本Blogでは、「中小企業担当者が知っておくべきデジタルマーケティングの基礎」と題して、マーケティングの基本知識から、SEOの基礎、ウェブ広告の基礎などを連載でお届けしています。連載2回目となる今回は、初見では分かりづらい「デジタルマーケティング用語」を解説します。
毎年、新たにWebマーケティング担当者になる方がいらっしゃいますが、多くの方が最初につまずくのが「言葉の壁」です。この世界にはなにしろたくさん用語があるのです。
例えば、はじめて広告代理店とのMTGに参加した際、専門用語ばかり出てきて、結局どんな話題が話されているのか半分もわからなかったことはありませんか?
また、社内で経営者や上司とのMTGに参加した際、聞き慣れない言葉が飛び交っていて、発言もおろそかなまま終わってグッタリしてしまった苦い経験をお持ちかもしれません。
そこで今回は、新人Webマーケティング担当者にとって「これだけはおさえたい」というデジタルマーケティングに関する言葉を10個ピックアップして「超訳」の形で紹介します。これらをしっかりマスターして、新しく携わる仕事をスマートに乗り切りましょう。
はじめに頭に留めておいてほしいことがあります。デジタルマーケティングは「経営にじかに結びついている」ということです。そのため、経営者や上司が語る言葉をよく理解しないままで担当していると、どこかで必ず認識の食い違いが起きることになります。
そうならないために、まず経営者やマネージャーがよく使う言葉のうち、デジタルマーケティングと特に関わりの深い5つの言葉は覚えてしまいましょう。
KGIとはKey Goal Indicator、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。言い換えると「何をもって成功とするか?」を決める指標になります。
最も一般的なKGIは「売上」です。社内の年度はじめの全員が集まるMTGで「今年の売上目標は○円!」と発表されることがあるはずです。それがKGIとなります。
KPIとはKey Perfomancel Indicator、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。言い換えると「目標達成のために注力するべき指標」になります。
例えばKGIを「売上」としたとします。その売上を達成するためには?と考えたとき、売上がどんな要素によって構成されているのかを分解して考える必要があります。ちょうど中学校で学んだ因数分解のようなプロセスです。ここではシンプルに
と考えるとしましょう。売上を上げるには「訪問数」「コンバージョン率」「購入単価」のいずれか、あるいはすべての指標が重要になるのは明白ですよね。これらの指標のことをKPIと定め、売上目標を達成するため管理していくわけです。
KGIとKPIでは、Web広告でもWeb分析でも、KPIのほうがよく聞く機会が多いと思います。ただ、KPIがKGIを達成するための指標であることを理解しておくことが大切です。もしも経営者や上司が、KGIを現場にはっきり示さないままKPIその他についての話をはじめたら、KGIが何なのかを逆に質問するとよいでしょう。
CVとはConversion、日本語に置き換える言葉がなく、そのまま「コンバージョン」と言います。デジタルマーケティングの世界では「お金に換算できるユーザー行動」を指します。
先にデジタルマーケティングは経営に結びついていると述べましたが、このコンバージョンは「お金に換算できる」指標のため、きわめて重要な意味を持っています。
例えば、eコマースサイトで商品の購入が完了したページにユーザーが到達したとき、売上が発生することになります。これをコンバージョンとして、購入完了数と売上金額を計測します。
B to B ビジネスなどでは、売上が発生する契約の成立がオンラインで完結しないケースもあります。そういう場合、まずは資料請求やお問い合わせフォームの完了ページをコンバージョンとして計測します。お問い合わせしたユーザーが成約にいたる割合(=成約率)から、みなしのコンバージョン数と売上金額を算出することもあります。
また、オフラインのデータをオンラインに取り込める技術も進化してきています。
参考) コンバージョンをSaleforceからインポートする 詳細はこちら
CVはその定義はもちろんのこと、計測方法もとても大事です。Web広告の媒体、Web分析ツール、社内の基幹システムで記録されるCVは、それぞれのツールの設計思想や視座が反映されるため、厳密には同じ値にはならないからです。
同じCVという言葉を使っていても、違うものが見えていては議論が噛み合うはずもありません。
経営者や上司からもしもCVについて話題が出たとき、あなたがよく知らなければ、何をCVにしていて、どう計測しているのかを聞いてみましょう。そういう小さな溝を放置せず、認識を合わせる癖をつけることが大切です。
ROIとはReturn On Investment、日本語では「投資対効果」と訳されます。一言でいえば「いくら使って、いくら儲かったか?」を示す指標になります。経営者であれば、自社の活動で起きるあらゆることにこのROIの尺度を持って判断しているといっても過言ではありません。
ROIは次のような式で算出されています。
計算式からわかるように、投資によって得られた利益額は投資額を上回っていることが重要です。投資によって利益額を増やすサイクルが回れば、企業は成長を続けていけると考えられるからです。
逆に投資額が利益額を上回ることは、単純に言ってしまえば「赤字」ということです。「いくら使って、いくら儲かったか?」のバランスを把握することは、企業が活動を続ける上で大切なのです。
5. ROAS(Return On Advertising Spend)はかけた広告費に対して生み出した売上のバランス
ROASとはReturn On Advertising Spend、日本語では「広告費用対効果」と訳されます。「ロアス」という言い方をすることもあります。ROIとよく似ているのですが、ROIよりも短期間で可視化しやすいため、Web広告運用の現場ではよく使われています。
ROASが例えば400%のとき「かけたコストの4倍の売上を生み出した」と考えることができます。ただ、ROIのときは「利益額」でしたが、ROASでは「売上額」であることに注意しておきましょう。
