整えておく必要があります。
参加者の様子
審査対象となる成果物は、プレゼンテーションとアプリケーション。アプリケーションは、Salesforce Platform上に構築し、Lightning Experience UIとExperience Cloud(LWRテンプレート)の両方もしくはどちらかで稼働することが条件です。一般に公開されている無償のサービスで必要なものがあれば、API連携して利用することも可能です。
審査は基準は4つ。まずは、”アイデア”。次に、”技術”。3つ目は”プレゼンテーション”。そして、”楽しさ”です。Salesforceを使ったからこそ感じられる楽しさを、どのように成果物に込められるのかも各チームの腕の見せ所になります。賞については、最優秀賞、テクニカル賞、アイディア賞の3つの賞が用意されました。
さて、注目のテーマは、「保育園の課題を解決する」ことです。ITの活用が進んでいないと言われている分野で、Salesforceを使うことでどのような課題を解決できるのかが問われます。予算は無制限、売上向上の必要はない、という条件が設定されているため、実現する変革のアイデアは無限というなかで、各チームは知恵を絞ることになりました。
審査員からは、「全チームがアイデアを含めて、きちんと課題を解決する方向でアプリケーションを開発していて、実際に使えそうなものばかり。審査していて楽しかった」という全体評価をいただくことができました。
では、受賞作品を見て行きましょう!
FiSHは、まず保育業界全体の課題として保育士不足や待機児童問題、デジタル化の遅れなどを指摘しました。その上で、園の課題として職員側の「サービスが不十分であるが時間が足りない」、保護者側の「もっと安心して子どもを預けたい」という両面からクローズアップさせ、放置せずいますぐ手を打つべきだと訴えました。
これにより、改革案は大がかりなものになりましたが、段階的にアプリケーションを強化してデジタル化を推進するという方向性に落とし込み、「今すぐにでも解決できる部分」をデモで見せるというプレゼンテーションを実施しました。連絡帳は使いやすいモバイルアプリを配布。すべての情報はSalesforceに集約し、保護者と園、および園内の連絡をすべてデジタル化してスムーズに行える仕組みを整えました。
「楽しさ」も十分で、子どもが登園するとバッジをもらえる機能があります。どうぶつの描かれたバッジを集められるため、子どもたちは登園へのモチベーションが高まります。保護者は紙の連絡帳を書く時間を最小化し、すき間時間にスマートフォンで手軽に連絡内容を入力できます。こうした手間の削減を、「子どもが親に甘えられる時間を増やす」と定義したことも、FiSHのプレゼンテーションの魅力になりました。
「子どもが保育園に行く目的を作るという視点を高く評価しました。保育士の魅力向上などさまざまな要素があり、園児が行きたくなって保育士もハッピーになるという、すばらしい発表でした」(審査員:宮田 セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセス統括本部本部長 専務執行役員)
受賞者インタビューでは、「初めてハッカソンを開催されると聞き、狙うなら初代チャンピオンだ! という意気込みで参加しました。これまで使ったことのないテクノロジーも使いながら、時間に追わる中で夜中に開発したことは良い思い出です。」と語ってくれました。
ロートの愉快な仲間たちは、発表時間の大半をデモに割きました。受け入れ準備から登園ラッシュ、園内の活動記録、お迎えというシナリオに沿って、実際に動く画面を見せながら具体的な改善策をさまざまな場面で提案するというスタイルで、使っているシーンをイメージしやすいプレゼンテーションでした。
園児に体温計とGPSを備えたデバイスを配布。その情報に基づいて、登園すれば自動的にチェックインされる仕組みを構築し、同時に体温データを取得します。「給食を食べた」、「トイレ」、「お昼寝」などの活動は、入力不要の数タップで記録できるようにし、過去のデータを含めて一覧できます。
すべての情報がデジタル化されており、園長が対応すべき重要な内容はCase化し、園長のダッシュボードへと配信。園長はこの画面を通じて未完了のCaseを確認できるほか、保育士や看護師の残業時間など、園の運営にかかわるすべての情報を視覚的に把握できるようになります。
「位置情報デバイスを利用した園児の居場所確認は、GPSだけでは少し甘いかもしれませんが、十分に実現可能だと感じました。保育士向けのモバイルアプリのUIにおいて、タップ数が少ないことをアピールしてくれた点が好感でした」(審査員:及川 喜之 セールスフォース・ドットコムCTO)
「見える・つながる・安心のみんながたのしい保育園」
池袋ベアリスタは、保育園の抱えている課題の中から、1.園長との連絡が対面前提になっていて外出時に連絡を取りづらい、2.保護者との緊急連絡が取れないケースがある、3.出欠集計や給食不要数、引継ぎなど、保育士のデスクワーク時間が長い、という3点に注目しました。
これらは、主にコミュニケーションの課題を解決するという方向性になります。具体的には、保護者向けに連絡帳アプリケーションを開発し、毎日紙に書いてもらっていた内容を入力してもらえるようにします。入力内容はSalesforceに登録され、集計を自動化します。
連絡は、クラス単位、保護者単位のChatterで行います。保育士は、たとえば園内で写真を撮ってクラスのChatterに投稿することができるため、保護者はいつでもどこからでも最新の子どもの様子を、セキュアな環境で確認できます。保育士向けのアプリも用意し、園長への連絡や引継ぎ内容はすべてスマートフォンで手軽に入力できるようにしました。これにより、園長はダッシュボードを通じて、外出先であっても保育園の最新情報を確認できるようになります。
「KPIや権限設定など、園長の目線がしっかり入っていました。また、アナログで記録することが多い内容をデジタル化するというポイントも高く評価しました」(審査員:橋本 真里子氏 株式会社RECEPTIONIST 代表取締役CEO)
ここまで紹介しました3チームの発表に加えて、今回惜しくも入賞を逃した ADX Conulting、Raccoooon!、チーム寄せ鍋を含めた全ての発表はオンデマンド配信中です。また、各チームの発表資料はTrailblazers Communityよりダウンロード頂けます。
今回は初めての開催でしたが、多くの反響を頂くことができました。次回開催も検討中です。最新情報は、Salesforce Japan Developer Twitterでシェアしますので、ご興味のある方は、ぜひフォローしてください。