日本における導入が急速に伸び、Sales Cloudとシームレスに連携するMAとして、重要な役割を果たすようになったSalesforce Pardot。Pardotをご利用いただいているお客様100社にお集まりいただき、「Pardotお客さま感謝祭」を2018年7月18日に開催しました。その中で「クロスオーバーから探るB2Bマーケティングの新たな可能性」と題するスペシャルセッションが展開されました。今回はその第一部として行われた、シンフォニーマーケティング 代表取締役である庭山 一郎氏の基調講演をお届けします。こちらは第二部のパネルディスカッションに向けたトーンセットとしてB2Bマーケティングの本質論やマーケターのキャリア開発についてのお話しを頂いたものです。第二部のパネルディスカッションについてはこちらからご覧ください。
「BtoBマーケティングは科学と感性で出来ている」
シンフォニーマーケティング株式会社
代表取締役 庭山 一郎氏
私がマーケティングに出会ったのはかれこれ36年前、20歳のときでした。それから今までずっとマーケティングをやっています。マーケティング会社を2社経験し、今から28年前に会社を設立しました。最近は社会への恩返しのために、ビジネススクールの客員教授やInterDirect Networkの理事も務めています。
今日はPardotユーザーの皆さんに、ひとつお聞きしたいことがあります。それは「御社のMAは売上に貢献していますか?」ということです。なぜこのようなことを聞くのでしょうか。
日本にMAが入ってきたのは2014年、アメリカでは2000年頃にMAの導入が始まったので、遅れること15年です。ようやく日本でもMAが盛り上がろうとしていたこの頃、私は日経BP社のメディアでコラムを執筆していたのですが、そこに「このままでは日本にMAの屍の山ができる」と書きました。MAはプロ用のツールであるにも関わらず、多くの企業がこれを「操作は簡単です」と言いながら販売していたからです。しかし導入している会社をよく見ると、そこにはマーケティングのプロがいないという状況が多いのです。
あれからすでに3~4年が経過し、いまではPardotだけでも相当数、他の製品も含めればおそらく、日本におけるMA導入企業は3000社に上ると思います。しかし私の肌感覚では、その9割は屍です。MAを入れたとしても、営業にリードを供給し、売上に貢献しなければ意味がありません。では「簡単だ」というのは嘘だったのでしょうか。嘘ではありません。しかし意味が違ったのです。簡単なのは操作であり、難しいのはこれで売上に貢献することです。これは例えば、ワープロが使えたとしても、必ずしも人を感動させる文章が書けるわけではない、というのと同じことです。Pardotは間違いなく、世界最高のMAツールの1つです。今日ご参加の皆さんはすでにそのツールを使っています。となると、あとは皆さんの腕を磨くしかない。だからこそマーケティングを学んで欲しいのです。これは大学院でなければ学べないわけではなく、複雑怪奇なものでもありません。
皆さんもよく御存知だと思いますが、「STP(Segmentation、Targeting、Positioning)」がフレームワークの基本です。しかしこれが結構難しい。これをきちんと行うには、その企業の売上や業種、エリアといった2次元的な属性情報だけでは足りません。お客様がいまどのような状態なのかという、3次元的な情報が必要です。そして細分化した市場の中で、自社の製品やサービスが確実に選ばれる状態にしなければならない。ここまで行った上で、初めてマーケティングミックスが要求されます。そしてこの次からが、マーケティングの領域です。これらのプロセスのうち、MAでできるのは一部だけです。MAの操作ができても、マーケティングができるわけではないことが、おわかりいただけると思います。それではどのようにすればマーケティングを学べるのでしょうか。
書店に行けば、「マーケティングの巨匠」たちの本が、安く購入できます。フィリップ・コトラーはSTP、デビッド・アーカーはブランド論、イゴール・アンゾフは戦略経営論、エヴェリット・ロジャースはイノベーション論の大家です。私が一番好きなのはセオドア・レビットですが、彼は「ホールプロダクト」と「マーケティング近視眼」という、素晴らしい論文を書いた人です。
現在のマーケティングへの影響が強いのはここに挙げる方々です。ドン・ペパーズとマーサ・ロジャーズは1to1マーケティング、ジェフリー・ムーアはキャズムを提唱した人です。デビッド・オグルビーはあのオグルビーという広告会社を作った人ですが、実はコピーライターです。死ぬまで自分はコピーライターなのだと言って、コピーにこだわった人です。こういう人たちの本を徹底的に読むことが、非常に重要な勉強になるのです。
そしてBtoBマーケティングで必ず勉強してほしいのが、ジョン・ニーソンです。この人はSiriusDecisionsというアドバイザリーファームの創業者ですが、この人が提唱した「デマンドウォーターフォール」というのが、世界のB2Bマーケティングのスタンダードモデルになっています。
これを勉強しなければマーケティングを語ることはできません。では海の向こうのマーケターはどのような状況なのか。マーケティングを勉強する以上、皆さんには世界に出て、世界のマーケティングの今を肌で感じて欲しいと思います。
例えばSiriusDecisionsのイベント。これは毎年開催されています。ここには世界中から約3,000人のマーケターが集まります。その中には、我々のようなマーケティングエージェンシーの人間は、ほんの少ししかいません。主催者はすべての参加者をユーザーで埋めたいと考えているのです。彼らはここで、様々な発表を行っています。
ぜひ皆さんにも、こういう場に立って発表して欲しいと思います。しかもこのイベントは4日間カンヅメになり、世界中のマーケターと交流できます。毎日ネットワークブレックファーストやネットワークランチがあり、その会場はテーマごとにエリアが分かれています。自分の興味のあるテーマのエリアに行き、同じ問題意識を持つ人と会えるわけです。しかし残念ながら、ここに日本人はほとんどいません。このままでは日本企業は、世界で戦うことはできないのではないでしょうか。
私は36年間ずっとマーケティングをやってきましたが、まだ飽きたと感じたことは一秒もありません。今でもワクワクしながら、夢中になって追いかけています。BtoBマーケティングは、科学と感性が微妙なバランスで調和した、最高に面白い仕事です。ぜひ一緒に学び、その道のプロになり、日本のマーケティングをトップレベルにしていただきたいと思います。
究極のBtoBマーケティングと言われるABMについて庭山氏に解説いただいた、“ABM実践のための7つのステップ”について、以下よりダウンロードください。