日頃の努力が報われ、今年から新任マネージャーへの階段を上り、新しい仕事へのチャレンジに胸を躍らせる方も多いことでしょう。一方で、プレーヤー時代とは異なる責務をこなせるのかどうか、不安を抱えている方もいらっしゃるかも知れません。
プレーヤーからマネージャーへの転換は、キャリア人生のなかで最も難しいシフトのひとつであるといわれています。なぜそれほど難しいのでしょうか。また、マネージャーへの昇進の壁を乗り越え、チームを成功に導くためにはどうすればいいのでしょうか。
経営学でメジャーな「マネージャーの仕事」の定義では、マネージャーには「Getting things done through others = 他者を通じて物事を成し遂げること」が求められるとされています。マネージャーに上がる人々は、プレーヤーとして優秀な成績をおさめている方が大多数です。一方で、自分ができるがゆえに、マネージャーに上がった途端に「他人を通じて稼ぐ、他人に稼がせる」のは、時に歯がゆく感じることもあるでしょう。人を動かすことは、想像以上に難しいものです。また「others=他人」は、部下のみではなく、自分の上司や他部門も含まれます。チームを率いると同時に、上・横・斜めの人とも調整業務をこなし、組織として全体最適を目指さなければなりません。これも難しさに輪をかける原因となります。
2016年の産業能率大学による「第3回 上場企業の課長に関する実態調査」によると、99.1%がプレーヤーとして現場業務を兼任しており、純粋にマネジメントだけを行う企業がほぼないことがわかります。また同調査で、プレーヤーとしての業務がマネジメント業務に何らかの支障があるかをたずねたところ、“支障がある”が58.3%を占め、“支障はない”を上回っています。
前述の調査結果からも分かるとおり、今や管理のみを行うマネージャーはほぼいない状態です。東京大学 大学総合教育研究センター 准教授 中原淳氏は「プレマネ」バランスと呼んでいますが、プレーヤーの仕事とマネージャーの仕事のバランスを意識的に調整する必要があります。プレーヤーからマネージャーへとなりたての人は、まずはこの二つが性質の違う仕事だと認識して、バランスを取ることを意識しましょう。
マネージャー自身が本当に必要なプレーヤー業務のみに集中し、時間を最大限マネジメント業務にあてるためには、部下を成長させなければなりません。部下が成長しなければ、いつまで経っても自分のプレーヤーとしての仕事は減らず、マネジメントにかける時間がどんどん圧迫されていきます。部下の仕事のレベルを見極め、いつも通りの仕事だけでなく、ちょっと背伸びしなければ届かないタスクを割り振って成長を促しましょう。
その後、適切なタイミングを見計らってフィードバックの時間を取ることが重要です。その際、つい自分の経験に照らし合わせて、マネージャーの考える答えを教えてしまいがちです。しかし簡単に答えを教えてしまっては、仕事を任せたことによる学習効果が薄れてしまいます。部下が取った行動の理由と背景は何か、それによって望ましい結果が得られたのかどうか、さらに改善していくためにはどうすればいいのかといった質問をすることで、部下自身が自分の行動を振り返ることを促しましょう。
また市場は目まぐるしく変わっており、必ずしも過去の経験値だけが正しいわけではありません。正解が必ずしも自分とは同じではないことに留意し、部下の成長を促す姿勢が大事になります。
とはいえ、先に述べたように、管理職にのみ従事できるマネージャーはほぼいない時代。現場に忙しいプレイングマネージャーを支える体制も企業に求められています。外出先からでも部下が抱える商談状況やプロジェクト進行をチェックしたり、サポートしたりできるのがSalesforceの営業支援システム。
「絶対達成」シリーズで有名なアタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長の横山信弘氏は、Salesforceのような仕組みを導入することこそが、若い社員が自身で育っていける職場づくりにつながると指摘します。適切な情報共有のためのツールを導入することで、商談がスムーズに進むだけでなく、人材の育成や管理にも役立つのです。詳細は下記e-bookのP5「マネージャー教育で業務が効率化する?」をご参照ください。
参考文献:
「駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を『科学』する」(中央公論新社 中原淳 2014年)
第3回上場企業の課長に関する実態調査 (学校法人 産業能率大学 2016年3月)