日頃の感謝を込めて、Pardotを導入して成果をあげているお客様向けに Customer Trailblazer Party を開催いたしました。当日は60名を超えるお客様にご参加いただき、そのうち10社をPardotの先進的事例としてご紹介・記念の盾を授与させていただきました。

この日は、Pardotをさらに活用するヒントとして、インタラクティブなセッションもご用意しました。日本のBtoBマーケティングにおける草分けであるシンフォニーマーケティングの庭山一郎様、現在に至るまで約450社ものPardot導入を支援いただいているtoBeマーケティング小池智和様、当社マーケティングディレクター田崎純一郎の3名でパネルディスカッションを開催いたしました。

今回はその模様をダイジェストでお届けします。

写真:シンフォニーマーケティング 庭山様(真ん中)、toBeマーケティング小池様(右)、Salesforce 田崎(左)

庭山氏:みなさん、こんにちは。シンフォニーマーケティングの庭山ともうします。BtoBマーケティング専門の会社をやっておりまして、社歴は長くてもう27年になります。BtoBのことは詳しいのでぜひ聞いてください。

小池氏:ここ2年間でPardot導入を450社。さらにセミナーなどでも皆様に幾度もお会いしているのですが、実は多くのネタは庭山さんからいただいております(笑)。7-8年前、BtoBマーケティングがメジャーになる前から、庭山さん中心に行っている勉強会などに参加させていただいておりました。ですが、お仕事は今回が初めてです。今日は楽しみにしております。

田崎:では早速パネルディスカッションに移りましょう。最近の庭山氏の著作である「究極のBtoBマーケティングABM」。ABMは流行り言葉でもありますが、一体どういう意味なのでしょうか。

庭山氏:私たちは主にBtoB企業のマーケティング部門からご依頼を受けて、仕事をしています。本日ご出席された方のほとんどが経験されているかと思いますが、マーケティングが展示会などでリードを獲得するのは比較的うまくいくものです。

でも、マーケティングが渡したこのリードを営業がさっぱり追ってくれないということが起こります。中には、営業さんに「名刺コピーを取らせてください」といっても、「俺の名刺に何をするんだ?俺のお客に勝手にメールを送らないでくれ」と言われてしまうということもあり、営業とマーケティングの溝が生まれています。

これはある種、学習曲線であり、必ず通る道です。でも出来るだけこういう辛い状況は早めに駆け抜けたいというのが心情のはず。その最良の方法がABMなのです。端的にいうと、「営業目線でマーケティングをやろう」ということです。

マーケティングが「この案件を追ってください」とするのではなく、最初に営業と「どの会社に行きたいか?」「どの部署に行きたいのか?」「どの役職に会いたいのか?」を合意しておくのです。

SAL(Sales Accepted Lead) というものがあり、これは営業が受け入れたリードを指しますが、10年前はアメリカでも10-30%程度でした。しかし最近では50-60%になっています。私の知る例でABMを使ってSAL を上げた例は、最も高いもので90%。それぐらい破壊力があるマーケティングなのです。正直この状況下で、日本でABMの本(詳細はこちら)を出版しても、ちょっと早いかなと思っていました。ですが、日本のお客様でABMを実施してもものすごい破壊力がある。これが本を出版した背景です。

田崎:庭山さんありがとうございます。では小池さん、Pardotと組み合わせてABMを推進されているかと思いますが、小池さんからもABMについてお話しをお願いいたします。

小池氏:私も庭山先生の本でABMを勉強させていただいております。私たちがPardotを推薦するひとつの理由が、なんといってもSalesforceと連携できることです。PardotのようなMA(マーケティングオートメーション)は対象が個人単位となっています。しかし、その方が所属しているのは企業です。Salesforceのレポートを使って、どのくらい自分たちの狙っている企業がカバーできているかと把握することができるのです。

田崎:ちなみに先日SalesforceもEinstein ABM(詳細はこちら)を発表しました。こちらも宜しければぜひチェックしてください。では、次のトピックに移ります。ABMは魅力的だと思いますが、すべてのBtoB企業がやらなければいけないものなのでしょうか。

庭山氏:全然やらなきゃいけないことではないです。アメリカのおそらく企業文化として、新しいものが出てきたら過去のやり方を否定するものなのです。デマンドジェネレーションとかスコアリングとか、そういったものは時代遅れだと言いたがるのです。ちょうど3年ほど前にインバウンドマーケティングが流行った時と同じ状況です。

