早い企業では4月の中旬から、遅い企業でも7月くらいまでには、研修を終えた新入社員が配属されてきます。この時期話題に上るのは、世代の違う新入社員の力をどのように引き出していくかでしょう。

公益財団法人日本生産性本部では、毎年その年の新入社員の特徴をさまざまな角度から検証し、ユニークな名称をつけています。2016年の新入社員は、ずばり「ドローン型」。就職活動に関わるルールの変更や、経済状況の目まぐるしい変化という強風が吹き荒れるなか、希望の会社という着地点に無事に到着できたことを表しているといいます。文部科学省の調査によると、2016年2月1日時点での大学等の卒業予定者における内定率は、前年より1.1ポイント上昇の87.8%となっており、リーマンショック前の水準まで回復してきました。まさにより多くの2016年卒たちが「無事に着地」し、新社会人としての生活をスタートさせています。

そんな新入社員たちに、これから組織で大きく羽ばたいてもらうためにはどうすればいいのでしょうか。キーワードは「4つのSを元にした職場づくり」にあります。

新入社員がキャリアの転換期に対処するための4つのS

どのような職場づくりが求められるのかを理解するためには、学生から社会人というキャリアの転換期に、新入社員がどのようなものを必要としているのかを知る必要があります。キャリア発達論で知られるナンシー・シュロスバーグは、キャリアの移行を正しく乗り越えるためには、本人には4つのSが求められていると指摘します。

1.Situation (状況)

何事も、外の環境を正しく知らなければ正しい対処の仕方は分かりません。1つ目の「Situation」とは、学生から社会人というキャリアの転機にあたり、本人がどのような状況に置かれているかを自覚することを指します。これには、事実としての外界を知るだけでなく、それが本人にとってどのような意味を成すのかという解釈も含まれます。

2.Self (自分自身)

Selfとは、本人が自分自身の内面について理解することです。自身の性格や強み弱みをきちんと理解していれば、変化に対してどのように強みを活かし、弱みをカバーすればいいのかを知る糸口になります。

3.Support (支援)

キャリアの転換に対処するためには、自分の力だけではどうしようもならないことがあります。そんなときに頼りになるのが、周りからのSupportです。新入社員は、周りからどのようなSupportを得られるのかを把握しておくことが求められます。Supportには、新入社員の家族や友人といった近しい間柄からのSupportに加えて、職場の先輩、上司など専門家からのSupportも含まれます。

4.Strategies (戦略)

Situationを知り、Selfを知り、周りから得られるSupport内容を知ったうえで、キャリアの転換期をどのように切り抜けるべきかというStrategy(戦略)を立案し、実行することが求められます。

以上で見てきた通り、新入社員は学生から社会人というキャリアの転換期にあたり、Situation、Self、Support、Strategyの4つのリソースを求めています。これを踏まえて、職場の先輩・上司として、新入社員がこの4つのリソースを活かせるようになるための職場とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

新入社員が4つのSを活かせる職場づくり

まず新入社員がSituationを素早く、正しく理解するためには、職場のメンバー間で情報共有がきちんとなされている必要があります。営業部において、顧客の情報が各メンバーのExcelに分散してしまっていては、Situationの理解は不可能に近いでしょう。Sales Cloudのように、情報を一元管理し、一瞬で状況が把握できる仕組みを作り上げることが大切です。

次に新入社員がSelfのことを知るためには、メンタリングやコーチングなどを定期的に行い、新入社員の持つ強みや改善点を気づかせることが有効でしょう。また採用時に人事部が実施した、性格診断テストなどの結果なども役に立つでしょう。

Supportは、職場のどの先輩・上司がどんな知識や情報を持っているか、というのを可視化して示すことで、新入社員は利用可能なSupportの種類を知ることができます。Sales Cloudが活用されていれば、これまで誰がどんな案件に関わってきたのかが一目瞭然ですので、新入社員はこれまでのレコードをチェックすることで誰に質問すればいいのかを知ることができます。またSalesforceのSNSツールであるChatterは、よりカジュアルな形で職場のメンバーと情報交換することができます。誰に聞けばいいか分からないとき、ひとまずChatterに投げ、そのやり取りからどの案件は誰に聞けばいいのかを見極めることができるでしょう。

最後のStrategyは、定期的なキャリア面談を通じ、組織で羽ばたくためにどうすればいいのか、一緒に考えていくことが重要でしょう。Situationを知り、Selfを知り、Support内容を知っても、どのようにStrategyを練ればいいのかは、簡単な問いではありません。先輩社員・上司として、積極的に本人のキャリア形成を促していくことが必要です。

以上では、キャリア転換期における4つのSを元にどのような職場づくりを行うべきかを見てきました。これと同じくらい重要なのが、職場の先輩・上司であるあなた自身が、後輩・部下たる新入社員にどのようなリーダーシップを見せるか、という点です。詳細はeBook 「いまどきの部下を動かす「サーバント・リーダーシップ」入門」をご覧ください。

組織のこれからを担う新入社員が大きく飛躍していくためには、先輩・上司として適切な支援が必要です。新入社員にとって重要な4つのSを、スムーズに得られる職場づくりを行うことが求められます。またSalesforceの活用は、営業プロセス全体の効率化はもちろんのこと、新入社員にとっても心強いツールになることは間違いありません。

参考文献:

  • 新入社員意識調査・特徴とタイプ(公益財団法人日本生産性本部 2016/03/23)
  • シュロスバーグ理論で転機をうまく乗り越えろ(atmarkIT 2008/08/05)