2021年11月11日と12日の2日間、ザ・プリンス パークタワー東京をメイン会場としてオンライン開催された「Salesforce Success Anywhere World Tour Tokyo」。今回のテーマは「Digital HQ(会社を動かすデジタル中枢)」「信頼を生み出す企業」「変革を起こすTrailblazerに」「企業価値を高め持続可能な社会を創る」の4つ。デジタル社会が加速するなかで変化する働き方やコミュニケーション、ビジネスのあり方に加え、それを実現する最新のイノベーション、また次世代に向けた社会課題の解決についての意見も交わされました。
今回、SalesforceのWorld Tour としては2年ぶりの開催となり、1万名以上にご参加いただきました。2日間で60を超えるセッションが展開され、そのなかでも特に注目を集めた4つのセッションを2回のブログに渡ってお伝えします。
オープニングとなる基調講演は「 Welcome to the Trusted Enterprise『信頼を生み出す企業』になるために」です。
Salesforceでは、新しいテクノロジーを活用して新しい未来を創り、イノベーションを起こす先駆者のことを「Trailblazer(トレイルブレイザー)」と呼んでいます。基調講演のPre-showでは、世界各地で活躍するTrailblazerのビデオが上映され、日本のTrailblazerの代表として三菱電機株式会社 FAシステム事業本部 FA海外事業部の上村亜津子氏が登壇。上村氏は、ITの経験や知識が少ない頃からSalesforceの導入を推進し、ログイン率を20%から90%に改善し、部門を超えたコミュニケーションも5倍とするなど社内を変革しています。
三菱電機株式会社 FAシステム事業本部 FA海外事業部の上村亜津子氏
上村氏は「ユーザーに寄り添い、どれだけ時間をかけてもいいので、優しく、温かく声をかけ続けました。すると周りにも変化が訪れて、社内の空気も変わったと感じています。先輩から『職場が明るくなったね』と言われたことを覚えています」と自身の活動を振り返りました。
基調講演の冒頭、株式会社セールスフォース・ドットコムの代表取締役会長 兼 社長 小出 伸一は、講演のテーマを「信頼を生み出す企業」とし、2年ぶりの開催となるイベント参加への感謝の気持ちを伝えました。
株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長 兼 社長 小出 伸一
現在、企業が多くの課題を抱えています。パンデミックによってライフスタイルが変化した顧客への対応や、DXを担う人材不足、持続可能で平等な社会を実現していくための企業、政府、社会の協力などです。小出は「Salesforceでは、ビジネスが社会を変える最良のプラットフォームと考え、また全ての企業が社会をより良い方向に変える力を持っていると私達は考えています」と述べ、そのヒントを探るべく米国セールスフォース・ドットコム プレジデント 兼 最高マーケティング責任者 サラ・フランクリンのプレゼンテーションを案内しました。
小出が挙げたさまざまな課題の対処法についてサラは「信頼を生み出す企業になることで、社会に変革をもたらすことができます。Salesforceでは、そのための要素を『信頼』『カスタマーファースト』『Diigital HQ』『健康と安全』『サスティナビリティ』と考えています。私たちにとって、社員、お客様、パートナー、そしてコミュニティからの信頼以上に重要なものはありません」と切り出しました。
米国セールスフォース・ドットコム プレジデント 兼 最高マーケティング責任者 サラ・フランクリン
カスタマーファーストは、あらゆる職域において、単一の情報源で顧客と直接信頼関係を築ける「Customer360」によって実現をサポートします。また、「Digital HQ」の中核となるのがコミュニケーションプラットフォームである「Slack」です。社員はどこでもコミュニケーションをとり、業務効率と組織の透明性を高められます。
社会環境で信頼を得るには、従業員、顧客、地域社会の健康と安全も重要です。サラは、「イノベーションは、より高い健康と安全を実現するのに役立ちます。日本では、自社製品を活用し、日本の社員用ワクチン接種システムをわずか7日間で展開しました」と語りました。
気候変動などによる持続可能性の危機などに対処していくのも信頼される企業の役割です。そのためにSalesforceでは、企業が環境に及ぼす影響を分析できる「Sustainability Cloud」を構築し、日本でも2022年から提供を開始します。サラは、以上のような取り組みによって「最高レベルの信頼性を満たす単一の顧客プラットフォームを、すべての市場で持つことができます」と伝えました。
サラのプレゼンテーションのあとは、小出より日本のSalesforceの取り組みがシェアされました。最近では、千葉市、船橋市、川口市への保健所支援パッケージや、自治体向けの無料オンライン学習ツールの提供、社会課題を解決する企業への投資、東京檜原村での森林保全活動などに取り組んできました。
「私たちはこれからも『企業は社会を良い方向に変える力がある』ということを自ら実践していきたい。社会を変えるのはSalesforceだけではありませんTrailblazerの皆さんの先進的なビジョンと取り組みを今後も支援していきたいと思っています」(小出)
続いて、信頼を生み出す先進的な企業の事例として、株式会社西武ホールディングス 代表取締役社長 後藤 高志 氏が登壇。交通やリゾート、不動産事業を展開する同社では、「でかける人を、ほほえむ人へ。」をスローガンとして、Salesforceなどのデジタル活用によって、よりパーソナライズされた体験を顧客に提供。また100%自社再生エネルギーでの電車の運行や太陽光発電での農業支援など、脱炭素の取り組みを展開しています。後藤氏は次のように語りました。