私の認識で言えば、ABMは今までのマーケティングの延長線上にあるものだと思っています。今までのマーケティングとはデマンドジェネレーションのことです。ABMを行うには非常に精緻なデータマネジメントが必要です。企業の名寄せ、個人の名寄せ、企業と個人の紐付け、部署による検索可能を維持することが大事。

デマンドジェネレーションでうまくいっている企業はABMを入れなくてはいけないわけではないのですが、特に複数の製品ライン、サービスラインを持つ企業にABMは非常に有効です。

お得意様にはたくさん買っていただいているが、実はまだ一つか二つの商材しか入っていないというときに横軸で展開する。通常のマーケティングの場合は、担当営業と企業のトップ担当者、あるいは買っていただいている製品と導入部署という「点」での繋がりになります。これをABMは「面」でおさえられるのです。「ターゲット企業の売り上げを最大化する」には非常に有効な方法です。逆に、単品しかやっていないという会社の場合、ABMは必要ありません。実際、我々の会社もやっていないです。なぜならマーケティングサービス一つしか売るものがないためです。

小池氏:対象となっている中小企業でトップ経営者を押さえておけばいいということならABMは当てはまりませんが、対象が大企業で複数部門に渡る場合も当てはまるということですよね?

庭山氏:そうですね。大企業で、ある事業所には入っているけど、他の事業所に入っていない場合や、ある製品は採用されたけど、他の製品も採用されたいという時に非常に価値があります。

田崎:先ほどABMにおいてデータマネジメントが重要だと言及されていたと思うのですが、おそらく本日出席されている皆様は「データをきれいにするにはどうしたらいいの?」と悩まれているかと思います。データマネジメントに関して、何から取り組むべきかポイントがあれば、教えて下さい。

庭山氏:結論からいうと、やらないほうがいいと思います(笑)。なぜなら日本におけるデータマネジメントは圧倒的に難しいからです。理由は3つ。1つ目は我々の言語。アメリカ人やヨーロッパの人から見ると暗号です。カタカナ、ひらがな、漢字、アルファベット。こうゆう国はないのです。2つ目は、非常に厳しい個人情報保護法。最後に意思決定プロセスがボトムアップであること。つまり接触しなくてはならないターゲットの数が多い。

我々のお客様で、マーケティングを将来的には内製化したいので、2年間シンフォニーマーケティングに任せるというお客様がいました。そこでデータマネジメントのやり方を2年かけて教えていったんです。そして2年たったら、やり方は分かるけど、データマネジメントはあまりにもめんどくさいし、リスクが高いのでここだけはやってほしいと言われるのです。

一つだけ申し上げたいのは、いま世の中ではメールの誤配信がたくさんあります。犯人の80%はVlookupです。ですので、Excelでやるのだけは避けたほうがいいと思います。よって、データベースを使って名寄せされるのがいいかなと思います。

小池氏:庭山さんはデータベースの神様なので、データベースに関してはお話しされた通りかと思います。では、マーケティングオートメーション的になぜデータベースが大事かということをお話しします。

例えばメールを送って、開けたらこう、開けなかったらこう、このウェブサイトをクリックしたらこう、しなかったらこう…というようなシンプルな流れであれば、データベースの管理はいらないかもしれません。

ただしメールをクリックした方が、顧客ランクAならば、役職が部長以上ならば、既存顧客ならば、売上がいくら以上ならば、というように、シナリオはそういった属性データをいれるとより精緻になります。そして、引っかかる情報がそこになければ、そういうシナリオは動かないわけです。個人情報もそうですけど、その他付随する情報をどうするかが重要なわけです。

田崎:Pardotユーザーが次のステップに進むために、小池さんはどのあたりを意識されていますか?

