AIが今、マーケターの仕事に変革を起こそうとしています。
スマートフォンやスマートスピーカーの「音声アシスタント」などによって身近になった、AI(人工知能)を活用しようとする企業が増えてきているのです。
AIはうまく活用すれば、これからのスマートなマーケティングに欠かせない、マーケターの「右腕」となります。今回は、マーケターがAIをどのように活用できるのかに迫ります。
AIの特技を見てみましょう。AIの特技に「パターン認識」があります。大量のデータから関連性を見出すことを得意としているのです。そして、現在は「ビッグデータ」という言葉に代表されるように大量のデータの時代であり、AIを使い、その活用が始まっています。
たとえば医療です。先進国の社会問題であるアルツハイマー病を解決に導くのは、人間ではなくAIの「医師」かもしれません。
アルツハイマー病の初期段階は、記憶障害などに代表される明確な症状が現れません。しかし発症する何年も前から睡眠や行動に何らかの変化が生じる場合があると研究者たちは考えています。こうした、いわば「潜在患者」を識別するために、AIが活用されようとしているのです。
データ化された患者の日常的な行動(呼吸、睡眠、歩行速度など)から、将来的なリスクにつながるパターンを持っているかをAIによって判別する実験が行われています。
さらに、さまざまな検査や病歴などのデータを複合的に参照して行わなければならないため、人間の医師には骨の折れるアルツハイマー病の診断に、「機械学習」を活用しようとする研究も始まっています。
また、インターネット上の動画サイトには、毎日世界中から膨大な量の動画がアップロードされます。これらの中から違法な動画、不適切な動画を選別し、削除する「コンテンツ・モデレーション」は、人力で行えば非常に多くのコストがかかる作業です。そこでYouTubeはAIを活用することで、コンテンツ・モデレーションを自動化することを試みていることが報告されています。
このようにAIは、膨大な情報から人間の能力では見つけることのできないような物事の関連性を見出したり、大量の作業を一瞬でこなしたりすることが可能なのです。
今後、職場におけるAIの導入はますます加速するのかもしれません。
総務省の「平成28年版情報通信白書」によれば、アンケート調査で「職場に人工知能(AI)が導入されている」と回答した日本の就労者は5パーセントであり、これはアメリカにおける同様の調査の13.7パーセントに比べて低い数字です。しかし、「自分の職場への人工知能(AI)導入についての賛否」の調査においては、日本の就労者は「好ましい」、「どちらにもあてはまらない」と回答した人が多数派を占め、傾向としては否定派を上回っています。
購買行動が多様化・複雑化した顧客に対し、どのようにペルソナを定義し、効果的な施策を行っていくべきか、それは多くのマーケターの悩みに違いありません。
企業のマーケターはより効果的なマーケティングを行うために、顧客の行動とマーケティング施策を概念化する「カスタマージャーニー」を作成したり、顧客調査や個別インタビューを駆使しながらペルソナの設定を行ったりしています。
しかし現在、マーケターは常に悩みを抱えています。顧客は実に様々なチャネルを使い、オンラインを介して生活をしています。さらに、日々新しく生まれるテクノロジーもすぐに使いこなします。顧客の行動が多岐に渡ることによって、企業はその行動を予測することが難しくなりました。顧客へレコメンデーションを行おうとしても、その人がこれまで何の広告を見て、何を買ってきたのかを把握するのは、顧客本人ですら非常に難しいでしょう。
マーケターがAIを活用すべきポイントは、自分だけでは気づくことのできない情報の関連性に気づくことができ、最適な施策を実行できるということです。まるで冒頭のAIの医師のように、人力では見ることのできない量の情報を取得し、データサイエンティストが作業しなければ見出だせなかったパターンを認識できるというわけです。
これらによりマーケターは、ユーザーの動きが非常に複雑化する現代において、スマートな判断と施策を行うことが可能になります。
もしも膨大な量の顧客データの中から、カスタマージャーニーを構築できたら――。それを実現するのがSalesforce Marketing Cloudです。
Marketing CloudはAI「Salesforce Einstein」を搭載しています。このAIは、自社の顧客データを網羅的に解析・分類し、最適なカスタマージャーニーの構築をサポートします。
このAIはユーザーの施策に対し、もっとも効果的なデータを自動的に提案することができます。たとえば100万人の顧客に対し、タッチポイントとして「メールの配信」を設定する際、AIは顧客データを解析し、「メールに反応するであろう人」を自動的にセグメントすることができます。ユーザーは、経験則と手間のかかる調査から開放され、AIからの提案を見ながら合理的なペルソナを見出し、最適なカスタマージャーニーを作成することができるのです。
さらに、既存のカスタマージャーニーの中で顧客がどのように行動したかを解析することも容易です。たとえば「3回自然検索し、デジタル広告キャンペーンを見ている人は○人いる」、「モバイルアプリとウェブサイト両方を見ている人が○人いる」といった解析もできます。特定のジャーニーの顧客をセグメント化でき、効果的なジャーニーをより強化していくことも可能です。
先述したように、複数のチャネルを使いこなし、生活の多くの部分をオンラインで生活する「デジタル・エイジ」における顧客の動きを捉えるのは非常に難しいものです。しかしオンラインを介するがゆえ、顧客は同時に数多くのデータも生み出しながら生活しています。それらのデータを適切に処理し、意味のある情報を取り出すことができれば、効果的なマーケティングに役立てることができます。
しかしマーケターの多くはそれらのデータを適切に活用しきれていません。国内でSalesforceが独自に行った、1,000社の企業のマーケターを対象としたアンケート結果がその現状を物語っています。
同アンケートによれば、圧倒的に多くの人が「自社のマーケティング施策への投資に対し、満足していない」と答えています。その理由として「戦略立案への知識不足」「人材不足」そして「新しい流行への対応不足」が挙げられます。
AIを活用すれば、マーケターはデータに基づいて戦略立案を行うことができ、多くの作業が自動化されるために人材不足にも対処することができます。さらにAIは常に自動的にアップデートされるため、新しいネット上のトレンドにも適応することができます。
AIは、デジタル・エイジにおけるマーケターの右腕であり、必須ツールと言っても過言ではありません。