デジタルネイティブ世代が購買力を持つようになった現在、店舗における接客とEコマースでのサービスに対するお客さまのニーズは刻々と変化し続けています。多くの企業では、モバイルやメール、SNS、チャットなどを駆使して顧客接点の強化に取り組んでいますが、大切なのは、「すべてのチャネルで販売のチャンスが生み出せる“優れた顧客体験(UX)”をどう提供するか」です。
そこでここでは、Eコマースの基礎知識やその市場規模について触れながら、優れたUXでEコマースを成功させた事例を紹介します。
まず、「そもそもEコマースとは何なのか?」という疑問から解説していきます。
Eコマースは、日本語に訳すと「電子商取引」となります。より簡単に言えば「インターネットショッピング」のことです。インターネットショッピングを提供するサイトのことは「ECサイト」や「ネットショップ」などと呼びます。Amazonや楽天、Yahoo!ショッピング、ZOZOタウンなどはすべて、このEコマースのサイトに該当します。また、ヤフオクやメルカリなどもEコマースの一種です。
Eコマースの中でも、楽天やYahoo!ショッピングのように一つのサイトの中にさまざまな店舗が出店しているタイプのサイトは「ショッピングモールタイプ」のEコマースと言われています。それとは別に、自社でゼロからサイトを立ち上げて運用しているEコマースもあります。
Eコマースは、大きく下記の3つの種類に分類ができます。
B to BのEコマースは、企業同士で取引をするスタイルです。法人向けの商品を法人が購入するネットショッピングがそれにあたります。オフィスサプライのECサイトはその代表例です。
B to CのEコマースは、企業が個人の顧客に対して商品やサービスを販売するスタイルです。Amazonや楽天などのECサイトはこれに該当します。
そしてC to CのEコマースは、ヤフオクやメルカリなど、個人間で取引をするECサイトやアプリのことを指します。個人が不用品などを出品し、同じく個人が購入するパターンです。
Eコマースの市場は現在も成長を続けています。経済産業省が2019年5月16日に発表した電子商取引に関する市場調査の結果によると、2018年の日本国内のEコマースの市場規模は、B to Cが18.0兆円(前年16.5兆円、前年比8.96%増)、BtoBが344.2兆円(前年318.2兆円、前年比8.1%増)にそれぞれ拡大しています。
日本のBtoC-EC市場規模の推移(単位:億円) ※経済産業省サイトより
またC to Cにおいても、フリマアプリの市場規模が6,392億円(前年4,835億円、前年比32.2%増)と急激に増加しており、2012年に最初のフリマアプリが登場してからたった6年で巨大な市場が形成されたことになります。
フリマアプリの推定市場規模(単位:億円) ※経済産業省サイトより
「第4次産業革命」の時代、ロボット工学やビッグデータ、ブロックチェーン、IoTなどの先端技術が注目されています。小売業界においてAI(人工知能)が重要視される中、Eコマースの業界では、AIを活用してECサイトにアクセスしてきた一人ひとりにパーソナライズした情報を提供することが求められています。
また、近年、ECサイトにアクセスする端末として、モバイルデバイスが利用されています。Salesforceの予想ではECサイト訪問数の68%、注文数の46%がモバイルからとなっています。訪問数より注文数の比率が低いのは、モバイルからECサイトを訪れて購入を検討し、最終的にPCから注文している場合もあると想定されるためです。見方を変えると、商品検討時の接点はモバイルからのアクセス率が高いと言えるでしょう。そして、3人に1人がECサイトより提示されるレコメンデーションから商品を購入しており、見逃せない機能となっています。
ECサイト運営者は、ユーザーがモバイルデバイスの小さな画面でもスムーズに買い物ができるようにするため、UXをモバイルに最適化することが大切になります。そして、ユーザーごとにパーソナライズした情報を、ユーザーが使用しているデバイスに応じて提供するため注目されているのが、AIの活用なのです。
Salesforceでは、Eコマース成功のポイントには「賢さ」「速さ」「つながり」「サクセス」の4つがあると考えています。
ビジネスを前に進めるイノベーションとして、Commerce Cloudでは、この4つのポイントをもとに、SalesforceのAI機能であるEinsteinをはじめとした新機能を追加しています。
たとえば、消費者が商品を検索するときに、商品名がわからなかったり、思い出せなかったりしたらどうなるでしょうか?従来の文字検索やカテゴリー検索のみの機能では、こういった消費者に対応することはできず、せっかくのチャンスを逃すことになります。
AIを活用することで、「欲しい商品の写真で検索」といったことが可能になります。
また機械学習によって、消費者が検索する言葉を予測して提案するなど、消費者が迷うことなく商品にたどり着けるようになります。
消費者の多くがEコマースを使いこなすようになった現在、サイトをすばやく編集できることが売上に直結するようになりました。商品の入れ替えや金額の変更、特集やセール用のページの作成に、エンジニアやデザイナーなど多くの人が関わると、提供スピードが遅くなってしまいます。
プログラミングなどの専門知識がなかったとしても、ページをすばやく・直感的に編集できることが、今後のEコマースプラットフォームに求められることなのです。
Eコマースにおいて、カスタマーサービスやマーケティングとのつながりは欠かせません。
集客と購買がつながることで、消費者ごとに適切な商品のレコメンドや、購入した商品に即したメッセージの送信などが可能になります。
