「シェアリングエコノミー」という言葉をご存知でしょうか。

宿泊先を提供するホストと旅行者であるゲストをマッチングする「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、宿泊施設を一切所有せずに、そしてタクシー配車アプリの「Uber(ウーバー)」はタクシーを一台も所有することなく、業界のトップ企業へと成長しました。2社がここまでの成長を記した要因の一つは、この「シェアリングエコノミー」というビジネスモデルを活用した点にあります。

内閣府のシェアリングエコノミー促進室によると、「シェアリングエコノミー」とは「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」のことを指します。

近年では消費者の意識が従来のような商品やサービスの「所有」から「利用」へと変化するに伴い、シェアの対象は音楽や動画などのサブスクリプション型サービスにみられるコンテンツだけでなく、宿泊先のような「場所」、形ある「モノ」や個人の「スキル」などにまで広がりを見せています。

シェアリングエコノミーの市場規模は2016年度の約503億円から2021年度には1071億円に拡大する見込みで、さまざまな新サービスの誕生が予想されている分野でもありますが、新品の購入が減るなど、既存のビジネスや産業への悪影響も考えられます。例えばAirbnbやUberの台頭によって世界のホテル・タクシー業界が大きな打撃を受け、法令の制定や大規模なデモなど、様々な物議をかもしたことは記憶に新しいのではないでしょうか。

しかし、この一連の騒動も見方を変えると、従来よりも安価で便利な、顧客にとって「より良い選択肢」が登場し、それが選ばれた結果であるともいえます。このような、顧客がより有利になるようなサービスが淘汰される動きの中心にあるのが、「カスタマーサクセス」という考え方です。

 

顧客の利益を最優先する「カスタマーサクセス」とは?

「カスタマーサクセス」は文字通り、顧客の成功を意味します。

消費者は常に自分にとってベストなサービスや商品を選択し、利用します。特に現代は商品やサービスを販売して完結するのではなく、それを利用し続けてもらうことを目的とするサブスクリプションモデルが主流の時代ですから、顧客に成功体験を提供し続け、「この商品、ブランドが好きだからこの製品を選ぶ」という心理ロイヤルティを育成することが重要です。そのため、顧客が自社製品の価値を最大限に引き出せるよう手助けをし、顧客の成功につながるような組織や理念を作り上げることがこれからの企業の成長には不可欠なのです。製品や売り上げから顧客の成功へと企業の方向転換が起こっている現代は、まさに「顧客の時代」であるといえます。

 

 

顧客をつかんで離さない「カスタマーサクセス」導入の3つのポイント

では、カスタマーサクセスを推進するにはどうすればよいのでしょうか。3つのポイントをご紹介します。

1. 顧客の信頼を育てる

シェアリングエコノミーに限らずサブスクリプション型の経済には「信頼」が欠かせません。例えばAirbnbは、徹底したカスタマーサポートを実施し、24時間制のコールセンターを設置したり、ゲストだけでなく宿泊先を提供するホストの安全を保証するためのセキュリティ対策や保険制度を取り入れるなどの努力を続けています。このように、必要な時に必要な援助を得てサービスを最大限に利用するという成功体験を顧客にしてもらうことで信頼性の強化につながり、ロイヤリティを獲得することができるのです。

2. ハードデータを利用する

2つ目のポイントは、ハードデータから顧客の行動を分析し、顧客の状態に応じた対応をとることです。これからのビジネスにおいては新規顧客の獲得だけでなく、顧客の離脱を防ぎ、製品やサービスを利用し続けてもらうことも同じくらい大切です。そこで必要なのが顧客の行動が数値化できるハードデータです。例えばどのようなタイミングで受注の拡大が起きたのか、どのようなサービスメールに対してリアクションが大きかったのかなど、顧客ごとの個々の取引に対する詳細なデータを把握し、顧客の動きを観察することで、本当に必要とされているサービスを提案することができるようになるのです。

3. 全社レベルで取り組む

カスタマーサクセスを実現するには、製品、営業、マーケティング、財務など、会社のあらゆる問題をすべて顧客の成功に基づいて構成しなおす必要があり、全部署が協力して取り組まなければなりません。そのため、会社として「顧客にとって成功とは何を意味するのか」について共通の理念をもち、そのゴールに向かって進む必要があります。例えば例えば、Uberでは当時の代表自らが社員旅行で行ったスピーチで会社哲学の1番最初に「顧客中心のサービス作り」を挙げるなど、全社にカスタマーサクセスの考えの徹底を行っていました。こうした雰囲気作りを行ったうえで、ポイント2で述べたようなデータを用いた計測・分析で目標とすべき指標を明確にし、定期的な情報共有で全社員の足並みを揃えることで、スムーズにカスタマーサクセスを推進することができます。ちなみにSalesforceにおいても、カスタマーサクセスをコアバリュー (企業がもっとも重要と考える価値観)の一つに掲げ、全社にカスタマーサクセスの考えを徹底することで、顧客とともに成長を遂げてきました。

そして、これらを実行するにあたって必要なのが、顧客のデータを管理し分析するためのITツールです。SalesforceのCRMには、独自のAIであるEinsteinが組み込まれており、顧客のステージやサービスの利用状況、過去の商談内容といったデータを分析し、顧客に沿ったサービスの提案に役立てることができます。サービスプラットフォームも充実しているので、顧客のニーズをいち早く察知することができます。痒い所に手が届くようなサービスを提案し信頼関係を築くことができれば、顧客との関係強化にも役立ちます。さらに、こうした情報をクラウド上で一元管理できるため、社内での情報・目標の共有も簡単にでき、全社的なカスタマーサクセスへの取り組みが実現できるのです。

商品を「売る」だけではもはや不十分な現代。「顧客にとっての最良なことは何か」を考えたサービス作りがいっそう重視されていくでしょう。カスタマーサクセスを実現するための初めの一歩として、Salesforceの導入を検討してみませんか。

 

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参考文献

  • 政府CIOポータル『シェアリングエコノミー促進室』(https://cio.go.jp/share-eco-center)
  • 『情報通信白書平成30年版』(総務省 2018年)
  • 『UPSTARTS―UberとAirbnbはケタ違いの成功をこう手に入れた―』(ブラッド・ストーン(井口耕二訳)2018年 日経BP社)
  • 『カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』ニック・メータ、ダン・スタインマン、リンカーン・マーフィー(バーチャレスク・コンサルティング訳)(2018年 英治出版株式会社)