金融商品という性質上、銀行の差別化は、非常に難しい。さらに人口減少による地方経済の失速により、地方銀行における貸し出し金額は減少傾向にある。こういった状況下のなかで、デジタルマーケティングを積極的に推進して、県外からも新たなファンを獲得し、話題になっている銀行が琉球銀行だ。今回は琉球銀行のデジタル施策と、同行が利用しているマーケティングオートメーションツール「Salesforce Marketing Cloud」について紹介する。

琉球銀行の積極的なデジタルマーケティング

琉球銀行は、デジタルマーケティングに力を入れている銀行の1つである。ホームページはもちろん、Facebook、Twitter、ポータルアプリなど、幅広いメディアを舞台としてプロモーション施策を実施してきた。

AR(拡張現実)で頭取があいさつをしたり、バーチャルアイドルのようなキャラクターを登場させたりと、「堅苦しい」と思われがちな金融業界において型破りなプロモーションを次々実施しているのだ。(動画は琉球銀行公式チャンネルより)

中でも着目したいのが、公式の「琉球銀行ファンサイト」の存在である。その背景にあるのが、顧客との関係性を重視する琉球銀行の強い思いである。

「知らない人」から「ファン」、「ファン」から「ともだち」、「ともだち」から「親友」へと、顧客との関係を強めていきたい。そうすれば、いわゆる営業マンがいらなくなるほど、琉球銀行を宣伝してくれるに違いない。これが、琉球銀行のデジタルマーケティングの狙いだ。

デジタルマーケティングとSocial Studio

琉球銀行は幅広くマーケティング施策を実施している。その施策管理を可能にしているのが、Salesforceのマーケティングオートメーション「Salesforce Marketing Cloud」の存在である。特に、Marketing Cloudの機能の1つであるSocial Studioがあれば、自社のブランド・製品などに対するオンライン上の会話をすべて集積しリアルタイムで対応できる。

全てのソーシャルメディアを管理して、複数メディアに渡って横断するマーケティング戦略を実施することも可能だ。特定の反応を示した顧客に特定の広告を配信することで、その顧客との距離をソーシャル上で縮めることが可能となった。

琉球銀行では、2人でTwitterを監視し、広告配信戦略を管理している。オートメーションによって、少人数で効果の高い施策を打ち出すことが十分に可能となるのだ。積極的なデジタルマーケティング戦略を打ち出している琉球銀行にとって、Marketing Cloud、特にSocial Studioはなくてはならない存在といえるだろう。

個別キャンペーンという「点」をつなげるMarketing Cloud

Marketing Cloudは、ただSNSやホームページにおけるキャンペーンや広告の自動配信を可能にするだけではない。各キャンペーンという「点」をつなげて「線」にするのが、Marketing Cloudの真髄である。

例えば、琉球銀行ではATMで宝くじを販売しており、そのキャンペーンを公式ファンサイト上で打っている。他にも、アプリをダウンロードすることで参加可能になるキャンペーンもある。これらのキャンペーンの目的は、メールアドレスを取得することである。Marketing Cloudで顧客データを保持するためには、メールアドレスがキーとなるからだ。

メールアドレスを取得できると、その顧客のオンライン行動を軸に、SNS・メールなどさまざまなチャネルからキャンペーンを配信することができる。つまり、各キャンペーンが、Marketing Cloudの中で顧客データに応じた形で結びつけられ、「線」となるのである。

もちろん、デジタルマーケティングで集積されたデータを、各支店というリアルチャネルのタッチポイントで生かすことも可能となる。あるキャンペーンがきっかけで来店した顧客に応対する際、そのデータを従業員がMarketing Cloudで確認することで、その顧客のニーズにジャストフィットする商品の紹介などが可能となるのだ。

金融業界におけるMarketing Cloudの可能性

このように、Marketing Cloudの役割は主に2つに分かれる。マーケティング施策の方法論の可能性の拡大と、マーケティング担当者と営業担当者、本店と支店などのスムーズな連携である。

デジタルマーケティングという言葉が先走り、リアル店舗との連携がうまく行かない金融機関にとっては、Marketing Cloudの導入は飛躍のきっかけとなる。もちろん、金融業界以外でもMarketing Cloudは力を発揮してくれるはずだ。