Salesforceでは、Salesforce製品(取り組み)を自社で活用し、知見やノウハウを得て、それらを新たな顧客体験の創出につなげていく「SF on SF」を実行しています。その中から今回はマーケティングに焦点を当て、「ソーシャルメディア」「メールマーケティング」「カスタマーサクセス」におけるMarketing Cloudの活用方法について、全3回シリーズでお届けします。

第3回は、カスタマーサクセス統括本部 サクセスプログラム部の舟越 美宝が、Marketing Cloudの『Journey Builder』を活用したオンボーディング施策を中心に、カスタマーサクセスを最大化するための取り組みについて解説します。

 

『Journey Builder』で製品導入の成功の鍵を握るオンボーディングを支援


カスタマーサクセス統括本部では、製品を導入したお客様がその価値を最大限に引き出しビジネス成果につなげていただけるよう、さまざまな施策やプログラムを展開しています。その一つが、お客様が製品の利用を開始される際のオンボーディングを、Marketing CloudのJourney Builderによって支援する取り組みです。

 

お客様のライフサイクルを考えた際に一番重要なタイミングは、導入フェーズです。どこから、どのように利用を始めればいいのか、困った時にはどうすればいいのか迷われることは少なくありません。オンボーディングにおいて、お客様が必要とされるコンテンツを適切な担当者にお届けして、いち早く成果を出していただくように導くことが、スムーズな導入、定着化につながります。

実際にMarketing Cloudのお客様を対象としたSalesforce本社の事例をご紹介します。当初、コンテンツが豊富すぎるため初級管理者は適切な情報に辿り着くことが難しい状況にありました。また、取引先単位でのターゲティングしかできず、ターゲットを絞ったメッセージを送ることができない、その結果バリューを生み出すまでに時間がかかる、といった課題を抱えていました。

 

オンボーディングジャーニーの基盤として、利用開始時に必要なコンテンツを整理し、適切なターゲットにコミュニケーションができるようにデータを整備し、ゴール達成のために顧客がたどるべき道筋を策定、Journey Builderを使ってジャーニーの設定を行いました。


まず、システム管理者にウェルカムメールを送り、製品を使いはじめるにあたってすべきことをわかりやすく伝え最初のステップの完了を促します。更に利用開始を着実に完了するための施策を展開。システム管理者が全ステップを完了できるようサポートするのはもちろん、購入決定者であるエグゼクティブにも進捗を確認できるように連携して、それぞれのペルソナに合った資料を提供します。設定が完了すると祝福のメッセージを送り、更なる活用のステップに導きます。このようなジャーニーを適切なターゲットに絞って実行しただけでも、浸透率が500%向上するという結果につながりました。

このように、Journey Builderを活用すれば、お客様が製品を「使い始める」ことができるように「適切なジャーニー」を設計でき、そのジャーニーに沿って「適切なターゲット」に、「適切なタイミング」で支援プログラムや施策を提供できるようになります。

 

 

適切なタイミングで最適なサポートをお届けする『Journey mail』

Journey BuilderのメールアクティビティであるJourney Mailをオンボーディングに活用するメリットは、お客様の企業規模やペルソナ、活用段階に応じて「適切なタイミング」で「適切なコンテンツ」を自動的にメールで送信できることです。

例えば、システム管理者向けの「はじめようSales Cloudジャーニー」では、Welcomeメールにはじまり、「ユーザー設定」「セールスプロセスの定義」「取引先と取引先責任者の設定」といった導入におけるステップをご案内しますが、有償サポート 「Premier Success Plan」ご契約のお客様にはエキスパートコーチングのご案内を含める、ユーザー設定プロセスが完了されていない場合はカスタマイズの内容は送付されない、といった対応が、自動的に実行されるようになっています。

