新規顧客やリピーターをどう増やしていくか。それは、多くの企業が常に抱える課題です。その課題を解決するためには、まず自社の顧客に対する理解を深め、有効と思われるマーケティング施策を打ち出さなければなりません。
顧客に対する理解を深める際、有効となる手法が、今回説明する「顧客分析」です。ここでは、顧客分析を行う必要性や目的、顧客分析をするための7つの手法を紹介します。
顧客分析は購買率や顧客満足度を改善するために行う分析のことです。主に自社製品やサービスを購入した顧客の属性と購買行動を分析します。
ここでは、顧客分析を行うことの必要性や目的を説明します。
製品・サービスが多くの人に役立つコンセプトであればあるほど、それを手に取る顧客の属性は幅広くなります。しかし、ターゲットが曖昧では、購買率や顧客満足度を高めることはできません。
たとえば、売上を第一に考えれば、売上貢献度の高い顧客にとって良い製品・サービスを作り続けることが事業の長期的な成功につながります。「誰にアプローチをするのか」対象を特定することがビジネスには不可欠であり、そのために必要となるのが顧客分析なのです。
購買率や顧客満足度を高めるためには、商品やサービスがなぜ買われたのか、あるいは買われなかったのかを明確にし、その結果に至るまでのプロセスを洗い出す必要があります。
たとえば、商品価格の高さにハードルを感じて購入しなかった場合と、商品内容に魅力を全く感じなかったために購入を見送った場合とでは、顧客の心理状態は大きく異なります。前者であれば、商品価格を下げることで商品が購入される可能性が上がりますが、後者は商品設計そのものを見直さないと購入される可能性は上がりません。
顧客分析はこの違いを明らかにする役割も担っており、前述した顧客の特定とあわせて今後の事業戦略を最適化するうえで効果を発揮します。
顧客分析を経て顧客ニーズを理解すれば、すでに提供している製品・サービスと顧客ニーズの間にある不一致を把握できます。この不一致をすり合わせることで、購買率と顧客満足度の底上げを図ることが可能となり、今後の事業戦略だけでなく既存事業の最適化にも貢献します。
Salesforceにネイティブに組み込まれたAIを活用した分析によりビジネスチャンスを予測し、チャンスを最適なタイミングでつかむことができます。
ここでは、顧客分析を行うときに用いられる7つの手法を紹介します。
RFM分析は、3つの指標から顧客をグルーピングする分析手法です。
Recency (直近購入日)
Frequency(購入頻度)
Monetary (購入金額)
上記をもとに売上貢献度が高いグループを洗い出し、そのグループに対して有効と思われるマーケティング施策を講じることにより、購買率や顧客満足度を高める施策へとつなげます。
デシル分析は、売上貢献度の高い順番に顧客を10のグループに分類し、各グループの特徴を洗い出す分析手法です。
たとえば、100人の顧客を購買金額の多い順にグルーピングし10のグループに分けたとします。そして、100人全体の購入金額に対して各グループが何%の売上に貢献しているのかを計算します。もし計算結果から売上の80%を上位3つのグループが担っているとすれば、今後打つべきマーケティング施策は「上位3つのグループに属する顧客」に強く訴求できるものであるべきだということが分かります。
CTB分析は、3つの指標をもとに顧客をグルーピングし、今後の購買予測を行うための分析手法です。
Category(カテゴリ)
Taste(テイスト)
Brand(ブランド)
上記の要素から顧客の趣味嗜好を探り、傾向が類似している顧客同士をグループ化することで、各顧客の好みに応じた販売戦略を展開します。
たとえばインテリア事業の場合、Category(カテゴリ)は椅子、机、ベッドなどで分類します。次に、Taste(テイスト)は色、形、柄など、Brand(ブランド)はインテリアブランドやキャラクターなどで分類します。
セグメンテーション分析は、既存顧客における共通項を洗い出し、自社がターゲットとすべき顧客像の指標とする分析手法です。類似性の高い顧客をグルーピングしていくことで、各グループに有効なマーケティング施策を出し分けることができます。
行動トレンド分析は、過去の購買傾向からシーズンごとの購買率を導き出す手法です。それにより得られた結果を商品展開の判断材料とすることで、季節における顧客ニーズの変化にあわせて最適な事業展開ができます。売れるものと同時に売れないものも予測できるため、無駄な経費を削減できるメリットもあります。
