多くの企業にとって、自社の製品やサービスに関する「お客様の生の声」を聞くことは、マーケティング活動における重要な取り組みの1つです。「お客様の生の声」=「本音」はどこにあるのでしょうか。昨今の「モバイルシフト」によって、企業が「お客様の生の声」を取得する手法にも変化が生まれてきています。

モバイルシフトとは、スマートフォンなどのモバイルデバイスを多くの人が使うようになったことで、ビジネスやマーケティング、さらには消費者の購買行動などに起きるさまざまな変化のこと。SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の急速な普及も、スマートフォンがコミュニケーションのあり方を変えたという点で、モバイルシフトがもたらした影響の一つといえるでしょう。

SNSによって消費者が自ら発信できるようになったことで、今までの「企業からの一方通行の情報発信」から大きな変化が起きています。SNSが多用され、多くの人が「発信」するようになったことで、消費者は他の消費者の「生の声」、「本音」がわかるので、実際にその商品やサービスを購入しようというときに参考にできます。ときには、企業がホームページで発信する製品情報よりも、SNSで発信される購入者からの情報のほうが、購買を検討している消費者にとっては価値ある情報と受け取られるケースもあるでしょう。それだけに、利用者の声がマイナス評価だった場合、企業にとって致命的なダメージになることもありえます。

SNS上に見え隠れする消費者の「本音」

こうした状況の中にあって、企業がお客様の生の声=本音を探る方法にも変化が出てきました。これまでは、店舗のテーブルに置かれた「お客様アンケート」、1対1の面談式で実施する「デプスインタビュー」、集団で行う「グループインタビュー」などによって、製品やサービスなどの選択や購買理由などをより深く掘り下げていました。しかし、こうした手法では、モバイルシフトによって消費者の情報伝達スピードが格段に向上した現在、消費者のトレンドに追いつけない可能性もあります。

また、アンケートやインタビューでは企業が用意した質問がされるため、回答の内容が限られてしまうという欠点があります。また、企業アンケートに否定的な意見を書くことをためらい、本音を聞き出すことが難しいということもありました。

一方、SNSでは消費者同士がいつでも繋がり、「サイレントカスタマー」も自分の意見や感想などを挙げやすくなりました。サイレントカスタマーとは、製品やサービスに不満を抱きながらも、苦情をぶつけないお客様のことです。つまり、ブログや口コミサイトをはじめ、TwitterやFacebookなどの「ソーシャルメディア」にこそ、お客様の本音が流れるような時代になりました。

お客様の「声なき声」にも耳を傾けられる「ソーシャルリスニング」とは?

それでは、SNS上を流れるお客様の本音をより多く集めるためには、どうすればいいのでしょうか。その手法として注目を集めているのが「ソーシャルリスニング」です。

ソーシャルリスニングとは、TwitterやFacebook、口コミサイトなどから顧客の声を収集して分析し、マーケティング施策に活用する方法です。

ソーシャルリスニングと似ている用語に「ソーシャルモニタリング」があります。この2つの言葉は、それぞれ異なる意味合いを持ちます。ソーシャルモニタリングでは、ソーシャルメディアを文字通り「監視する」ことが主な役割となります。ソーシャルメディアにおける企業のキャンペーン施策やコミュニケーション戦術の検証や、ソーシャルメディア上での「炎上」や「風評被害」対策などが中心となります。

ソーシャルリスニングでは、顧客が自発的に投稿した内容を収集して分析するので、先述したアンケートやインタビューなどとは異なり、質問に影響されない「よりリアルな声」を知ることができます。

現在、多くの消費者が製品を購入する時に参考にしているのが、口コミサイトに掲載されている口コミやソーシャルメディアに投稿された利用者によるレビューです。総務省が発表した「平成28年度版情報通信白書」では、「ネットショッピングをする時にレビューをどのくらい参考にするか」という調査が実施され、その調査結果によると、20~60代の全年代で「かなり参考にする」、「まあ参考にする」と回答した人を合わせると全体の75%がレビューを参考にしていることがわかっています。

ソーシャルリスニングの活用で新たな顧客体験価値を

それでは、具体的にソーシャルリスニングはどのように活用できるのでしょうか。例えば、自社ブランドや製品に対する投稿を分析することで、製品に対する現状の課題把握や顧客満足度を向上させる指標として活用できます。

また、ソーシャルリスニングを活用することで、顧客体験(ユーザーエクスペリエンス:UX)を向上させるチャンスをつかむこともできます。例えば、「製品の使い方が分からない」と投稿している利用者に対して、使い方のマニュアルやチュートリアル動画を案内するといったことでできれば、利用者は手厚いサポートを好意的に感じることになるでしょう。

このようにソーシャルメディア分析を利用して能動的に顧客を支援する取り組みは「アクティブサポート」と呼ばれます。近年、UX向上施策として注目を集めています。

さらに、投稿ユーザーのプロフィールや他の投稿を見ることで、お客様の「ペルソナ」を作り出すこともできます。ソーシャルメディアでの影響力が強い「インフルエンサー」を発掘し、キャンペーンなどへの協力を依頼することなどにも役立てられます。

ソーシャルリスニングの最大メリットは「消費者の正直な声が聞ける」ことです。ソーシャルメディア上に投稿する率直な意見や感想は、企業にとって非常に貴重な情報となります。

中には、クレームや不満が投稿されている場合もありますが、自社の現状把握とこれからのサービス改善に向けた貴重なヒントを得ることができます。SalesforceのMarketing Cloudを利用すれば、さまざまなSNS上を飛び交う消費者の声を拾い上げ、さらには、SNSへの適切な情報発信により、消費者の購買意欲を刺激する効果的な働きかけもできるようになります。ソーシャルリスニングの有効活用に、積極的に取り組んでいきましょう。