企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦し続けている「Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)」。彼らの取り組みは、他の企業でも参考になる示唆に溢れているはずです。そこでこのシリーズでは、先駆者たちがどのような成果を上げているのか、そしてその成果に至るまでにいかなるチャレンジを進めてきたのかを紹介します。

過去の連載はこちら Trailblazerから学ぶシリーズ

Vol1.コニカミノルタジャパン

Vol2.manebi

Vol3.パーソルキャリア ミイダス

Vol.4ビズリーチ

Vol.5 SALES ROBOTICS

Vol.6 三生医薬

  

デジタル化の進展で大きく変化してきた顧客側の体制

ある程度の幅がある商品やサービスのラインアップを持っている企業の場合、クロスセルによる売上増大の可能性はかなり高いといえます。しかし商品やサービス毎に組織を作り、それぞれが個別に顧客へのコンタクトを行っているのでは、そのメリットを十分に活かすことができません。既存顧客の新規ニーズを発見し、それを掘り下げていくには、戦略的なチームセリングが必要になります。

これをSalesforceの導入によって実現しつつあるのが、今回紹介するIMJです。同社は1996年7月にデジタルハリウッドのコンテンツ事業部が独立する形で誕生し、すでに20年を超える実績を持つデジタルマーティングの専門企業。戦略立案からシステム開発、コンテンツ制作、データ分析、それらの運用・改善支援に至るまで、一貫したサポートを行っています。2017年12月にはACCENTURE HOLDINGS B.V.の完全子会社となり、戦略性と提案力をさらに強化しており、この分野におけるリーディングカンパニーとして高い評価を受けています。

IMJのビジネススタイルの特徴は、国内各業種のトップ5~10の企業をターゲットにし、デジタルマーケティングの課題をEnd to Endで解決している点にあります。そのためお客様となり得る企業数は400-500社程度と、決して多くはありません。このような限られた優良顧客の価値をいかにして高めていくかが、同社にとっては最重要課題なのです。

 

「以前のデジタルチャネルはIT部門を中心に運営されており、全社的なビジネス戦略とは切り離されていました」と語るのは、IMJで取締役 COOを務める加藤 圭介氏。しかし最近ではデジタルチャネルへの取り組みを「全社改革の一環」として推進する企業が増えており、関係する部署も多岐にわたるようになっているといいます。IMJではアカウント担当者、コンサルタント、コンテンツ制作などを担当するデリバリ担当者、データ分析担当者など、複数の担当者がサービス提供に関与していますが、顧客側の体制が大きく変化した結果、これらの各担当者がコンタクトする顧客側の担当者も、分散する傾向にあるのです。

「以前はそれぞれ個別にクライアント(顧客)とやり取りしていても、相手となる担当者が限られていたため、それほど大きな問題にはなりませんでした。しかしお客様の体制がこのように変化するのであれば、当社の体制も変えていく必要があると感じていました」。

 

Salesforceによる情報共有が可能にした一体感のあるチームセリング

この課題に対応するため、IMJでは2015年に「アカウント統括本部」を設置し、クライアントの対応を「横串を通した状態で管理できる体制」を作り上げていきました。その一方で、この体制を支える情報基盤も必要になると判断、2015年11月にSalesforceの採用を決定し、2016年2月から導入がスタートしました。

Salesforceが選ばれた理由は大きく2点あったと加藤氏は説明します。第1はCRMとして最もシェアが高く、世界的に普及しているソリューションであること。第2はセールスフォース・ドットコムという会社自体に十分な体力があると評価されたことです。CRMは機能追加や改善を行いながら長く使い続けるべきソリューションであるため、提供ベンダーが長期的にビジネスを継続できることも、重要な要件になると考えられたのです。

2017年7月にはアカウント統括本部を中心にSales Cloudの活用を開始、これに加え全社員を対象にChatterのアカウントも配布しました。「Sales CloudとChatterで情報共有基盤を確立したことで、アカウント担当者やコンサルタント、デリバリ、データ分析がシームレスに連携できるようになりました」と語るのは、IMJ アカウントエグゼクティブ本部 本部長 兼 アカウント統括第1本部 本部長の小巻 純一郎氏。これによって顧客の複数部門にアプローチしやすくなり、チーム一丸になった対応も行いやすくなったといいます。

それでは具体的に、どのような流れで情報が共有されているのでしょうか。

まず顧客に新たな提案を行う場合には、Salesforce上で社内メンバの中から必要なスキルを持つ人を見つけ、アサインメントの依頼を行います。Chatterで依頼を行うことで関係者全員に通知メールが届き、上司の承認が得られればすぐにチームを編成できるようになっているのです。「お客様の規模が大きい場合には、関わるメンバーが20~30名になることもあります」というのは、IMJ アカウント統括第1本部 アカウントマネジメント部 Unit2 マネージャーの渡部 良介氏。「このようなことはメールだけでは困難」だと指摘します。

顧客情報はSales Cloudの中で一元管理されており、新規案件に至るまでの経緯も記録されています。チームメンバーはこれらの情報もChatterを通じて参照でき、自分たちが次に何を行うべきかを判断しやすくなっています。

「このような取り組みを進めていった結果、部門間の信頼関係を構築しやすくなりました」と渡部氏。双方向の情報交換が活発に行われており、他の担当者からアカウント担当者へ「こういう提案をしたほうがいい」とフィードバックされることも増えています。「関係者全員が1つのチームだというマインドが醸成されており、お客様の課題を先取りして提案することも可能になるという手応えを感じています」。

 

今後はマーケティング部門とも連携し戦略的な新規顧客開拓を

チームが一丸となってクライアント対応するようになった結果、既存クライアントからの収益も増大しました。渡部氏が担当するクライアントの中には、売上金額が1年で1.5倍になったケースもあるといいます。IMJが確立しつつあるチームセリング体制は、大きな効果をもたらしているといえるでしょう。

その一方で加藤氏は「既存のお客様を深掘りする一方で、新規のお客様も継続的に開拓しなければビジネスは先細りしていきます」とも指摘します。この課題に対しては、今後マーケティング部門との連携を強化することで対応していくと語ります。

マーケティング部門側の対応も着々と進んでいます。IMJではSales Cloudと同時にPardotも導入し、Webサイトへのアクセス状況の追跡やメール配信などに活用しています。また外部のデータソースと組み合わせたリード選定にも着手しています。「今後はここで得られたリードの中から、当社が本当にターゲットとすべきお客様を見つけ出し、戦略的にアプローチする手法を確立していきたいと考えています」(加藤氏)。

(取締役 COO 加藤 氏(中央)、小巻 氏(写真左)、渡部氏(写真右))

これを発展させていけば、ABM(アカウントベースドマーケティング)が実現されることになるでしょう。自社にとって本当に価値のある顧客を選別し、その価値を最大限に引き出したい企業にとって、参考になる取り組みだといえるはずです。

IMJの取り組みについてはこちらから更に詳しく確認いただけます。

戦略的チームセリングを実現するための1つの手法でもあるABM(アカウントベースドマーケティング)については、以下よりダウンロードしてご活用ください。