小池氏:まずはやってみようというお客様が多くてありがたいことだと思っております。ですが、データマネジメントの観点では、重複もありますし、属性も入っていないというような不完全なことが多いのです。あとは顧客企業のお客様がどのように推移してやってくるかということもできていないことが多いので、我々としてはカスタマージャーニーのお手伝いも、もっとやっていきたいと思います。

田崎:Pardotを含めて MA(マーケティングオートメーション)が日本において広がっていますが、どういうことに気をつけて使っていけばよいと思いますか。

庭山氏:極端に言えば、MAっていうのはデマンドセンターのプラットフォームそのものだと思う。例えば単にメールを配信したいなら、別の選択肢もあるんです。なので、MAを使うなら営業さんに案件をつくって渡すということができないと意味がないのです。

我々のお客様にはどうしているかというと、1年目は目標値を営業さんに渡せる状況までもっていきましょうと設定します。MQL(Marketing Qualified Lead)といいますけども、インサイドセールスなどのチームがあり、月30件の受注商談を出す必要があるとすれば、アポ率が30%で100件の案件を渡しましょうと設定します。まず数と質ということをできるようにするのが1年目のゴールです。

2年目は、渡した案件を営業さんがどう評価したか?になります。これがSALで、営業さんがちゃんと電話して訪問して、Salesforceであれば案件としてきちんと評価された数というものを目標とします。

1年目と2年目としきい値を変えて進化させる、ここがキモです。ABMや、代理店をどう管理するかという Partner Relationship Management はその先にあるものです。

田崎:ちなみにMAとSFAは一緒に使ったほうがいいですよね(笑)?

庭山氏:新しくなったPardotを見たら、ちょっとショック受けるほど良かったですよね。ここに呼ばれたからお世辞を言っているわけではなく、おそらくSalesforceを正としているマーケティングオートメーションはこれだけなんですね。だからある種の理想的な運用ができる。SFAをSalesforceで使っているユーザーにとっては、そうだろうと思います。

田崎:ちなみに先ほどPRMという言葉がでましたけども、SalesforceもPRMを持っておりまして(詳細はこちら)、SFAとすごくシームレスな動きができます(笑)。さてここで、会場から質問を受け付けたいと思います。

会場Q:私たちは、営業とマーケティングは仲がいいのです。ただABMは複数事業を行なっている会社に向いているという話でしたが、実はその事業リーダーの間に溝があります。彼らにメリットを理解させる方法は何かないでしょうか?

庭山氏:事業部同士の仲が良くないというのは、日本ではすごく多いですね。方法としては、経営トップに言わせることです。売上を伸ばしたいのですよね?お客さんをグリップしたいのですよね?営業さんの足で伸ばすには限界だから、仕組みをいれたいのですよね?こういうことはトップに言わせるしかありません。こういう未来をもし見たかったら、全社戦略でやりましょうよ、と。

会場Q:ナーチャリングについて、お話をうかがいたいです。メールやコンテンツは見ている。でもなかなか顧客のモチベーションが上がらないというときに、MAだけで顧客の心は動かしていけるのでしょうか。もしくは営業さんの力がいるのでしょうか?

庭山氏:MAを買ってデマンドセンターを作るというのは、日本企業にとっては初めてのことですよね。今までやっていない。だから最初に絶対にやってはいけないことを私は決めています。それは、「営業の仕事を増やすこと」です。最初から営業に嫌われてしまったら身も蓋もないのです。

私のやり方としては、ナーチャリングとスコアリングの段階では、営業さんに負担はかけないです。営業から見たら、マーケティングは胡散臭い人間です。「あ、俺が行きたいと思った会社の部署の人だ」というリストを見るまでは信頼されないものです。

小池氏:折衷案みたいなものですけど、マーケティング部門でインサイドを抱えて、買っていないけどウェブサイトに訪れている人に対して、インサイドセールスがアプローチして営業にパスする会社もあります。

会場Q:今後3年後とか、ABMの先に考えられるものがあれば教えてください。

庭山氏:世界的にはPredictive(未来予測)が潮流となっています。でも私自身は信じていないです。というのも、20年前のCRMの時代から未来を予測しようよ、とずっとやってきたのです。そういう意味では今更感があります。私としては、デマンドセンターをきちんとつくったら、次にABMにいく、PRMにいくのが王道だろうと思っています。日本の場合は、パートナー(代理店)で売っていくモデルが多いからです。

小池氏:AIはどうですか?

庭山氏:古典的な昭和のマーケターなので、名寄せでは使いたいが、コンテンツやスコアリングでは負けないと思っています。いずれ将棋みたいになるかもしれない。そしたら引退します(笑)。