契約開始日から実際の製品利用開始までの日数に大きな隔たりがないことは、製品の定着化を成功させるポイントの一つですが、企業情報はもちろん、ペルソナ判断のデータとなるお客様の役割設定を契約完了までのビジネスプロセスに組み込むことで、必ずJourney Mailを送付できるような仕組みが確立されています。

 

 

『Journey Mail』『Journey Builder』でお客様の状況を把握しPDCAを回す


もちろんJourney Mailだけですべてが完結するわけではありません。カスタマーサクセスグループでは、「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」というアプローチで全体像を設計し、支援を提供しています。

 

「ハイタッチ」は、DXプロジェクトを伴走型でご支援させていただく有償コンサルティングや専任者による定着サポートといった個別支援、「ロータッチ」はセミナーやワークショップなど、人を介した「1:多」の支援、「テックタッチ」はJourney Mailや動画、オンライン学習プラットフォーム「Trailhead」などテクノロジーを活用し多くのお客様を支援する仕組みです。

 

お客様が増えていく状況にあっても、一定のリソースの中で質を落とすことなく支援を提供することが求められます。より多くのお客様を成功に導くための基盤としてテックタッチの仕組みは不可欠であり、Journey MailやJourney Builderはなくてはならない仕組みとして実装、活用されています。

 

とはいえテックタッチ=何も手をかけないで良い、ということではありません。メールを開封されていないお客様には、コールダウンを実施するなど、個別のフォローが重要になります。加えて、「メールの開封率が平均より低い」、あるいは「リンク先を閲覧していない」といったことが判明すれば、メールの内容とお客様のニーズとの間に「なんらかのギャップがあるのではないか」という仮説が成り立ちます。その仮説に基づいた改善策を実施し、再度、開封率やリンク先など閲覧状況を確認し、PDCAサイクルを回すことで、お客様により適切なコンテンツをお届けできるようにチューニングが可能になります。

 

データによって状況を可視化し、必要なアクションをすぐに適用できるのも、Journey MailやJourney Builderの強みだと認識しています。

 

 


 

 

ツールの導入はゴールではなくスタート〜今求められる支援の実現を目指して

コロナ渦により、デジタル化や、DXの重要性や緊急性が今までにないほど高まっていることは、あらゆる業種、業界の方々が感じているところではないでしょうか。デジタル化への取り組みとして重要なのは、Marketing Cloudに限らず「ツールの導入は決して『ゴール』ではなく『スタート』である」ということです。ツールを導入すれば課題がすぐに解決するわけではありませんし、DXへの取り組みが加速するとも限りません。

弊社で既存のお客様を対象に実施した、DX成功要因アセスメントのレポートからは、DX総合達成度のスコアが高い企業と低い企業の間において、最も顕著に差が現れたのが、リーダー自らがDXに関する組織目標や達成度、戦略や取り組みなどを伝えているかという項目でした。また、DXを推進するために必要とされる具体的な実行手段やノウハウがあるかどうかも、外すことのできない要素であるという結果も出ています。

 

Journey BuilderやJourney Mailは、達成したいゴールを見据えてPDCAを回していくことにより、時には失敗を経験しながらも成果を積み重ねることが可能なツールであると言えます。ニューノーマルというこれまでとは異なるアプローチを求められている今だからこそ、ツールの活用は新たなノウハウ蓄積やデジタル人材の育成にもつながるという視点も持って、更なる改善・活用に取り組み、お客様のカスタマーサクセスを支援してまいります。

 

 

 


 


 

解説者紹介:
株式会社セールスフォース・ドットコム
カスタマーサクセス統括本部 サクセスプログラム本部
カスタマーマーケティング部 部長
舟越 美宝

カスタマーサクセス統括本部にてカスタマーマーケティングをリード。エグゼクティブ、ビジネス推進者、管理者、開発者といった幅広いカスタマーをさまざまなプログラム・施策を通じてエンゲージメントを促進することで、お客様のビジネス成功やSalesforceエコシステムの活性化を目指す。IT業界で20年以上、一貫してマーケティング職に従事。