特定顧客の抽出は、メルマガ登録・会員登録などを通じて顧客情報をストックし、購買傾向をもとに販売戦略に役立てたり購買予測を行ったりする分析手法です。入手している顧客情報の解像度が高いため、そのままダイレクトにアプローチをかけることも可能です。
AIを利用すれば、これまで人の手によって進められてきた顧客分析よりも高次元な分析が可能です。人間が認識し、実際に頭を働かせて取り組む顧客分析には限界があるため、すでに顧客分析を取り組んでいるものの課題を解決できないような場合に効果を発揮するでしょう。
顧客分析を行うことの具体的なメリットには次のようなものが挙げられます。
顧客に対する理解度が深まれば深まるほど「顧客は何を欲しているのか」が明らかになり、ターゲットの心を動かすマーケティング施策が実行できます。
あらかじめ成果を得られることが分かっているマーケティング施策なら大きな予算を割くことも可能でしょう。マーケティング施策の費用対効果を最適化し効率的に認知拡大や顧客獲得につなげられる点で、顧客分析は強力なメリットを持っているのです。
顧客分析により購買率や顧客満足度を高める方法を追求すれば、結果として企業の売上向上につながります。ターゲットのニーズを把握できているため無駄な予算を費やすことなく、限りあるリソースを「効果のあるマーケティング施策」に充てられるからです。
ここでは、顧客分析を行う際、事前に押さえておきたいポイントを説明します。
顧客分析は顧客を起点とした分析手法であるため、自社における顧客の定義が曖昧だと精度の高い分析結果が得られません。
顧客の定義づけを進めるにあたり参考となるデータは、アンケート調査で収集した顧客情報や、自社のWEBサイトに蓄積されたアクセス情報です。これらの情報源から性別や年齢、家族構成といった詳細な情報を収集することで、顧客分析により得られるターゲット像の解像度は高まり、製品・サービス開発が有利に進むのです。
顧客が何をきっかけに自社製品を選んだのか。その顧客ニーズを詳しく調査することは、顧客分析で確かな結果を得るために欠かせません。手段としては、訪問調査や対面インタビューのほか、アンケートやネットの口コミ、SNSを駆使して顧客のニーズを把握していく方法や製品・サービス購入時に登録してもらったメールアドレスを介して、顧客に「わが社にどのような製品・サービスを求めていますか?」とアンケートを取るなどが考えられます。
市場の成長性を考慮し、現在展開している市場は今後も継続的な成長が見込めるか否かを見極めることも、顧客分析を行ううえで重要です。ここまで説明した顧客の定義・ニーズは過去にもとづいた要素であるため、未来の時間軸にフォーカスした「市場規模の成長性」を顧客分析に加えなければ、将来的な予測には役立てられません。
市場の成長性とは、たとえば顧客設定を「18歳の男女のみ」に限定しているなら、少子高齢化のあおりを受けるため継続的に同じビジネスを同様の規模で続けることは難しいと考えられます。自社事業を拡大するのであれば、いずれは18歳の男女以外のターゲットに舵を切る必要があると予測を立てられます。
このように、市場の成長性は、顧客分析から導き出される結果に「未来」の軸を加える役割を持っています。
顧客が製品・サービスを購入するまでの意思決定プロセスも、顧客分析で把握しておきたいポイントです。
たとえば顧客が個人なら、本人に「私はこれが欲しい」と思ってもらうだけで購入されます。しかし、顧客が法人の場合は決済までに複数人の意思が関わってくるため、すべての関係者に「自社にこれが欲しい」と思わせる訴求力が必要となります。どのような立場の人物が決済の検討に加わるのかについては、顧客分析からぜひ押さえておきたいところです。
顧客分析は、既存事業と今後の事業戦略を最適化し、より広範囲な認知拡大や顧客獲得を達成するために役立ちます。また、一人の顧客から生涯のうちに得られる利益(ライフタイム・バリュー)を引き上げる役割も持っています。
ただし、顧客分析から導き出された結果を活用するためには、前提として「消費者の購買動向における最新情報」を把握しておく必要があります。そこで私たちは、消費者の行動・期待に関する調査結果をまとめたeBook「コネクテッドショッパー最新動向」をご用意しました。より具体的な顧客分析を行うための資料として、ぜひご活用ください。
世界の消費者1,600人と小売業の企業幹部1,000人以上を対象にした調査を通じて明らかになった小売業界の将来についてご紹介します。