パンデミックにより世界の日本の金融サービス業界リーダーはコロナ後の成長を見据えた「顧客体験の向上」を優先しています。

私たちは、パンデミック以前とその約1年後に、金融サービス業界に在籍する約2,800人の世界各国のリーダーを対象に調査を実施し、その回答結果を『金融サービス業界のトレンド』レポートとしてまとめました。

顧客と従業員はステイホームを余儀なくされ、対面での対応や取引はリモートやデジタル体験へと移行しました。多くの金融機関は、この急激な変化への対応に苦心しており、顧客も困惑しています (英語)。 

レポートでは、それぞれが直面している問題への対処方法に応じて、回答者を2つのグループに分けました(SalesforceのCOVID-19 Recovery Framework(新型コロナウイルスからの回復の枠組み) (英語)で定義)。安定派グループは、コロナ危機による差し迫ったリスクの軽減に重点を置き、短期的な成果をより重視します。成長派グループは、長期的な関係により重きを置きます。顧客が期待する体験を提供できるように、業務のデジタル化とプロセスの自動化に積極的です。しかし、いずれのグループも(全回答者の87%)、顧客体験を改善して業界を成功に導くには、金融サービス自動化が鍵になるという見解で一致しています。

 

成長戦略における優先事項の変化

顧客が期待するサービスと顧客が実際に受けるサービスのレベルにはギャップがあります。『コネクテッドカスタマーの最新事情』によると、68%の顧客は「新型コロナウイルスを受けて企業のデジタル対応能力に対する期待が高まった」と答えていますが、「金融機関は危機対応に最善を尽くしている」と感じている顧客は23%にとどまります。

さらに、以下のような調査結果が出ています。

 

  • 「コロナ危機を受けてカスタマーサービスに対する自分の期待水準が上がった」と回答した顧客の割合は59%だが、「金融機関がすばらしいサービスとサポートを提供している」と考える顧客は27%のみ

  • 66%の顧客は、「個人個人のニーズを企業に理解してほしい」と考えているが「金融機関が完全に顧客中心主義だ」と考える顧客は27%のみ

 

こうした結果を受けて、多くの金融機関はビジネスの優先事項を変えつつあります。デジタルテクノロジーの導入は、今や最優先にして取り組むべきプロジェクトになっています。AI(人工知能)を利用したチャットボット、膨大な量のリクエストを処理する自動化されたオンラインプロセス、パーソナライズされたデータやオファーといった金融サービス自動化機能を早急に導入すべきという機運が高まっています。

新しいテクノロジーの導入には、顧客の信頼を改善するという狙いがあります。金融機関は、対面対応が不可能になったことで損なわれた関係を修復するとともに、顧客の経済的な自信を高める必要もあります。調査結果からは以下の2点が明らかになっています。

 

  • 「金融機関が今年のコロナ危機に効果的に対応したか?」という問いに「まったくそう思う」と回答した顧客は23%のみ

  •   23%の顧客が自分たちの長期的な経済状況に極めて大きな不安を抱いている

 

デジタルカスタマーサービスにおける理想と現実のギャップを埋める

デジタルコミュニケーションチャネル

長期的な視点で見ると、成長派の企業は、オムニチャ     ネルサービスに投資している割合が安定派の企業より22%多いという結果になっています。顧客は、複数のコミュニケーションチャネルでつながることを好んでおり、平均すると、9種類の異なるチャネルを介して企業とやり取りしています。特に、危機的な状況では、金融機関は顧客が望むチャネルを使用してサポートを提供する必要があります。AIを利用したチャットボットなどの金融サービス自動化を使用することで、このギャップを埋めることができます。

たとえば、Pentagon Federal Credit Union(PenFed)はSalesforceを利用して (英語)デジタルコミュニケーションチャネルを改善しています。PenFedは、パスワードのリセットなど、一般的なサービスリクエストをチャットやチャットボットによる対応に切り替えたことで、サービスデスク担当スタッフを単純業務から解放し、人間の関与を必要とするより複雑な問題に注力できるようにしました。電話で応対するケースはわずか37%となり、42%はチャット対応、21%はチャットボット対応になっています。一般的なリクエストに関するサポートは、格段に速くなりました。 

 

顧客の健康のために

公衆衛生環境と経済が不透明な状況で、健康は消費者にとって大きな関心事となっています。大部分の金融機関(74%)が、個人の健康と経済的な健全性の両方に応えることの重要性を認識しているものの、実際に対策をしているのは半数以下(43%)です。また、成長派と安定派の企業を比較すると、成長派の方が健康により高い関心を払っています。

 

  • 全体的な健康に対する関心は10%高い

  • 経済的な健全性に対する関心は21%高い

 

つまり、金融機関は顧客中心主義になることを求められています。この事実は、66%の顧客が「自分のニーズや期待を企業に理解してほしい」と望んでいることからも明らかです。さらに、52%の顧客は、パーソナライズされたオファーを望んでいます。すべての顧客データを網羅した信頼できる唯一の情報源 (英語)を確立することで、従業員は顧客の全体像を1つの場所で把握できます。成長派の企業はこうした機能に注力しており、安定派の企業より、オファーのパーソナライズには12%、ユーザー体験の改善には24%多く取り組んでいます。 。 

 

金融サービス自動化により、顧客はパーソナライズされた体験を得る

成長派の企業は、金融サービス自動化を導入することで、顧客体験が改善され、最終的に顧客ロイヤリティが高まることを期待しています。さらに、成長派の企業は、経済的な健全性の改善と先を見越したカスタマーサービスが顧客にメリットをもたらすと考えています。結果として、成長派の企業は、安定派の企業と比較して、デジタル化された業務と自動化されたプロセスを通じて技術的な基盤を構築する傾向があります。

 

  • バックオフィス業務をデジタル化している成長派の企業は27%多い

  • フロントオフィス業務をデジタル化している成長派の企業は20%多い

 

AIや自動化機能が拡張されるにつれ、金融機関が顧客体験を継続的に改善する機会も多くなっています。金融サービス業界全体では、業務効率の向上をしのぐ勢いで、新たな収益源が生まれています。AIを利用して、顧客一人ひとりの目標、消費パターン、財務リスクに対して安心だと感じる水準を把握することで、顧客の意思決定を要するポイントを排除し、財務実績を最大限まで高めることができます。 

顧客が体験の最適化とパーソナライズを望んでいることは明らかです。今年は、金融機関にこの課題を克服して欲しいという期待が高まっています。成長派も安定派も、金融サービス自動化が今後の成功の鍵を握ると考えています。89%の金融サービス業界のリーダーは、「金融サービス自動化をいち早く導入した企業は、顧客体験の新たな水準を確立し、競争上大きなメリットを得ることになる」と答えています。私たちの調査によると、かつて金融サービス自動化はまだ先の目標でしたが、今ではほとんどの企業が計画を前倒しで進めています。 

 

 


 

 

Namer Aljazrawiは、Salesforceの戦略およびオペレーション/金融サービス担当のグローバル責任者です。20年以上にわたってさまざまな役職を歴任し、世界最大規模のブランドに助言してきました。

Namerが執筆した記事 (英語)