Salesforceを活用して企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支え、未来に向けて新たな道を切り拓くTrailblazer(トレイルブレイザー:先駆者) 。その成功の裏にはどのようなストーリーがあったのでしょうか。今回は、三菱電機株式会社 上村亜津子氏、アクセンチュア株式会社 小坂 駿氏のお二人にインタビューを行いました。

三菱電機株式会社 上村 亜津子氏

Salesforce未経験から社内の組織風土改革を推進。導入から2年を経て、部門を超えた情報共有、および組織横断のオープンな環境でのナレッジシェアを実現。またSalesforce導入の経験をプレゼンで伝える「SFUG CUP 2021 全国活用チャンピオン大会」 に出場し、ファイナリストに選出されました。

これまでの自分と職場を変えた、Salesforceとの出会い

上村氏がSalesforceと出会ったのは2年前。

三菱電機株式会社のFA 海外事業部において、顧客情報を一元管理することで部門間連携を強化し、各地域での営業効率を向上させることを目的にSalesforceを導入したのがきっかけでした。その時点ではSalesforce未経験だったといいます。

「IT知識ゼロの状態で、ある日突然Salesforceの担当になりました。当時を思い出すと、縦割り組織で情報がクローズされサイロ化するなど課題も多く、大企業だから仕方ないという諦めが先行し、私には変えようがないと決めつけていました。しかし、Salesforceに触れていくうちに、もしかしたらこの新しいツールを使って、組織の壁を越えてオープンな職場に変えられるかもしれないと思いはじめました。」

その後上村氏は、社内におけるSalesforceの定着化に尽力。導入から約1年後、ログイン率90%、営業報告件数160%、Chatter投稿520%を実現し、社内の定着化を成功させました。それまでに、どんな心境の変化があったのでしょうか。上村氏は当時を次のように振り返ります。

「自分から始めることを心がけました。職場で新しい取り組みを始める時、誰もが億劫になりがちです。周囲を巻き込むためには、誰かがやって見せる必要がありました。そこで、私は自信の無さやシャイな自分の殻を破り、毎週Chatterで投稿することを習慣化し、情報だけでなく職場の課題とそれをどのように変えたいかオープンに自分の思いも共有するようにしました。利用度の低い同僚には、地道に声を掛け続けると共に、無理強いはせず、ログインしたくなるような環境作りに励みました。結果、定着が進み、今ではSalesforceのファンが社内で増えました。また、定着率が高まるにつれて、職場が明るくなり、社内で新しい取り組みを始める際に部門の壁を超えて有志の仲間が集まるようになりました。今では、その仲間が自ら新しい取り組みを始め、更に賛同する仲間が集まるようになっています。ほんの小さな一歩が、私自身を変えただけでなく、周囲にも広がり、職場全体で当社の経営理念であるChanges for the Betterに向けて取り組んでいます。」


 

楽しみながら学ぶことが、スキルアップにつながった

社内でSalesforceのエバンジェリストとして経験を積んでいった上村氏。IT未経験の状態からどのように理解を深め、自身のスキルを磨くことができたのでしょうか。

「まずは時間を取って、Salesforceの世界にどっぷり飛び込みました。ただ、あまり学習を義務的に捉えることはせずに、遊び感覚で学んでいきました。楽しみながら学習することで、知的好奇心が刺激されるので、吸収スピードも早まったように思いますね。実際にプロダクトに触れることや、ゲーム感覚でスキルを身につけることができるTrailheadは積極的に活用していました。ロジカルな説明や定量的なデータを大切にした説得力のある構成になっており、社内に内容をシェアする際にも説明しやすいところが好きなポイントですね。

特に気に入っているのは、ストーリーによってミーティング、プレゼンテーション、コミュニケーションの説得力がどれほど増すのかを学ぶことができるストーリーテリングの単元です。ここでの学びをSFUG CUP 2021 全国活用チャンピオン大会でも実践しました。その他、Trailblazer Communityでは自分と同じようにスキルアップを目指す方や、導入企業の事例を見ることで、「当社にもできるはず」と職場への還元方法のアイデアを学ぶことができ、主にインプット面でとても助かったなと感じています。自社だけではなく仲間と変革を目指していくことができるのもSalesforceの魅力だと思うので、これから取り組む方にもぜひ活用してほしいですね。」

自身のスキルアップに取り組む傍ら、上村氏は今年開催されたSFUG CUP 2021 全国活用チャンピオン大会に出場し、ファイナリストに選出されています。出場を決められた理由や、当日までの思いについてお伺いしました。

「今までの自分なら私にはできないときっと参加しなかった大会ですが、先輩と上司からの応援があり出場を決めました。予選の前日は、日本全国の皆さんに恥を晒してしまうのではと恐怖でパニックになりましたが、結果的に決勝にまで進むことができ、一生の思い出になりました。決勝の当日は、同僚からアドバイスを貰った通り、心を開いて本音で自分らしく話すことを意識して臨みました。一人でも多くの方の心に届いていれば嬉しいです。」

 


 

働きがいのある環境作りを目指したい

「近年、働き方や価値観が大きく変わる中でキャリアに悩む方が多いと感じています。自分がこれまで取り組んできたことや、悩んできた事を通して、後輩たちが日々ワクワクして仕事に取り組むことができる環境作りに貢献したいという思いがあります。また、当社の組織風土変革を目的に、社内公募で集まった社員が会社の課題を洗い出し、改善策を提言する全社変革プロジェクト「チーム創生」にも参画しています。まずは私たちが変わっていくことで、お客様から信頼して頂ける企業に変わりたいです。」

