あらゆるカスタマージャーニーのシーンで、優れた顧客体験を実現するにはどうすればよいのでしょうか。B2C CRMのビジョンとしてSalesforceが提案するのが「CRM+AI+DMP」にほかなりません。マーケティングにAIを活用する強みやData Management Platformが実現できることなど、本講演では新たなデジタルマーケティングの世界を紹介しました。

マーケティングの主戦場は「顧客体験の改革」にある

写真:マーケティング本部 マーケティングディレクター 加藤希尊(左) 、Salesforce DMP ディレクター 松本英人(右)

登壇した株式会社セールスフォース・ドットコム マーケティング本部 マーケティングディレクター 加藤希尊は、まず2014年6月にMarketing Cloudが日本に導入されてからの3年間の歴史を振り返りつつ、今後の展開に話を進めます。その中で加藤が言及したのがSalesforceで行った、日本を含む世界11か国のマーケター3500人を対象にした調査結果でした。この調査では、回答者を3つのグループに分類。マーケティングの投資に対して、成果を得られていないと感じるローパフォーマーと、成果を得られていると感じるハイパフォーマーの回答を比較し、成果を出すために必要な要因を分析しています。

調査結果に基づき、加藤は「“顧客体験の改革”が今日のマーケティングの主戦場である」と強調しました。成果を出している企業は顧客に意識を向け、どのように顧客体験を想像するかが大切だと言うのです。また具体的にどのようなことを顧客体験で意識すべきかということに対しては、すべての顧客接点において一貫した体験を提供すること、さらにBtoC、BtoB企業ともに企業からのコミュニケーションがパーソナライズされたものでなければ顧客はブランドスイッチする可能性があるというのです。

またパーソナライズしたメッセージに関連して、加藤はマーケティングにおけるAIの活用度についても調査結果を紹介しました。ローパフォーマーの2.7倍のハイパフォーマーがなんらかの形でAIを活用しているのです。

しかも、このAI活用には2つの方向性があると言います。

1つは「効率性の改善」を目指すもの。この調査結果では、どのようなAIの利用方法があるかという問いに対して、

  • マーケティングの生産性向上(59%)
  • キャンペーン分析(59%)
  • デジタルアセット(バナーやテキストなど)の管理(59%)
  • データとシステムをまたいだビジネスインサイト(59%)
  • リードスコアリング(57%)  

といった傾向でした。

そしてもう1つは「パーソナライゼーション」への利用法です。

加藤はここではより高度なパーソナライゼーション(ハイパーパーソナライゼーション)と呼び、調査結果から、世界的には次のような活用意向があることを示唆しました。

  • コンテンツの高度なパーソナライゼーション(61%)
  • ダイナミックランディングページ(Webページ)での利用(61%)
  • 適切なメッセージを適切なチャネルやタイミングで配信(59%)
  • データとシステムをまたいだビジネスインサイト(61%)
  • 商品レコメンの高度なパーソナライゼーション(60%)
  • プログラマティック広告とメディアバイイング(60%)
  • ジャーニーの予測(60%)
  • カスタマーセグメンテーション/Lookalikeモデリング(58%)
  • 感情分析

などといった傾向でした。Lookalikeモデリングとは、AIを使ってパーソナライズ化すると、たとえ100万件の顧客リストを持っていても、ターゲットとなるパイが縮小してきます。そのため、例えばAIを用いて既存顧客と似た層をメディアの持っている層とかけあわせて、潜在顧客層を見つけ出していく作業をこのように呼びます。

Data Management PlatformとCustomer Data Platform

続いて行われたのは、新しいB2C CRMの方向性や、Data Management Platformである「Salesforce DMP」のデモを交えた紹介です。登壇したのは、株式会社セールスフォース・ドットコムSalesforce DMP ディレクター、松本英人です。

Salesforce DMPはデジタルマーケティングすべてのステップでインテリジェンスを提供できるソリューション。「プランニング」→「アクティベーション」→「パーソナライゼーション」→「オプティマイゼーション」→「インサイト」のすべてのステップを網羅します。

