残業と企業の在り方が大きく問われる昨今、都庁や有名企業が次々に残業ゼロを目指して経営の舵をきっています。Salesforceが主催した、経営者のための営業改革セミナー「働き方改革で"残業ゼロ"は達成できるのか?」の講演の中から、いくつか働き方改革のヒントを紐解いてみましょう。
写真左:アタックス横山氏、写真右:セールスフォース・ドットコム宮﨑
講演では、はじめにビジネス書籍「『絶対達成』シリーズ」の著者でアタックス・セールス・アソシエイツの代表取締役社長 横山信弘氏が「効率化が求められる時代での目標予算を絶対達成する方法」と題して講演を行いました。
横山氏は開口一番、「21時までやっている残業を20時にするとか、19時にするとか、そういうことでは絶対に残業は減らない。定時が18時ならば、18時に仕事を終える。その意識が大事。目標予算達成と絶対達成とは非常に考え方としてリンクしている」と呼びかけました。
さらに「『残業時間ゼロ』を達成できれば、他社との大きな差別化となり、会社としての魅力は増大する。それによって社員の満足度は上がり、入社希望者も増えて、雇用の問題も解決する。『目標予算達成』にもつながる」と説明しました。
横山氏によれば、「目標予算達成」と「残業時間ゼロ達成」のための重要ポイントは
の2つだと言います。
「思考」とは、素直に聞くことができるか?ということです。そもそも残業ゼロにできると思っていなかったり、本来は残業「ゼロ」を目指しているのに、21時から19時にするぐらいならば...と妥協して考えること自体がうまくいかないと言います。定時に必ず終えるという"極端思考"に走ることが重要なのです。
もう1つのポイント「技術」に関しては、実はうまくいくやり方はいくらでもあるということです。「上手くいくやり方はたくさんあるにもかかわらず、業務改革がうまくいっていない組織は多い。原因は3つに集約できる。役に立つ技術やノウハウを知っていても、『実際にやるべきことをやっていない』『やるタイミングやスピードが遅い』『やり続けていない』から」と成功できない共通点を述べています。
横山氏はさらに、「技術」に関する重要点として「マネジメント・ルールの統一性」が重要としています。「『どこの会社に営業行っているの?反応はどう?』などと営業会議でマネージャーが部下にヒアリングする会社は、ルールが決まっていない会社の証拠。使うべき技術は、部下を管理するルールが統一されていることが大前提。目標から逆算して、訪問すべき顧客を決めて、必要に応じて営業の組織戦をおこなっていなくてはならない」と言います。
以上の前提を踏まえ、横山氏は、CRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援システム)の重要性を次のように訴えました。
「事業はどの会社でも『お客様』で成り立っているのに、お客様のデータベースシステムがないというのはおかしな話。でもERPなど、社内の基幹システムはあったりする。一体誰に向かって、仕事をしているのか?営業が得た、顧客資産を増やしていくのは企業として当たり前のこと」
さらに横山氏は、営業の生産性をアップするマネジメント手法「予材管理」を紹介しながら、Salesforceを使ったマネジメントの考え方を解説しました。
横山氏は、「当期の売り上げにつながる顧客ばかり訪問するのは、短期思考のダメ営業。もっと長期的な利益を視野に入れ、蓄積した顧客情報をきちんと分析し、十分な予材を管理しながら、余裕をもって顧客に接するのが優れた営業マン」と言います。
この図では左側の①「定期」の部分がそれに相当します。マーケットにいる顧客に対して定期的にお客様に接触して、自社でコントロールして計画的に予材資産を増やしていけるところです。例えるならば、この定期的な顧客との接触により顔と名前を覚えてもらい、声をかけられる関係を構築することは「月給で定期的に資産をためるようなもの」。この活動には、SalesforceのChatterのようなモバイルを使っての上司への報告や、Google mapなどを参照して多くの顧客への訪問計画を練るなどのモバイル活用が効果的と言います。
また定期的にお客様と接触して信頼関係を築けた後には、「お客様都合」で何らかの引き合いが来るものです。この②の部分は、言わば、「貯蓄した給料を支出するようなもの」。これは自社ではコントロールできず、随時対応していくものになります。ここで、成約率を高め、失注を防ぐためのプロセスがCRM/SFAとなります。
「お客様が人間である以上、営業は人工知能が代替することは難しい。でも世の中の多くのマネージャーはマネジメント教育をきちんと学んでいないし、各個人でバラバラの方法になってバイアスがかかっている。そこにいくと、AIは素直です(笑)。マネジメントはSalesforceに託して、各人はみな営業プレイヤーとして活躍する時代が来ると思う」と横山氏は講演を締めくくりました。
続いてSalesforceのコマーシャル営業第1営業本部第3営業部長の宮﨑盛光が「時短マネジメント – Salesforceの場合」と題して、社内でSalesforceを使った時短マネジメントの実例をご紹介しました。
かつて典型的なハードワーカーの営業マンであった宮﨑は、「通常の2倍働けば2倍の目標が達成できる。さらに眠らずに働けば3倍達成できる」といった当時の働き方を述懐。しかしマネージャー昇進を機に、優秀な人材が自分から離れていくのを見て、"1人ブラック企業"だった自分の「勘違い」に気付いたと言います。
プレイヤーとしては優秀でも、自分と同じ働き方を部下に強いたら部下が辞めてしまう。優秀な人材を雇用し続けるためには、部下の「時短を達成」する。これらがうまくいけば「社員、顧客の満足度が向上」して、「売上・利益目標」の達成へとつながる。そしてそれはさらに「優秀な人材確保」の礎となって…。この好循環を確立するツールこそが、皮肉なことに宮﨑がしゃかりきになって売っていた自社製品Salesforceでした。
宮﨑は、Salesforceの「Salesforce1」「ダッシュボード」「Chatter」の3つを活用することで、時短をしながら目標を達成するマネジメントを行っています。
「Salesforce1」とはモバイル用のアプリケーションのこと。瞬時に、セキュアに、外出先でのスキマ時間でも、社内にいるかのように、リアルタイムでの売上情報・商談状況や顧客情報、ファイル、今日の予定などをチェックすることが可能です。
「ダッシュボード」とは、その名のとおり、車に搭載されたダッシュボードと同じく営業活動に関わる状況を一目で把握するグラフ群のことです。こういったデータを明示しながらのマネジメントは、部下も一目で状況を理解できるので、時短につながると宮﨑は言います。
また「Salesforce1」と社内ソーシャルメディアである「Chatter」を活用することで、LINEやFacebook、Twitterのように、タイムラインを確認することで、部下とコミュニケーションを取ることができます。例えば、部下が新しい商談を成約させたという情報は、システムが自動的に呟いて、このタイムライン上で確認できるので、自動的に報告が入るといった具合です。
最後にSalesforceの機動性を示す実例として、今年初めに経験した同製品のプレゼン時のエピソードをご紹介。商談の最終段階で相手企業の社長に「良さそうな製品だけど、何かもっと決め手になる成功事例はないのか?」と問われた宮﨑は、すぐに「Chatter」を使ってSalesforce社内の関係者にサポートしてくれるように発信。
結果、わずか30分で、動画やパワーポイントを駆使した15もの事例のデータを集めることが出来たのです。そのやりとりをそのまま提示したところ、事例の内容以上に、「プレゼンの場で即座に成し遂げた『必要情報の集約』こそが、なによりのアピール材料となった」と話し、講演を終えました。