  • SFUG CUP 2021プレゼン動画はこちら
  • SFUG CUP 2021ファイナリストのレポート記事はこちら

 


アクセンチュア株式会社 小坂 駿氏

同社で複数のSalesforce導入プロジェクトに携わり、アーキテクトとしてプロジェクト内の技術課題に対する方針を検討、実装を推進。2018年にはTrailheadのバッジ数世界No.1を獲得しました。さらに、Salesforce のコミュニティやビジネスに最も貢献した人物として、2018年のSalesforce MVPに選出。今年4月には、Salesforceの認定資格の中で最高峰の難易度を誇る「認定テクニカルアーキテクト(CTA)」の資格も取得しています。

 

人・システム・顧客とつながり、俯瞰的な視野を与える「アーキテクト」

エンジニアとしてキャリアをスタートさせた小坂氏はSalesforceとの関わりを経て、現在はアーキテクトとして数多くのプロジェクトを推進しています。Salesforce認定資格の最高峰「CTA」の資格も持つ小坂氏は、エンジニアやアーキテクトがビジネスに与える影響ついて、次のように語ります。

「アーキテクトの中にもさまざまな役割があると思いますが、私なりの定義としては、機能するものをつくるところにフォーカスしているのがエンジニア、どうつくるかにフォーカスしているのがアーキテクトだと思います。より設計や全体最適化に軸を置いているイメージです。正しくつくる、という観点ではエンジニアもアーキテクトも同じ方向を向いており、優劣はないと思います。現在では人・システム・顧客とのつながりがより重要となっており、アーキテクトの存在は物事に俯瞰的な視野を与られるという点で、ビジネスの成功に貢献できると思います。」

近年では、ソースコードの記述をせずにWebサービスやアプリなどのソフトウェアが開発できる「ノーコード開発」という言葉も話題になっています。ノーコードの普及がエンジニアに与える影響はどのようなものがあるか、お伺いしました。

「ノーコードのツールのメリットはプログラミングが不要になるという事ではなく、開発に求められる技術スキルが下がることだと思います。エンジニアにとっても簡単に開発ができるということはある種のメリットだと思いますが、まだノーコードでは非機能要件への適応や拡張性など、コード開発に及ばない部分が多々あります。簡単にできるが故にガバナンスを利かせないと技術的負債も生まれやすいため、ノーコードが普及してもプログラミング的思考は必要です。エンジニアとしては正しくつくるための考え方を身につけることでツールの変化に適応していけるのではないかと思います。」

 

情熱を持って手を動かすことが学びに

小坂氏は、主にテクニカルな内容で顧客やチームメンバーとコミュニケーションを行い、自身が直接関わるプロジェクト以外でも相談を受けたり、ソリューションのレビューを行ったりと、幅広く活躍しています。周囲の誰よりもSalesforceについて詳しくなるために、どのように学習を進めてきたかをお伺いしました。

「元々、興味を持ったことは時間を忘れてとことん突き詰めるタイプなので、結果的に学習になっていることが多いのですが、Salesforce自体が変化・成長を続けており常にキャッチアップが必要であることと、私自身の好奇心がある性格が合わさって学び続けるモチベーションになっていると思います。また、Trailheadでスキルについて模擬体験をした上でプロジェクトに入ることは有効だと思います。私の好きなトレイルの1つに「職場における平等の推進」があります。私はこの単元を学ぶまでUnconsiouos Bias (無意識の偏見)という言葉をよく理解していませんでしたが、ここでの学びにより無意識の偏見を認知することができ、仕事でのコミュニケーションや判断においてポジティブに働いていると思います。ハードスキルだけではなく、ソフトスキルが学べることはTrailheadの大きな魅力の1つですよね。

これから学習を始める方やスキルアップを目指す方も、何よりもスキルアップを志すこと、情熱を持って手を動かし、学び続けることが結果的にキャリアアップにつながっていくと思います。また、1人で抱え込まず、Trailblazer Communityをはじめとしたコミュニティのリソースやネットワークを活用することも大切です。」

 

コミュニティで得た学びを、周囲に還元していきたい


 

2018年にはSalesforceのコミュニティやビジネスに最も貢献した人物として、Salesforce MVPにも選出された小坂氏。

そこに至るまでには、Trailblazer Communityで同じ志を持つ仲間との関わりが不可欠だったと言います。自身もアウトプットを続ける理由についてお伺いしました。

「Trailblazer Communityには今でも毎日ログインしていて、主に新しい情報を収集したり、国内外のTrailblazerとコミュニケーションをとったり、質問に答えたり答えてもらったりなど、私のアンテナの1つとして有効活用しています。私がSalesforceを始めたばかりのころ、Trailblazer Communityのリソースで調べ物が解決したり、勉強会やイベントに登壇されている方に勇気をもらったりしました。Salesforceのコミュニティには優しい方が多く、そういった方との関わりが自身の成長につながったと思いますし、自然と小さな学びやアウトプットでもコミュニティに還元したいと思うようになりました。現在も、得たスキルをTwitterで発信したり、勉強会で発表したり、ブログ記事にまとめたり、ツールを作ったりとアウトプットすることで還元しています。今後は、Salesforceや周辺の技術をより極め、第一人者であり続けたいです。また、自身のスキルアップだけでなく、組織やエコシステムのスキルの底上げに注力し、新しい仕組みや形に残るアセットでエコシステムに貢献できたらと思っています。」

 

 

  • エンジニアやアーキテクト必見の小坂氏のTwitterはこちら
  • 2022年1月に開催されるSalesforceのコミュニティカンファレンス、Japan Dreamin’の企画にも携わっています。ぜひチェックしてください


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