購買とカスタマーサポートがつながれば、購入した商品に応じたサポートが可能になり、消費者の購買体験をより良いものにできます。
Commerce Cloudでは、Marketing CloudやService CloudといったSalesforce製品同士をよりシームレスに連携させ、最適なタイミングで最適なメッセージの送信や、カスタマーサポートでのスムーズな顧客対応を実現します。
変化の早いEコマースにおいて、機能面のみだけでは、劇的な進化は生まれません。ECサイト担当者や、開発者の進化が欠かせないのです。
Commerce Cloudなら、それらの進化をサポートするサービスも展開しています。
Trailheadという無料のトレーニングサイトにて、年末商戦など大きな商機における対応策などが学べ、開発者向けの新しいコミュニティサービスでは開発者同士の情報交換が可能です。
また、カスタマーサクセスマネージャーによる、Einsteinの配置や活用方法について、ベンチマークと比較しながら改善案を提案などもあります。
こうしたサポート体制によって、Eコマースを成功へと導けるのです。
Eコマースを成功に導くためには、UI/UXをどうデザインするかも非常に大切な要素となります。UIとは「ECサイトを訪れる顧客のためのユーザーインターフェース」のこと。例えば、「より使いやすく購入しやすい商品カテゴリ」などがUIにあたります。一方、UXは「顧客体験」のことです。ECサイトを訪れた顧客が「どのような体験をし、どのような感情を抱くか」を想定し設計します。
それでは、UI/UXデザインにおけるポイントを紹介しましょう。
どんな商品なのかがすぐにわかり、その良さがダイレクトに伝わる写真を活用しましょう。特にスマートフォンの場合はPCに比べて表示が小さくなりますので、必然的に写真の重要度がアップします。スマートフォンでも見やすく、商品をイメージしやすい写真が多いサイトほど、理想的なUXが望めます。
ECサイトへは、PC、スマートフォン、タブレットなどさまざまなデバイスからのアクセスがあります。それらすべてを意識したレスポンシブなUI/UXデザインを行いましょう。
Eコマースのサイトを訪れた顧客の多くは、商品カテゴリーからお目当ての商品を探します。その際、「どこに商品があるのかわからない」「そもそもカテゴリーがわからない」といったことが起こらないように設計をしましょう。また、関連商品や類似商品を表示することでさらなる購買意欲を掻き立てる上でもカテゴリー設定は大切です。
ローカライゼーションとは、外国からのサイトへの流入を意識し、それぞれの国の言語にサイトを最適化することを意味します。とりわけ近年においては、Eコマースのサイトを訪れる顧客は日本国内だけではありません。アメリカ、中国、韓国など多くの国からのアクセスがあります。そうしたビジネスチャンスを見逃さないためにもローカライゼーションは重要です。
Commerce Cloudの機能を使って大きな成果を上げている企業の1つに、e.l.f Cosmeticsがあります。同社は、2004年に創設されたニューヨークに本拠を置く国際的な化粧品ブランド企業です。
e.l.f Cosmeticsでは、サイト訪問者の行動に基づいて、購入してもらえそうな商品の表示や検索結果をパーソナライズして提案する仕組みを活用しています。つまりは、一人ひとりの好みに合わせた商品が表示されるため、まるでその人専用のサイトであるかのように見えるのです。その仕組みこそが、私たちのAI技術であるEinsteinです。
例えば、Einsteinではユーザーの行動を分析し、同じ新着商品の商品群の中でもユーザーがより興味を持ちそうな商品順に並べ変えるだけでなく、サイト内での検索結果もユーザーに合わせて最適化させることができます。e.l.f CosmeticsはEinsteinを活用して「賢さ」を実現している事例と言えるでしょう。
ラコステは1933年設立の、右を向いたワニの商標で有名なフランスのアパレルブランドです。Customer 360を活用してB2Cコマース、B2Bコマースの両方でお客さまとのエンゲージメントを果たしています。
例えば、モバイルアプリの活用です。モバイル専用アプリを構築し、Eコマースだけでなく実店舗でも利用することで店舗の売り上げが約8%も上昇するという成果を上げています。
同社では、B2B専用のサイトも運営しています。B2Bのサイトながら、消費者向けのECサイトのような使いやすいUI/UXでありながら、同時にB2Bならではの情報も提供されています。例えば商品をカートに入れて注文したり金額を確認したり、複数の商品写真とともに詳細を確認できたりする手軽さはB2Cサイトとよく似たUXですが、業績見込みなどが算出されるのはB2Bならではの情報と言えるでしょう。またEinstein Commerce APIで消費者向けのECサイトのデータを活用することで、一般ユーザーに何が売れているかといった「売れ筋商品のレコメンド」を表示することでビジネスのサポートも実現しています。
このように、Commerce Cloudを活用して、B2Cのみならず、B2Bでも「顧客目線でのUX」の提供に成功しています。この事例では「賢さ」「つながり」などが成功のカギとなっていると言えるでしょう。
Eコマースを成功に導く「優れたUX」はユーザー目線で構築されていることが重要です。そしてCommerce Cloudはユーザーの快適なEコマース体験を強力にサポートしています。
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