松本はDMPを構成する大きな3つの要素には「データ収集&蓄積」「1人ひとりのユーザーへ関連データを集約」「オーディエンスをセグメント」を挙げ、さらに「顧客設定に関わるあらゆるデータを収集し、ユーザー単位で行われたエンゲージメントを統合、得られた気づきをもとにオーディエンスをセグメントする」とSalesforce DMPの特徴を説明しました。

実際に、Salesforce DMPを活用し成果をあげている企業も少なくありません。ビールブランドで有名な「ハイネケン」では、Salesforce DMPを活用することで、特定可能なすべての市場シェアを把握。その市場でメディアとの連携キャンペーンを実施することでリーチ率を25%改善していると言います。

また、自動車メーカーの「SUBARUオーストラリア」では、Salesforce DMPを通じて、顧客がメディアに接触してから試乗するまでのカスタマージャーニーすべてを正確に把握。メディアの接触の履歴、サイトの来訪、どれだけ試乗したかなどをつぶさに知ることができるようになりました。また、スバルのマーケターが一番知りたい「試乗予約がどれだけ発生し、ドライブ体験を通じて新車購入につながっているか」といった指標についてもインサイトレポートが提供され、最終的に広告への費用対効果、投資対効果が15%向上しています。

また、松本はSalesforce DMPがすでに把握できている顧客に対しての管理、育成をする「Intelligent Customer Success Platform」と連携するメリットにも言及。両ソリューションを活用することで「まだ把握できていない無数の顧客、未知の見込み客に対してのアプローチを包括的に実現する“Customer Data Platform”に進化する」としました。

ロレアル社が活用するCustomer Data Platform

松本はさらにロレアル社の事例をライブデモとして取り上げました。顧客体験としては、ロレアル社のメイクアップアプリ、コスメ情報サイト、ECサイトの裏でSalesforce DMPが連携した様子を紹介。その上で一連の顧客体験がマーケターの側からどのように見え、データを活用できるかを解説したのです。

まずデモで行われたのは情報を届けたいターゲットを絞り込みでした。ターゲットは、自社のデータを集約した「ファーストパーティ」、Salesforce DMPの導入企業同士がデータを交換できる「セカンドパーティ」、外部のさまざまなデータソースから集められた「サードパーティ」という3つのデータソースを利用することができます。

松本は「ファーストパーティ」から、同社のメイクアップアプリを使っているユーザーを選択。さらに「直近14日間で、コスメ情報サイトにあるアイシャドウのコンテンツを見たことがある人」といったように条件を絞ります。カスタマーセンターで問い合わせが発生している相手はもちろん除外することも可能です。この段階でアクセス可能なデバイスは99万。「もう少しターゲットを増やしたいとのであれば“オペレーションを増やす”をクリックし、サードパーティのデータソースから「クレジットの与信がある」「健康的な女性」「母親」のカテゴリを追加するだけで簡単に増やせます」と手軽かつ的確なターゲットの絞り込みを紹介したのです。

注目の新機能はAIの活用

中でも松本が注力したのは、Einsteinの新機能2点の紹介でした。1つはあらゆるタッチポイントから取得したデータ属性をもとに、共通項を持っているユーザーを図示する「Einstein Segmentation」です。この機能では、画面上ではオーディエンスの塊が表示され、共通項目を持つターゲットが浮かびあがります。「これにより、これまでの“取得した膨大なデータをデータサイエンティストが分析する”といったプロセスなしに、ワンクリックでそれぞれの属性をリストアップし、リーチすべきターゲットを作成することができます」と説明します。

もう1つの機能は、SUBARUオーストラリアの例でも紹介した「Einstein Insight Report」です。会場では、松本の操作に合わせ、ある商品が購入されるまでに至ったカスタマージャーニー4,800万通りの組み合わせの中から、どのようなジャーニーがコンバージョンに寄与したか、簡単にリストが作成される様子が紹介されました。

また、ターゲットを設定した後の広告設定に関しても、広告がwebサイト、メールなどのチャネルでパーソナライズされた形でユーザーに配信され、顧客体験向上に活かさる様子を実施しデモを終了しました。

最後に再び登壇した加藤は、Salesforceの考え方はマーケティングの基本であるとし、「適切なメッセージやコンテンツを、適切なチャネルを使って、適切なタイミングで、適切なターゲットに届ける」ことを高度に実現すると強調し、ユーザーに最適な素晴らしい顧客体験の提供を約束しました。

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