株式会社西武ホールディングス 代表取締役社長 後藤 高志 氏
「当社の鉄道、ホテル、不動産など多くのお客様に喜んでいただけることは、お客様をそのエリアに呼び込むことにつながります。地域経済への好影響に加え、私たちが積極的に進めている地産地消、地域雇用の創出といった地域経済の潤滑油としても機能・貢献できると考えており、その役割は大きいと考えています」(後藤氏)
Digital HQの先進企業の事例として登壇したのが、日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役社長 山口 明夫 氏。Slackを活用して社内のコラボレーションを促進し、AI搭載検索テクノロジー「IBM Watson Discovery」なども活用しながら、セールスやマーケティング、カスタマーサクセスの活動を促進しています。一方では、当社セールスフォース・ドットコムにとって大切なグローバル規模でのパートナーでもあります。毎日Slackを見ることから1日が始まるという山口氏は、Digital HQの効果について次のように語りました。
日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役社長 山口 明夫 氏
「コロナ禍では顧客とのコミュニケーションがうまくいかないという懸念がありましたが、結果的に問題なくスムーズにやりとりできました。お客様から『プロジェクトがうまくいった原因はSlackにある』と言ってくださったのは嬉しかったです。社員間だけでなく、お客様との間にもアメーバのようにつながって生産性や信頼関係が上がりました。もっと進化していくのではと、とても期待しています」(山口氏)
セッションの最後に小出は、西武ホールディングスと日本アイ・ビー・エムだけでなく、信頼を生み出す企業となるための変革をしている多くの企業に対してSalesforceは支援していきたいとアピールしました。
続いてのレポートは「- スペシャルセッション - 企業はインクルージョンをどう実現するのか?」です。セールスフォース・ドットコム Tableau Business Value Services ピーター 嶋をホストに、タレントの はるな 愛 氏、大日本住友製薬株式会社 人事部 労政企画グループ 村上 知子 氏を迎え、多様な人材活用によって成長するインククルーシブな企業への変革についてディスカッションが行われました。
株式会社サンズエンタテインメント タレント はるな 愛 氏
はるな愛氏は、2021年8月24日に開催された東京パラリンピック開会式のパフォーマンスにて、さまざまな障害を抱えたキャストと共演しました。
大日本住友製薬株式会社ではダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとしてLGBTQ+(性的マイノリティ)への理解促進に努め、行動基準の中に、性的指向、性自認による嫌がらせを行わないということを明記・行動実践し、社内にはジェンダーフリーのトイレも設置しています。
大日本住友製薬株式会社 人事部 労政企画グループ 村上 知子 氏
はるな愛氏の弟は車椅子で移動、父は人口肛門をつけて生活をしており、LGBTQ+だけでなく、障害を抱える人のトイレの数は少なく、新設された国立競技場であっても同様だと指摘しました。まだまだ社会にはマイノリティとの分断があると言い、はるな愛 氏自身も、パラリンピックでともにパフォーマンスした150名以上のメンバーと接するうち、さまざまな立場の人への配慮について見直しをした経験をシェアしました。
「リハーサルの香盤表が、大人が立った目線の高さに貼ってあって、背の低いメンバーが椅子の上に立ってそれを見ているのをみて、彼らや車椅子の人が見えにくいことに気づきました。また、あるときみんなでテレビ電話しようと声をかけました。中には耳の聞こえない方もいますので、手話ができる人も参加していました。通常、手話の人は20分で交代するルールがあることを知らずに3時間もお話しして、あとから相談されて気がついたんです。私はLGBTQのことだって知らないことがたくさんあります」(はるな愛氏)
嶋は、「ピンクの靴が欲しいけれど、どれも女性向けの小さなサイズしかなく、手に入れることができません」と指摘し、しかし現在はテクノロジーを使ってパーソナライズされた商品を提供できるようになっていると話しました。
セールスフォース・ドットコム Tableau Business Value Services ピーター 嶋
村上氏は、「いろんなものをニーズに合わせて作っていくというようなイノベーションを考えていかなければならない時代になっています。いろいろな考えの人がそれぞれの強みを生かすような組織になっていければ、会社としてもっといいものがお届けできるのではと考えています」と語りました。
LGBTQの話題から、障害者の方まで幅広いマイノリティの話が展開された本セッションの最後に、はるな愛氏は次のようにコメントしました。
「LGBTQだけでなく、みんな違って当たり前なんだけど、みんな一緒がもっと良いと思います。人間は完璧ではないけれど、心を寄せ合えば、物事がスムーズに進むのではないかと思っています」
Day 1は「信頼を生み出す企業」=「Digital HQ」という新しい概念がとても印象的でした。Success Anywhere World Tour Tokyoはライブセッションを見逃した方のためにオンデマンド配信を開始しております。セッション動画をご覧いただき臨場感とともにビジネスの最前線をご体感ください!