2019年8月1日、Salesforceは「Connections To You」を開催しました。この記事では、Main Keynoteの内容をダイジェストで紹介します。

 

市場も消費者も大きく変容している時代に求められるマーケティングとは?

 

消費者の動向や市場は、国内外問わず時代とともに急速に変化しており、企業もその変化に対応していくことが急務となりつつあります。

現在では、Eコマースや電子メール、モバイルアプリケーションなどの複数のデジタルチャネルが浸透し、企業においてはそれらの情報を活用するデジタルマーケティングが大きな役割を果たすようになってきています。

この変化し続ける市場において、有効なデジタルマーケティングを実現するために重要になるのが、顧客体験、つまり消費者が望むことを実現するユーザーエクスペリエンスです。

​現在の消費者は、Webサイト、コールセンター、デジタル広告などさまざまな接点を経由して企業にアクセスしており、その78%は、複数のチャネルを通じたコミュニケーションによって、たとえ企業で対応する部門が異なっても、一貫した顧客体験が得られることを求めています。(『第3版 コネクテッドカスタマーの最新事情​』より)

その顧客体験を実現するために必要なのが、マーケティング、サービス、コマース、セールスなどを横断するプラットフォームです。

Salesforceは、AIを駆使してあらゆるデバイス、データがつながり、部門を超えて一貫した顧客体験の提供を実現できる「Salesforce Customer 360」プラットフォームを発表しました。

 

 

「Salesforce Customer 360」では、消費者がさまざまなチャネルを通して企業とつながっている今、多様なチャネルにあるさまざまな情報をシームレスに、かつ消費者を中心とした形で360度の顧客ビューで見ることで、一人ひとりにパーソナライズされたサービス提供が可能となります。

この360度の顧客ビューに欠かせないのがAIによる分析です。Salesforce Customer 360には、AIの「Einstein」が組み込まれています。そこでは1日あたり76億以上ものリコメンドが動いています。

「Salesforce Customer 360」、そしてそれに組み込まれているパワフルなAIを活用することで、さまざまな分析、インサイト、セグメンテーションなどを行い、すべての消費者といろいろな接点でエンゲージできるようになると考えています。

 

リアル店舗での販売が強いバーニーズ ニューヨークがデジタルに注力する理由は?

 

衣料品やアクセサリーなどを扱う店舗、オンラインストアを運営する株式会社バーニーズ ジャパンは2019年9月に向けてサイトリニューアルに取り組み、SalesforceのMarketing CloudCommerce Cloudの構築を進めています。同社の中本智巳氏は、「お客様は、自分が特別な存在であると認められることを求めている」と考えており、その実現のためMarketing Cloudによるアプローチのパーソナライゼーション、Commerce Cloudの蓄積されたデータによる商品提案のパーソナライゼーションを進め、お客様に自分だけの特別感が感じられるようなサービスの実現を目指しています。

 

 

この取り組みによって実店舗とオンラインストアの連携効果も狙っています。「私たちがお客様に支持されているのは、一人ひとりのお客様に対する、店頭での接客力です。店頭で蓄積されたデータ、そして接客力をEコマースで実現して、実店舗に近づけたい。一方、実店舗側にも効果が期待できます。店頭では得られなかったWeb上の閲覧データなどを実店舗で利用できる環境を作り、実店舗の接客力もさらに伸ばしていきたい」と中本氏は期待しています。

そのようにして株式会社バーニーズ ジャパンでは、オンラインとオフラインのデータを統合して、一人ひとりの消費者に対してより良いサービスを提供できる環境整備に取り組んでいます。

 

キリンが進める新たな事業とデジタル戦略

 

酒類、飲料などで広く知られているキリンホールディングス株式会社(以下キリン)にとっても、市場や消費者の変化に応じたマーケティングの重要性は高まっています。同社デジタルマーケティング部部長の宮﨑知宏氏は「いい商品だから売れるという時代は終わっています。お客様に”伝わる”マーケティングが必要です。デジタルマーケティングは、新たな価値の創造と、それを加速するICTという点でビジネスに貢献していかなくてはいけません」と、現在のマーケティングの役割の変化を認識しています。

 

 

また、キリンでは、新たな領域として「医と食をつなぐ事業」という健康事業を進めています。健康事業とデジタルマーケティングの関連については、少子高齢化の時代、自分の体を管理するセルフメディケーションが注目されている背景を踏まえ、「一人ひとりの体調に応じた個別の対応が必要になってくれば、パーソナライズしたサービスや製品が非常に重要になり、それに伴ってデジタルマーケティングが貢献できる領域も広がっていく」と考え、3つのデジタルマーケティング戦略に取り組んでいます。

1つ目は健康領域における複数の事業を統合してデジタル戦略として打ち出すこと。2つ目がデジタルR&Dを進め、顧客接点をいろいろなデータで取得すること。そこでは顧客接点を経るごとに、消費者がどのような態度変容を起こしたかを分析することが重要になるといいます。そして3つ目がデジタル戦略、デジタルR&Dを支える、安定的かつ柔軟性をもったデジタルプラットフォームを構築していくことです。

 

その具体的なケースが、同社のクラフトビールにおけるSalesforceのソリューションの活用法でした。

同部署の宮入一将氏の目には、「デジタルマーケティングとはいえ、店舗で販売する商品を扱うものである以上、デジタルでの接点だけでは限界がある」という課題が映っていました。そこで、飲む場所やシーン、購入するシーン、SNSに投稿するシーンなどを起点としたシナリオを重視し、「店舗でどのように飲まれているか、量販店やECサイトではどのように購入されているか、飲んだ人がSNSにどのような投稿をしているか」などの分析に基づいた施策の強化を計画しています。ビフォー/アフター、つまり過去の行動からお客様を理解し、クラフトビールを飲んだ後に態度が変わったかを比較して、態度変容を検証していきます。「店舗で楽しんで飲んでいただいたか、継続的に飲んでいただくには何が必要か」などを徹底的に考えて、シナリオに組み込んでいくということです。

この取り組みで重要なことは「インサイトの理解」となります。そのうえで、飲む、買うというシーンからのコミュニケーションのシナリオを再設計し、最終的には売上に貢献するためのPDCAを回していきます。

 

複数チャネルを統合できるプラットフォームを構築する必要性

 

マーケティングツール選びのポイントとして宮入氏が重視しているのは、「ツールではなく、プラットフォームであること」でした。多くのベンダーがさまざまなマーケティングツールを提供している現在、ツールを組み合わせればやりたいことは実現できます。しかし、宮入氏は「将来を見据えると、プラットフォームとしてどう展開していくかがポイント。移り変わりの早いデジタルだからこそ、先を見据えた投資が肝要である」という考えに基づいて、このプロジェクトに取り組んでいます。

同社が現在Salesforceのデジタルマーケティングのプラットフォームを活用しているのは、食の領域、特に酒類、飲料の分野です。今後は新たに取り組む健康領域にも拡大していきたいと考えています。

ビジネスの世界では、市場も大きく様変わりし、消費者のニーズや有り様も変化し続けています。そのような時代の企業においては、消費者に対してパーソナライズした商品やサービスが求められます。Salesforceは、Customer 360とパワフルなAIにより一人ひとりに対する360度の顧客ビューを提供し、パーソナライズされたデジタルマーケティングを推進していきます。