ここからはWeb広告でよく使われる言葉を紹介します。Web広告の代表選手といえば、最初に挙がるのはやはりリスティング広告でしょう。リスティング広告の用語を基本としてしっかりおさえておくことで、後々必ず応用が効きます。
ネット広告の代理店担当者のなかには、これらの言葉が身体に染み付きすぎているため、相手も知っている前提で説明なしに話を進めようとする方がいると聞きます。そんなときに言葉を知っておくと、困らずに済むはずです。
また、経営者や上司のなかにも「過去にリスティング広告をやったことがある」という人がいるでしょう。リスティング広告は常に進化を続けていますが、基本中の基本となる用語を、近年のアップデートを反映させながら紹介していきます。
6. インプレッション(Impression)とは広告が表示された回数
Impressionは日本語でそのまま「インプレッション」、もしくは「表示回数」と訳されます。文字通り、広告が表示された回数になります。
関連して1つ知っておきたいのは、インプレッションシェアという概念です。
例えば、広告が100回表示される機会があったとして、自社の広告が30回表示されているとしたら、自社のインプレッションシェアは30%です。
つまり、残りの70%は競合するほかのサイトが表示されていて、自社は表示されていないということを示しています。つまり、機会損失があると考えられます。
ある広告を強化したいと考えたとき、まずインプレッションシェアを確認することを覚えておきましょう。その数値で伸びしろがわかるからです。
ここでは詳述しませんが、インプレッションの機会を増やすには「お金を積む」か「質を上げる」のいずれかの選択があることも知っておくと役立ちます。
7. CPC(Cost per Click)はクリックにかかる費用のこと
CPCとはCost per Click、日本語では「クリック単価」と訳されます。
表示された広告をユーザーがクリックしてはじめて集客が実現します。業種やキーワードや状況によってこの単価はさまざまです。低ければ1クリック1桁円で集客が可能ですが、なかには1クリック数万円ときわめて高額になるケースもあります。
上限クリック単価といって、広告運用者が自分で「上限はここまで」と設定できます。
しかし近年では、機械が入札をサポートする機能が進化しています。
広告の表示される機会が起こるたび、数百・数千万のシグナルの組み合わせをもとにユーザーの見込み度合いを算出して、目標にかなうように入札価格を調整する。このような短時間で大量データを処理して細かな調整を行う、自動入札の利用が進んでいるのです。
クリック単価はすべてをコントロールしようとせずに、テクノロジーの恩恵を得られるような活用を行うほうがメリットが大きいことを頭に留めておくとよいでしょう。
8.CTR(Click Thorugh Rate)とは表示された広告がどれだけクリックされたか
CTRとはClick Thorugh Rate、日本語では「クリック率」と訳されます。
表示された広告がクリックされる割合です。CTRは広告がユーザーの目に触れ、クリックされるかどうかにかかっているイメージがつくでしょうか。
ユーザーは検索行為を行っている最中、結果に表示されている情報を瞬間で判断していると言われています。つまり、じっくり読んでいる人は少ないのです。
そのためじわじわ意味がわかるような抽象的な表現よりも、とことん具体的な表現であるほうがクリックされやすい傾向にあります。一瞬のうちにいかに自分ゴトしてもらえるかが勝負の鍵を握っていると言えるでしょう。
検索される言葉の気持ちをニーズに直接応えるような表現や「お申込みは今すぐ」といった、行動を促すフレーズを盛り込むことも効果的とされます。
9.CVR(Conversion Rate)とは生み出したクリックのうちどれだけがCVに結びついたか
CVRとはConversion Rate、日本語では「コンバージョン率」と訳されます。
広告によるクリックのうち、どれだけがCVに結びついたかを示す指標です。
Web広告の成果を考えるときよくあるのは「関係のないキーワードに広告が出てしまっているんじゃないか?」「キーワードと広告文とがマッチしていないんじゃないか?」など、広告側に問題があると考えがちです。
しかし少し考えればわかるように、広告をクリックした後でページに訪れたユーザーがCVにつながる行動を起こすかどうかは、大部分はページにかかっているとも言えます。
もしCVRが期待よりも低い場合、ページ側のユーザー体験を見直すことが大切です。
ユーザー体験とは、出稿しているキーワードを無理に詰め込むことではありません。ページの速度を上げたり、必要な情報をすぐに見つけられるようにするなど、広告にかぎらない本質的な改善を含んでいることを知っておきましょう。
10. CPA(Cost per Acquisition)とは1件のCV獲得にどれだけの金額がかかるか
CPAとはCost per Acquisition、日本語では「コンバージョン単価」と訳されますが、CPAのまま使われています。
この指標はとてもポピュラーでわかりやすいのですが、課題もあります。
特に日本では、Web広告を活用する企業も広告を運用する代理店もこのCPAという指標を重視しすぎた結果、デジタルマーケティングに対する投資が大きく偏ってしまった背景があります。
Web広告では「このお店でこの商品・サービスを購入するつもり」の”超顕在層”とでも呼ぶべきユーザーに対して広告を投資することで、CPAを低くおさえようとする傾向があります。
例えば、自社名やサービス名などの「指名買いキーワード」や、サイトに訪れたが商品を購入しなかったユーザーの再訪問を促す「リターゲティング」広告は、顕在の度合いは高いと考えられます。
しかし、広告の役割は、すでに買うつもりのユーザーを連れてくるだけではないはずです。むしろ、新たなユーザーに商品・サービスの魅力をよく知ってもらうために広告を活用する、つまり潜在層に向けた広告が有益なことも多いでしょう。
現場で指標がCPAに偏重しすぎていると感じたら、相手が経営者や上司であれ、広告代理店であれ、疑問を投げかけてみましょう。
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