7月25日、「Salesforce Summer 2018」が開催され、Salesforceのユーザーやパートナーの方々が集まりました。「We Are All Trailblazers 第4次産業革命における カスタマーサクセスの新しいカタチ」と題された基調講演の模様をレポートします。
世界経済フォーラムの年次総会であるダボス会議でも議題になったように、世界中の産業界で「第4次産業革命」が重要なキーワードになっています。AIやIoT、ビッグデータは、ここ数年のIT分野で注目され、目覚ましい進歩を遂げてきました。今後、より幅広い領域で活用され、人々の生活を大きく変えていくと見られています。
セールスフォース・ドットコム 代表取締役会長 兼 社長の小出伸一は、「すでに実用化段階にあるものも含めて、さまざまな技術がつながること。そして、そのつながりの先には必ずお客様がいるということ。これこそが第4次産業革命の重要なポイントです」と説明しました。
自動車から人々が腕にはめた活動量計まで、すべてがつながる世界がまもなく到来しようとしています。ところが、ある調査機関は「59%の企業は第4次産業革命の準備ができていない」と発表しました。高度なシステムは導入したものの、十分な顧客体験を提供できていない企業が多いのです。
小出は「これが顧客と企業の間に生じている乗り越えるべき大きな課題です。その解決方法には、技術やビジネスプロセスなど、さまざまなものがあります。しかし、私は、イベントにご参加いただいている皆様が、Trailblazerとして改革していくことが、もっとも重要だと考えています」と語ります。
米セールスフォース・ドットコムでCPO(最高製品責任者)を務めるブレット・テイラーは、Salesforceがコミュニティや人をいかに大切に考えているかについて語りました。
「調査機関のIDCは、2020年までにSalesforceのプラットフォームによって330万人の雇用が世界で創出されると予想しています。これはGDPに対して8590億ドルの影響を与える計算になります」と紹介し、Salesforceにとって技術と雇用機会を社会のために提供していくことが使命であるとしました。さらに、市場におけるSalesforceの成功は、製品だけでなくそれに携わるTrailblazerとそのコミュニティの存在があったからこそ実現できたと語りました。
ステージには、Trailblazerとして大創の衛藤奈々氏が登場。営業職からSalesforceアドミニストレータへと転身した衛藤氏にとって、コミュニティの存在が大きな助けになったこと。その恩返しとして、現在は自らコミュニティを立ち上げ、切磋琢磨していることが語られました。
Salesforceによってデジタルトランスフォーメーションを成し遂げた企業として、セブン&アイ・ホールディングスと荏原製作所が紹介されました。
セブン&アイ・ホールディングスでは、Salesforceを使ってCRMシステムを構築。顧客一人ひとりを把握することで、便利なアプリの提供やグループ各社の連携による顧客体験の向上を実現しました。
2万店舗以上を擁し、リテール業界を牽引するセブン&アイ・ホールディングス。同社代表取締役副社長の後藤克弘氏は、「今後も社会の中で利用してもらうには、デジタルトランスフォーメーションがカギになります」と言います。さらに続けて、「2200万人のお客様に利用されていますが、これまでは一人ひとりのお客様を知る術がありませんでした。CRMがそれを可能にしたことで、お客様との絆をより深めることができます。お客様や世の中は、必ず変化していくものです。企業も自ら能動的に変わっていく必要があります」と語りました。
セブン&アイ・ホールディングス - Customer Success Story
荏原製作所では、営業支援システムとしてSalesforceを導入。それまで課題だった営業担当者のデスクワーク負担を減らすとともに、案件情報の社内共有を実現しました。
同社の主力製品であるポンプ機器は、ビルや工場にとって必要不可欠な存在です。ポンプ市場は、都市の発展状況や各国の経済成長によって異なります。開発途上国では市場の拡大が期待できますが、日本市場は将来頭打ちとなります。そんな市場背景から営業力の強化や社内改革が必要だったと、同社企画管理技術統括部Executive Directorの籔内寿樹氏は言います。
さらに籔内氏は、「国内市場ではすでに大きなシェアを持っていますが、競合との競争はますます熾烈になります。お客様に選んでいただくためには、製品の良さだけでなくサービス力が必要です。たとえば、ポンプの製品寿命は15年ほどあり、メンテナンスや取り替えなど、サポートは長期間にわたります。それらにシステマチックに対応しなければなりません。また、ビルへ導入する際には、納品までに何度も仕様と見積りの変更があります。このような煩雑な仕事を、スーパー営業担当者だけでなく誰でも対応できるような体制作りに取り組んでいます」と、改革の内容を説明しました。
荏原製作所 - Customer Success Story
セブン&アイ・ホールディングスでは、顧客一人ひとりに対して、グループ会社を横断しての商品レコメンドが可能になりました。荏原製作所では、顧客のデータを集約・共有することで、問い合わせを誰が受けても適切に対応できるようになりました。
顧客とのつながりを深め、顧客体験を高めた両社は、まさに第4次産業革命を体現する企業と言えるでしょう。