セールスフォース・ドットコムのカスタマーサクセス、リージョナルディレクターのジェームズ・ジョンソンのセッションを通じて、さまざまなベストプラクティスから導き出された効果的なUXデザインについて最新情報を紹介します。
ジョンソンは開口一番「重要なのは、常にテストすること」だと断言。つまり、常にテストをして、お客さまのニーズを理解することがUXデザインを考えるときにもっとも重要だと説明します。
「これは、世界中のCommerce Cloudを採用されているお客さまの事例から、常に学んでいる私たちだからこそ断言できることです。そして、もう1つ大事なのは“ベストプラクティスは単一ではない”ということ。事例によって解はさまざま。常に自分のお客さまにとって必要なものは何か、顧客体験とは何かを考えながら、有益なものを取り入れてください」とスタートしました。
ある自動車リース会社のサイトがあります。とてもエネルギッシュなデザインですが、「これは見る人を選ぶデザインだ」とジョンソンは言います。「まず経営者がこのようなビジュアルで表に出るべきではないし、またモバイルに適応できないような技術を使うのも問題」と厳しく言及。こうしたサイトの場合は、ゼロから考え直した方がよいとも。
では、ベストとは何か?確実なのは“進化的”なアプローチをすること。言い換えれば、デザインを“少しずつ改善していく”ということです。そして実施には、常に一貫性を持つことも忘れてはいけません。
デザイン変更をする際には、まず“テスト”が必須です。テストをすることによって、お客さまの意図することを理解し、調査結果やデータをもとに、お客さまが何を重要視しているかを洗い出します。たとえば、「商品が見つかりにくい」「ストアとの関係がわかりにくい」など。そして、その意図に対して明確にデザインが応えられているかどうかをシンプルに考えます。“良い点は、残す”という決断も重要。コンバージョン率がよければ、そのパーツは残す。お客さまが探しやすければナビゲーションも十分と考えてよいでしょう。
具体的な改善方法は、以下のような非常にシンプルなアプローチを繰り返し行うことがもっとも大切だと言います。
では、優れたUXデザインとは?具体的なポイントを紹介しましょう。トップページに関しては、お客さまの好みやアクションを考えながら、余白を残さずスペースを最大限活かすこと。また、一般的に10〜11%がページの最後までスクロールして下まで見てくれるので、そこにSNSのレコメンデーションを置くことも大事だとジョンソンは言います。
ecoのインターナショナルサイトの例では、モバイルの方がスクロールするお客様が多いとわかります。大事なのはデスクトップとモバイルではデザインは異なること。そして、常にモバイルファーストでデザインすることが基本だということです。
検索関連のクリック率のデータからは、デスクトップでもモバイルでも同様の効果があり、「カテゴリーメニュー」は「検索ボックス」より、およそ3倍利用されているとわかります。検索をするお客さまのコンバージョン率が高いことは調査結果からも明らかで、「サイト検索の重要性は知っておくべきだ」とジョンソン。またモバイル利用者にとって、検索という行為はより身近なものになっています。実は、サイト検索をするお客さまは、しないお客さまの3〜5倍のコンバージョン率を維持し、事例によっては20倍差というケースもあります。
この事例の場合、ヒートマップは「カラー」がもっとも見られていると示しています。反対に「価格」は、それほど見られていない。そうであれば、この商品にとっては「価格」より「カラー」の方がお客さまにとって重要な情報なので、「カラー」をより見やすい場所に移動するという改善が必要です。
また、商品のページネーションをどう見せるかという課題で、ユニークなのは、「もっと見る」というナビゲーションの方が「ページネーション」より、お客さまにはわかりやすいというということ。ページネーションの方が親切に見えるかもしれませんが、実はお客さまにとっては負担をかける表示方法で、「もっと見る」という単純明快な言葉の方が、誰が見ても理解できるよい表現なのです。
表示する商品数においては、世界的にはデスクトップの場合、3カラムにするとカート投入率が33%向上するというデータがあります。ただし、日本ではスクエアに並べたいというデザイン嗜好からか4カラムが人気。モバイルの場合は、2カラムがベスト。カート投入率が37%上昇するという結果が出ています。
ここで特筆すべきは、“バッジ”だとジョンソン。「Sale」「New」というバッジによって商品価値がお客さまにとってはわかりやすいから。お客さまは常に、「新しいもの」「キラキラしたもの」はどれかと探していいます。これは店舗でもオンラインでも同じです。
モバイル利用者が年々増える傾向にある日本において、モバイルデバイスでの個人情報の入力のしやすさはコンバージョンに大きな影響を与えます。ちょっとした入力のしにくさや、わずらわしさが“いよいよチェックアウト!”という段階まで来たお客さまの、購入意欲をくじけさせてしまうのは非常にもったいない。
世界でも、住所入力は大きな課題になっています。いよいよ住所入力という段階の14%が住所の入力ミスをおかし、再入力を求められて離脱するのが11%、再入力後さらに入力のやり直しを求められて購入を辞めるのが46%、なんとほぼ半分。住所の自動入力を提供することによって向上するコンバージョン率は4.8%ですが、こうした“使いにくさ”から生まれる事実はやはり無視できません。
モバイルの場合、入力するものが電話番号など数字だけであれば、自動的に数字のキーボードが表示されるようにするなどのちょっとした配慮も大切です。とてもシンプルですが、それが大きな改善につながります。
つまり「お客さまがやりにくいと感じていること」の改善を、小さくても積み上げていくことが、シンプルではありますが非常に重要なことなのです。そのためにも、テストを実施して、お客さまが何を問題視しているのかを洗い出すことが不可欠。
「もう一度、言います。重要なのは、常にテストをし、お客さまを理解することなのです」と、最後にジョンソンはあらためてまとめました。