顧客に商品を届けるスピード、効率、安全性を上げることが、小売業者にとってこの1年間の重要課題の1つであり、同時にイノベーションの源でもありました。全米小売業協会(NRF)主催で行われた今年のRetail's Big Showでは、小売業界を牽引する企業各社が、オンライン購入・店舗受け取り(BOPIS)、カーブサイド・ピックアップ、ドライブスルー・ピックアップといった代替受け取りソリューションを用いて店舗を配送センターとして利用するメリットを紹介するなど、結果が顕著に示されることとなりました。
これらのイノベーションがビジネスに好影響を与えたことは明らかです。Salesforceの2020年年末商戦ショッピングデータ(英語)によると、代替受け取りオプションを提供する小売業者では、クリスマス前5日間のデジタル収益が前年比で54%増となっています。
小売業者は、商品を顧客の近くに配置(英語)することで、必要な時にすぐに提供して優れた顧客体験を創出できるようにしています。これを実現してくれるものの正体、あるいは縁の下の力持ちをご存知でしょうか?答えは在庫管理です。在庫管理テクノロジーを適切に活用して商品の需給バランスを取ることは、サプライチェーンの運営において非常に重要であり、ブランド全体の小売戦略にも影響を与えかねない要素です。在庫の大幅な過不足、不適切な場所に不適切なタイミングでの配置、非効率な配送は全体的な売上、販売、利益にとどまらず、顧客体験と顧客ロイヤルティにまで悪影響を与えてしまう可能性があります。
Salesforceのインダストリー部門GTM担当シニアバイス・プレジデントであるMatt Marcotteが、顧客とのつながりを再構築するブランドの動向について説明
在庫管理自体は新しい概念ではありません。しかし、高度化が進み顧客への安定的な商品供給を目指すブランドにとって、重要な差別化要因になりつつあります。
ここからは、2021年に在庫管理を重視する小売業者が獲得するメリットを、大きなものから3つ挙げていきたいと思います。
整理された正確な在庫情報によって、店舗だけでなく、それ以外の業務の可視性も向上します。年末商戦期間中はEコマースの注文が急増するため、商品を最速で顧客に届ける手段を模索する小売業者にとっては、ラストワンマイル配送が課題となります。小売業者が顧客への最適な配送方法を見極めるには、商品の現在位置を可視化する必要があります。たとえば、ボストンの店舗や倉庫に商品在庫があるのに、デンバーからボストンに商品を出荷するのは合理的ではありません。
在庫の可視化を優先的に進めれば、このような決定を下しやすくなります。
在庫の可視化は、消費者にとっても直接的なメリットがあります。消費者がオンラインで商品を検索する際に、在庫状況や保管場所からの距離は購入時のブランド選択において大きな差別化要因になります。NRFのRetail's Big Showでは、まさにこの点が注目されました。Google社の小売および消費ソリューション部門バイスプレジデントの発表によると、「自分の近く」にある商品を探すGoogle検索が1,000%増えています。
また、小売業者が適切な在庫管理をすることで、マーケティングや営業に関する適切な戦略的決定も下しやすくなります。データから過剰在庫になっている商品を特定できれば、それを目安に特別プロモーションを実施するメリットの評価や、関連商品をオンライン購入した顧客に向けて自動レコメンデーションを作成するかどうかの判断が可能になります。
Eコマースや物品配送の急増によって、環境への影響に関する懸念も高まっています。2017年には、Amazon社の配送だけで約1900万トン(英語)の二酸化炭素が排出され、その後も増加していると考えられます。当然のことながら、こうした配送に必要な梱包材の消費も増えているというわけです。
BOPISは、その仕組み上、サステナビリティの実現に貢献します。消費者が外出のついでに購入した商品を受け取れば、配送用のトラックや車両の稼働、段ボールの消費を減らせるためです。では、顧客がその時点で店頭在庫のない商品の受け取りを希望した場合はどうなるでしょうか?倉庫や他の店頭から出荷することになれば、サステナビリティを支えるモデルが根底から崩れてしまいます。
しかし、このような事態は、在庫を再調整して在庫不足を解消することで回避できます。ある程度の分析をすることで、各店舗や受け取り地域でもっとも人気があり需要が多い商品を特定し、より正確な数量の在庫を配分または注文することができます。そうすれば、無駄な梱包や配送センターへの不要な輸送をなくせると同時に、適切な数量の商品を消費者の近くに配置することでスピーディな引き渡しも可能になります。
Salesforceは長年にわたり、顧客ロイヤルティの実現にはブランド価値の提供が重要であり、顧客との深いつながりやパーソナライズ、良好な顧客体験が価値を生みだすと考えてきました。それは今も変わりませんが、2020年には、ショッピング体験のもう1つの側面である「利便性」が高い価値(英語)を持つようになりました。品不足や出荷遅延に悩まされた1年を経て、商品をすぐ簡単に入手できることへの重要性が高まっています。自宅での隔離生活を経た消費者は、お気に入りのトイレットペーパーが必要なときに手に入らないなら、どのブランドのものでも構わない(英語)と考えるようになりました。
消費者のブランドロイヤルティを誰が勝ち取るのか分からない(英語)この時代、顧客が重視する利便性を提供して顧客をつなぎ止める(英語)ための小売在庫計画が非常に重要です。顧客が一番欲しいタイミングと場所で商品を手配できるよう、注文管理システム(英語)(OMS)がシームレスに統合されていれば、消費者は在庫が常にある状態や利便性を高く評価するようになります。最終的には、これがブランドや小売業者に対する顧客のリピート率とロイヤルティの向上につながります。
適時性、パーソナライズ、持続可能性に対する顧客の期待に小売業者が応えるには、優れた顧客体験の構築に在庫管理が重要な役割を果たすことを理解しておく必要があります。顧客に寄り添うサービスを目指すには、まずは在庫計画の改善に着手してみましょう。
在庫管理は頼りになる注文管理システムによって改善できます。詳しくは、Salesforce Order Managementのぺージをご覧ください。
Mattは消費者向け小売業分野における30年の経験があります。Salesforceの前はBergdorf Goodmanで最高執行責任者を務め、120年の歴史を持つ象徴的ブランドを、デジタル対応の顧客体験を提供できるブランドに変革しました。彼は消費者人類学の観点からビジネスにアプローチしており、人間の行動、関係、体験に深い関心を持っています。