近年クラウド業界を中心に大きな注目を集めるようになった「カスタマーサクセス」というコンセプト。これをテーマにしたSalesforceユーザーグループの分科会(勉強会)が開催されました。今回はその概要をレポートします。
「カスタマーサクセス分科会」第1回となる今回は、まず発起人である株式会社Box Japanの西田 幸弘氏が登壇。なぜこの分科会を立ち上げたのか、そしてBoxではどのような取り組みを進めているのかが、自己紹介も兼ねる形で紹介されました。
「カスタマーサクセス分科会」発起人となった、株式会社Box Japanの西田 幸弘氏
「最近は『カスタマーサクセスをどのように行うのか』『自社でもやりたいがどうすればいいか?』という質問を聞く機会が増えています」と西田氏。今回の分科会立ち上げには、このような背景があると語ります。カスタマーサクセスというコンセプトは2000年にSalesforceが提唱し、日本法人でも2005年にこの言葉を冠した組織を立ち上げていますが、最近ではかなりメジャーなキーワードになっているのです。「例えばGoogleでは『Customer Success Manager』での検索数が急増しています。SaaSビジネスを展開する他の企業でも使うようになっており、GEにもこの名称のポジションがあります。またこの言葉が意味する守備範囲も、以前より拡大しているようです」。
カスタマーサクセスがこれほど重視されるようになった理由を理解するには、収益の観点でビジネスを俯瞰する必要があると西田氏。東京大学の馬田 隆明氏が2015年6月に公開したプレゼンテーションから下記のグラフを引用し、次のように述べます。
「まず着目したいのは、SaaSビジネスでは契約維持が極めて重要だということです。これに加えSaaSビジネスには、契約後もアップセル、クロスセルのチャンスがあり、ネガティブチャーン(契約更新だけではなくアップセルやクロスセルも実現すること)も、収益に大きな影響を与えます。カスタマーサクセスはこれらの両方に、大きな貢献を果たすものなのです」。
画像:西田氏プレゼンより抜粋
出典:馬田隆明氏 「カスタマーサポートのことは嫌いでもカスタマーサクセスは嫌いにならないでください」
(https://www.slideshare.net/takaumada/startup-customer-success-support)
それではBox では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。西田氏は、Boxにおけるカスタマーサクセスの組織が目指すゴールについて、「全てのお客様が、利用と活用における必要なガイダンスとリソースが提供され、利用価値を最大化できる状態であること」と述べた上で、Boxの共同創業者でCEOであるアーロン・レヴィ氏の「Adoption is the new ROI!」という言葉を紹介。導入(Implement)、定着(Adopt)、最適化(Optimize)、拡大(Grow)という一連の流れをCustomer Successという組織が支えており、導入~定着を支援するBoxコンサルティングや、サポートやメンテナンスを行うユーザーサービスといった機能も、この組織の中に置かれていると語ります。
またBox のCustomer Successの組織の一つであるCSM(カスタマサクセスマネジメント)は、大きく4つのキーワードを重視しているとも説明。それらの頭文字をまとめると「C.A.R.E.」になると言います。「C」は「Customer Satisfaction(顧客満足度の向上)」、「A」は「Adoption(利用率向上)」、「R」は「Retention(継続的な利用)」、「E」は「Expansion(利用の拡大)」です。
ここで西田氏は、Boxのカスタマーサクセスが抱える課題についても言及。カスタマーサクセスを理解するのは社内でもパートナーでも時間がかかること、急増する顧客への対応、Boxの機能は簡単に使える一方で、お客様の業務を変える(Change Management)が難しいことを、課題として挙げます。「特に急増する顧客への対応は大きな課題であり、CSMがどの様に顧客へフォーカスするかが重要になっています。そこでCMC(Community Marketing Community:コミュニティマーケティングに関するナレッジの言語化や共有等を行うコミュニティ)の会合にも参加し、顧客コミュニティの構築に取り組んでいますが、実際にどう進めて拡大をしていくのか悩んでいるところです」。
この後、西田氏以外の参加者も自己紹介。西田氏を含め、合計13名が参加していましたが、その多くはやはり、ソフトウェアの開発や販売を行う企業の方でした。
ここで出たコメントでわかったのは、顧客満足度をいかにして上げていくか、顧客をいかにして大切にするか、これを解約防止にどうつなげていくのか、少人数での対応や人材の採用をそのように行うのかという、共通の悩みを抱えているということです。
さらに続けて、セールスフォース・ドットコム カスタマーサクセス本部の北川 博一も登壇。Salesforceにおけるカスタマーサクセスの取り組みもあわせてご紹介いたしました(Salesforceにおける「カスタマーサクセス」については、第1回、第2回の記事をご覧ください)。今後もSalesforceのユーザー会において、カスタマーサクセスをテーマに展開される予定です。
株式会社セールスフォース・ドットコム
カスタマーサクセス本部 コマーシャルサクセス部 北川 博一
Salesforceの導入において、多くのユーザーの導入を支援してきたカスタマーサクセス本部による「定着化に必要なプロセス」をご紹介します。