新聞やニュース番組で取り上げられることが増え、SDGsは企業や自治体による取り組みが活発化してきました。その認知度は着実に上昇しているようですが、朝日新聞社が2020年3月に行った調査結果によると、SDGsを聞いたことがあると回答した人は32.9%であり、その認知度は未だに低い状況でした。

ここでは、これからますますその必要性が問われるであろう企業におけるSDGsへの取り組みについて、SDGsの概要も含めて紹介します。

 

注目が集まるSDGsとは

SDGsとは、2015年9月の国連サミットにおいて国連に加盟する世界193ヵ国によって採択された「2030年までに達成すべき世界共通の目標」です。正式名所は”Sustainable Development Goals”であり、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。その内容は17のグローバル目標とその目標を達成するための169の具体的目標で構成されています。

SDGsの根幹となる17のグローバル目標は以下の通りです。

 

 1. 貧困をなくそう

 2. 飢餓をゼロに

 3. すべての人に健康と福祉を

 4. 質の高い教育をみんなに

 5. ジェンダー平等を実現しよう

 6. 安全な水とトイレを世界中に

 7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに

 8. 働きがいも経済成長も

 9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

10.人や国の不平等をなくそう

11.住み続けられるまちづくりを

12.つくる責任つかう責任

13.気候変動に具体的な対策を

14.海の豊かさを守ろう

15.陸の豊かさも守ろう

16.平和と公正をすべての人に

17.パートナーシップで目標を達成しよう

 

これらの目標に向かい、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを理念として取り組みが始められました。

 

日本企業の現状

SDGsは、企業にとって決して遠い世界の話ではありません。利益優先で経営を進める時代は終わり、企業にはあらゆる視点での社会的な存在価値の構築が求められています。SDGsで掲げられた17のグローバル目標は、まさにそれを実行するための指針となるものです。SDGsの目標達成を前提とした事業計画や戦略を立てることは、今や企業の存続に直結する取り組みであるとさえ言えます。

そうした背景のもと、日本政府はSDGsの推進本部を設置し、SDGsの目標達成に取り組んだ企業や団体を表彰する『ジャパンSDGsアワード』を2017年より開催。SDGsへの積極的な取り組みを後押ししています。

しかし、日本は世界から見るとまだまだSDGsの目標達成には程遠い状況にあります。ジェンダー平等状況が世界114位という低さ、相対的貧困率を見ても先進国では下から2番目という結果です。

労働時間の長さや企業の不正、雇い止めなどの状況もSDGsの流れに逆行するものであり、企業には社会的な課題の解決に向け一層の努力が求められています。

 

企業が取り組むべき理由

では、SDGsに取り組むことで企業は実際にどのようなメリットが得られるのでしょうか。

 

企業のブランディングに繋がる

SDGsは、現代社会が抱える様々な問題の解決を目指しています。したがって、企業としてSDGsに取り組むことで「現代のニーズに即した価値を生み出す企業である」というイメージづくり=ブランディングにつながります。

 

リスク・チャンスに気付ける

自社の事業が社会や環境に与える影響をSDGsに紐づけて把握することで、これまで気付けなかった潜在的な事業リスクを把握することができます。また、そうしたリスクを排除することは、新たな事業の創出を実現したり競合他社との差異を生み出すきっかけとなったりするなど、次のビジネスチャンスへとつながる効果も期待できます。

 

ステークホルダーとの連携が強固になる

SDGsへの取り組みによって得た信頼はステークホルダーとの強固な連携を生み出し、新たな顧客や取引先、事業パートナー、優れた人材の獲得につながります。そうした新しい出会いから社会に求められるニーズに沿ったイノベーションを生み出すことができれば、企業価値はさらに向上することになります。

 

高い評価を受けるESG投資の対象になる

ESG投資とは、環境(Environmento)、社会(Social)、企業統治(Governance)の要素を考慮して行う投資を指します。

従来の投資における選別材料は、主に経営状況や業績などの財務に関わる点が重要視されていました。しかし、企業としてSDGsへの取り組みが求められている今、投資選別の材料として財務以外の要素であるESGという要素も投資の選別対象になっています。

例えば、社員のワークバランスや二酸化炭素の排出量、地域社会への貢献など、SDGs実現のために前向きに取り組んでいる姿勢も含め評価されています。

 

企業がSDGsを実践するには

 

企業がSDGsを実践する場合は、当然ながらSDGsの理解を深めることから始める必要があります。そのうえで、SDGsにおける目標の中から自社の事業や経験を活かしてどんな貢献ができるのかを考えます。

人員構成やCO2削減のための燃費の見直し、リサイクルの推進、顧客が自社製品・サービスを購入してから廃棄に至るまでの環境に与える影響など、洗い出すべき課題はどの企業にもあるはずです。

企業におけるSDGsの実現には、社内の一部の理解や行動だけでなく、その想いを組織全体へ浸透させ、ビジネスモデルを再構築するような変革が必要となります。そのためにも、あらゆる部門で目標を設定し、一体となって取り組んでいくことが大切です。

また、企業のブランディングのために、SDGsの取り組みや結果を外部に発信していく広告コミュニケーションも積極的に行うべきでしょう。

 

取り組む際に押さえておくべき点

企業でSDGsに取り組む際には、以下のような注意点をふまえたうえで計画し、実行に移すことが必要です。

 

事業に支障をきたさないようにする

SDGsにおいて企業に求められるのは、事業を通して消費者の課題を解決し、対価を得ながら消費者を含めたステークホルダーと連携して目標の達成に取り組んでいくことです。

目標の達成に気を取られ、利益を度外視した取り組みを行うのではなく、本来の事業を活用した取り組みを心がけましょう。

 

SDGsウォッシュを防ぐ

SDGsウォッシュとは、間違った広告コミュニケーションによって、批判的な印象を抱かれる意味を持った造語です。企業が環境に配慮していることをアピールしてブランドイメージを向上させたい余りに、実態のない、もしくは実態以上の効果があると偽りのアピールをすることで批判されるようなケースを指します。

もしもSDGsウォッシュが起きた場合、社員や消費者を含めたステークホルダーの信頼は一気に失わわれ、大きなダメージを負うことが考えられます。第三者に誤解を与えないような広告コミュニケーションを心がけることが重要です。

 

経営理念との統合

経営理念は企業の活動方針の基本であり、社会における企業の存在意義を表すものです。一方、SDGsは環境や社会問題に至るまで様々な目標が掲げられていることから、経営理念とSDGsは関連性が高いものであると言えます。

理念と程遠い目標の実現を目指しても、それは事業の足かせとなるばかりです。原点に戻って経営理念を確認し、企業として社会に何が貢献できるかを改めて見直すことで、SDGsの枠組みにおいて本当に果たすべき目標が何であるのか見えてくるはずです。

 

まとめ

企業はその事業の推進において、社会や環境に何らかの負荷や影響を与えてしまう可能性があります。その影響を最低限に抑え、価値のある企業として認められるために、SDGsへの取り組みは欠かせないものです。

地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という理念を掲げるSDGsの実現に、全世界が取り組んでいます。ここで挙げた効果や注意点を踏まえながら、地球上に存在する企業として、また一人の人間として、SDGsの実現に向けた取り組みをぜひ考えてみてください。