この頁を訪れた方のなかには、「新規顧客獲得のため、ウェブからの問い合わせのため」と言われ、未経験のマーケティング業務を突然言い渡された方もいらっしゃるのではないでしょうか。中小企業において、マーケティング機能がある会社は未だに少なく、誰に聞いて良いか分からないとお悩みの方も少なくないと思います。
本Blogでは、「中小企業担当者が知っておくべきデジタルマーケティングの基礎」と題して、マーケティングの基本知識から、SEOの基礎、ウェブ広告の基礎などを連載でお届けしています。
マーケティングとは何か? 2つのベクトルがあることをおさえておきましょう。
1) は、比較的誰でもすんなり理解しやすいはずです。例えば広告を出しましょう、というとき、商品やサービスを知ってもらって、利用する人を増やしたいから行うことがほとんどでしょう。マーケティングというとき、広告・プロモーションがまず頭に浮かぶ方なら、だいたいこの意味をイメージするかもしれません。
しかし、マーケティングにはもう一つの2)の意味もあります。このベクトルの正しい理解のために、一つ言葉を引用させてください。ピーター・ドラッカーというオーストリア・ウィーンの有名な経営学者が、マーケティングについて次のように述べています。
“真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。…中略… マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。” (強調引用者、『【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則 P.F.ドラッカー』)
ドラッカー氏が述べるように、マーケティングには、顧客の気持ちやニーズを汲み取って、商品やサービスを改良するという役割があるのです。
実際、マーケティングを1)の意味だけで捉えてしまうと、その活動はきわめて限定的で、かつ無機質なものになってしまいがちです。
自社でマーケティングに取り組もうとするとき、1)と2)の両面がマーケティングである、と位置付けて活動を行っていくようにしましょう。
マーケティングを簡単に定義した上で、デジタルマーケティングの特徴について見ていきます。デジタルマーケティングとは、文字どおりデジタルを活用したマーケティング活動の総称です。
前提として知っておくべきなのは「デジタルの世界は、私たちの日常生活の隅々まで浸透している」ということです。
例えば私たちは、毎日スマートフォンやタブレット、デスクトップPCを通じてWebサイトやアプリにアクセスしています。
検索エンジンで探しものをする、SNSで知人と会話したり情報収集したりする、ニュースやブログ、Q&Aサイトをチェックする、買い物をしたり、旅行の予約をしたり、次に住みたいマンションを探すこともWebサイトがきっかけになっています。
自分の、もしくは周囲でデジタルを使っている方の行動を思い返してみてください。普通に暮らしていて、触れない日が少ない、という人も多いかもしれません。「スマホ断ち」や「SNS断ち」という言葉が生まれるのは、この圧倒的な普及が背景にあると考えられます。
そんなデジタルの世界のマーケティングの大きな特徴を4つ挙げます。
デジタルマーケティングの強みは、まず何といっても「計測できる」ということです。
計測方法や定義など、さまざまな問題はあるにはあります。しかしながら、この価値はきわめて大きいと考えられます。
例えば、リスティング広告に代表されるWeb広告では、いつ、どの広告が何回表示・クリックされ、成果に結びついたのかがわかる環境が容易に整います。現在はこれを当たり前のように考えられていますが、デジタル以前の広告では難しかった仕組みです。
計測されたデータを読むことで、顧客のニーズや気持ちに近づくことができます。
顧客が自社のWebサイトでどんな動きをしているのか。どのページがきっかけとなって期待している行動を起こしているか、逆にどのページがボトルネックになってWebサイトを離脱してしまうのか。デジタルのデータが記録されているために「データを読める」のです。これもデジタルマーケティングの大きな特徴です。デジタルを活用するマーケティング担当者にとって、検索する言葉から顧客のニーズや気持ちを読み解くことは一般的になっています。
そして、忘れてはならないのは「変えられる」ということ。記録されたデータを読んで顧客のニーズや気持ちを把握できたら、自社のWebサイトに現状欠けているもの、言い回しを変更したほうがよいものがわかるはずです。例えば紙メディアであれば、出版された書籍の内容を変更するのは容易ではありません。
しかし、Webの世界ならばその修正は難しいものではありません。冒頭に述べたマーケティングの2)の意味「顧客を理解し、商品やサービス自体や提案方法を変えて売れるしくみを作ること」を行うのに、デジタルは最もハードルが低いと言えるでしょう。
最後に、日々速いスピードで進化する現在のデジタル広告には、私たち人間だけではとても捉えられないような大量で複雑なデータを、AI(人工知能)が高度に処理する機能が整備されてきています。冒頭に述べたマーケティングの1)の意味「商品やサービスの販売、利用を促進すること」の効率化をはかったり、自動で大きな成果を挙げることができたりします。
このような「テクノロジーの恩恵」を最前線で受けられるのも、デジタルマーケティングならではの特徴です。
企業がマーケティング活動を行う上で、デジタルマーケティングは扱いやすく、有益であることがお分かりいただけたでしょうか。企業を継続的に成長させる上で、デジタルマーケティングは欠かせない存在です。
タイトルのとおりですが、この連載記事は中小企業の担当者に読まれることを想定しています。中小企業、と一口にいっても企業規模やビジネスモデル、事業のステージなどはさまざまでしょうが、デジタルを使ったマーケティングを考える上で、いわゆる一般的な大企業よりも「アドバンテージがある」ことがあります。
それは「業務が分断されすぎていない」ということです。仮に分断があったとしても大企業ほど深刻ではない、という言い方をしてもよいかもしれません。
企業が大きくなる過程で、組織はさまざまな形で分化していきます。例えば、事業部が分かれ、事業部ごとに管理、商品開発、営業、マーケティング、顧客サポートなど、各々の業務が定義され、スタッフは役割のなかで業務を遂行するようになります。
しかし、このように分断された大企業の組織においては、マーケティングを行おうとする際、実は乗り越えなければならない壁があります。
特定の商品やサービスの販売や利用を促進することだけならば、さほどの困難はないかもしれません。
しかし、マーケティングのもう一つの役割「商品やサービスを、顧客のニーズや気持ちに合わせ、ほしいと思ってもらえるように変えること」は、分断されたさまざまな業務をまたがって検討せざるを得ないからです。分断されたことで距離が遠いことが影響して、動きが遅くなってしまいがちであるようです。
事業部が異なるとか、分断されていることは企業側の事情であり、商品やサービスを使っていただいている顧客にとっては関係のないことです。顧客のニーズや気持ちに応えることを真剣に考える大企業は、マーケティング活動を行うに際し、組織を横断するようなプロジェクトを作って取り組むケースが増えています。
中小企業の組織ではいかがでしょうか。
これを読んでいる方は、複数の業務にまたがって仕事をしていることと想像します。もっとじっくり一つのことを集中してやれるほうがいいのにな…と思っている方もいるかもしれません。
しかし、実はこのような明確に分断されていない小規模の組織のほうが「商品やサービスを、顧客のニーズや気持ちに合わせ、ほしいと思ってもらえるように変えること」に対してすばやく動けるのです。
逆にいえば、大企業では動きが遅くなりがちなこのアドバンテージを、活かさない手はありません。ぜひ今日から、デジタルを使ったマーケティングを社内ではじめていきましょう。これからの連載で、中小企業がデジタルマーケティングを行う方法を、わかりやすくお伝えしていきます。
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------
合わせて読みたい!
シリーズ:中小企業担当者が知っておくべき デジタルマーケティングの基礎
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------