企業のデジタルトランスフォーメーションを支え、革新に挑戦し続けている「Trailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)」。彼らの取り組みは、他の企業でも参考になる示唆に溢れているはずです。そこでこのシリーズでは、先駆者たちがどのような成果を上げているのか、そしてその成果に至るまでにいかなるチャレンジを進めてきたのかを紹介します。

労働集約型の営業から脱するためインサイドセールスへと転換

他社と比べて魅力的な商材を扱っているにもかかわらず、営業担当者の不足で、売上を伸ばし切れない。このような悩みを抱えている企業は、決して少なくないはずです。特に最近では少子高齢化の影響で人材が不足しており、優秀な営業担当者を雇用することは以前にも増して難しくなっています。「営業担当者の数を増やさずに売上を伸ばす方法を」と考えている経営者も、多いのではないでしょうか。

実はこの望みをかなえている企業はすでに存在します。それが、転職支援や求人メディア運営などの人材サービスを手がけるパーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)の社内カンパニーとして、モバイルを活用した会員制転職サイト「ミイダス」を運営する「ミイダスカンパニー」です。

ミイダスは2015年11月にリリースされ、利用企業は11,000社を突破、業界屈指の転職求人サービスへと成長しています。この成長の源泉となっているのは、サービス内容のユニークさだといえます。利用企業は募集したい人材の条件を指定して検索することで、合致する人をリストアップでき、オファーもボタン1つで一括送信可能。リクルーティングのオートメーション化が可能なのです。しかも応募者は条件に合致した人だけなので応募者の質も高く、一次面接通過率は約25%と、他のサービスに比べて極めて高いレベルに達しています。また利用料金は応募人数や採用人数にかかわらず定額制になっており、費用対効果も圧倒的に高いと評価されています。

しかし以前のミイダスカンパニーのマーケティングや営業体制について、同カンパニー編集長の細田 亮佑氏は「大きな課題を抱えていました」と振り返ります。「以前の営業活動は完全に外勤中心で、営業1人が訪問できる企業数に限界がありましたが、売上を拡大するには人を増やすしかないという、典型的な労働集約型ビジネスモデルになっていたのです」。

この問題を解決するため、ミイダスカンパニーはマーケティングとセールスの体制刷新を決断。インサイドセールスへの徹底した転換へと踏み切ります。これを支え営業・マーケティング支援システムとしてSalesforceのSales CloudとPardotを導入し、2016年12月にインサイドセールス基盤を確立するのです。

アポインターとクローザーの分業体制でプル&プッシュ型の営業を展開

それでは実際に、どのようなマーケティング・セールス体制を構築したのでしょうか。

現在のミイダスカンパニーのセールス体制は、リードに営業電話をかけるアポインターと、商談化された案件を成約に持ち込むクローザーで構成された、完全な分業体制となっています。顧客へのアプローチ手段としては電話やメールが活用されており、訪問による営業活動はいっさい行われていません。

顧客へのアプローチ方法としては、大きく「プッシュ型」と「プル型」に分かれています。

まずプッシュ型営業では、パーソルキャリアが収集・蓄積しているデータをSales Cloudに取り込んだ上で、その情報をもとにした架電を行っています。またパーソルグループ各社のサービスに対する出稿状況も収集されており、これにもとづくスコアリングも行われています。

その一方でプル型営業では、Pardotが積極的に活用されています。ミイダスのWebサイトでの問い合わせをPardotで検知し、それをアポインターへと通知しているのです。またミイダスでは人材検索を無料トライアルで行うことが可能ですが、その操作を行ったことも自動的に検知され、アポインターへと通知されます。

アポインターはこれらの情報をもとに電話をかけ、商談につなげていきますが、ここで商談に至らなかった場合でも、料金表や顧客事例などの情報を掲載したメールを、相手の許可をとった上でPardotから送信しています。なおプッシュ型営業で失注した場合にも、その情報がPardotへと送られ、問い合わせが検知された時点でプル営業が行われるようになっています。

さらに、競合他社のサイトに出稿された内容もプル営業に活用されています。その情報から「どのような人材を募集しているのか」を判断し、「お探しの人材はミイダスなら〇〇名登録されています」というメールを送信、メールに記載されたリンクがクリックされた時点でPardotが自動検知し、それがアポインターに通知されているのです。

案件獲得確率は8割以上、営業経験がない人でも成果を出すことが可能

このような体制を確立することで、マーケティングとセールスの効率は飛躍的に向上しました。

まずアポインターに関しては、架電リストが自動的に生成され、それに従って電話をかけて履歴入力を行うだけで自動的にクローザーへと引き継がれるようになったため、行うべき作業が大幅に削減されています。また案件獲得の確率も、大幅に向上したといいます。

「社内のデータベース活用やこれまでの出稿状況によるスコアリングは以前からも行っていましたが、電話をかけても、案件を獲得できる確率は4~5割程度でした。しかしPardotで検知した顧客の場合、その確率は8割以上になっています。過去の情報にもとづいてアクションを起こすのではなく、いまこの瞬間のお客様の行動を検知する方が、はるかに重要なのだと気付かされました。これによって成約数も大幅に増大しています」(細田氏)。

クローザーに関しても、大きな変化がもたらされています。Sales Cloudによって受注までのKPIが統一できるようになった結果、誰が営業しても同じような成果が出せるようになったのです。

「営業経験がない人でも十分な成果が出せるため、採用も楽になりました。お子さんのいるお母さんや、異業職種の方々が即戦力として働くことができ、人材の多様性が生まれました。営業一人あたりの生産性もグループでTOPクラスを誇ります。」(細田氏)。

ミイダスカンパニーの取り組みは、デジタルを中心としたマーケティングとインサイドセールスによって「営業は足で稼いでなんぼ」という考え方が、すでに過去のものになったことを示しています。インサイドセールスだけでクロージングする仕組みを確立し、属人性を排除した体制を確立することで、限られた人員でも高い成果を出すことが可能なのです。
ミイダスカンパニーの取り組みについてはこちらから更に詳しく確認いただけます。

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