機能的価値と情緒的価値という言葉をご存知でしょうか。機能的価値というのは、簡単に言うと製品やサービスの機能・性能に対する価値であり、情緒的価値はその製品やサービスから受ける印象に対する価値となります。
例えば冷蔵庫で言えば、製氷機能や容量などが機能的価値、デザインやドアの質感などが情緒的価値にあたります。情緒的価値は、変更されたり、あるいはなくなったりしても、製品の使用については影響がありません。
かつて日本のお家芸とも言えた家電業界が、大きな再編の波にさらされています。この要因の一つとして、家電における技術的優位性が直接的に消費者の購買意欲とリンクしなくなってきたことが挙げられるでしょう。選択肢の幅が狭かった時代においては、「機能的価値」(例えば冷蔵庫で言えば、大容量に対応するなど)に訴求していれば、売れていたところがあります。しかし、誰もが機能的に十分な冷蔵庫を持つようになった現代では、製品の違いに消費者が違いを見出せなくなり(これを「コモディティ化」と呼びます)、「購買」に至る動機は製品本来の機能ではないところが大きなウェイトを占めるようになりました。それが「情緒的価値が重要」といわれるようになった理由です。
Apple 社の iPhone が現在のスマートフォンブームを牽引したことは、誰しもが認めるところだと思います。イノベーションの代表例として語られる iPhone ですが、2007 年当時は機能的な価値で測ると「ガラケー」と呼ばれるフューチャーフォンのほうが、iPhone より多くの機能を提供していました。機能を消費者へアピールすることに慣れていた当時の携帯業界では、iPhone への対抗策としてワンセグ、電子マネーなど、機能的な価値を訴求する「全部のせ」携帯を猛烈にアピールしました。
しかしユーザーは、画面に直接触れて操作するタッチパネルを含めた「新しい体験」を支持しました。静電式のタッチパネルは iPhone が本格的に導入したものですが、これは電話機能にそれほど大きな影響を与えるものではありません。かわりに新しい操作方法による地図のズームなど、これまでの電話にはない感覚が「カッコイイ」という情緒的価値を生み出し、ユーザーの心を動かしたのです。
また、美しく包装され、マニュアルの無いパッケージは「開封の儀」というユーザーの行動を作り出し、新しい体験(エクスペリエンス)として、SNS を通じて多くのガラケーユーザーに届けられました。
もちろん、最近は競争が激しくなったスマートフォン業界ですが、Apple 社は引き続きさまざまな情緒的価値を付加することで、競争力と利益を生み出し続けています。
※上記画像はイメージであり、文章で述べている製品とは関係ありません。
多くの企業が悩む「コモディティ化」という現象ですが、これは B2C の目に見える製品・サービスにとどまりません。B2B の製品・サービスについてもこの現象は当てはまります。機能を軸にして、優位性を維持していくのは企業の大小を問わず難しくなってきており、速い・多い・固い などの機能軸でしか価値を訴えることができない企業は差異化が難しくなり、最終的には価格を引き下げて販売するようになります。結果として、待っているのは誰もが苦しむ「価格競争」という泥沼です。
機能で差異化を図れない時代に、企業はどのような努力で価格を維持し、利益を確保すればよいのでしょうか。ひとつの方法としては、顧客の情緒(感情)に訴えて差異化を図る方法です。
まったく同じ機能や製品であれば、購入までの手続きを簡略化したり、より早く納品したりする。同じサービスであれば、提案のタイミングや支払方法に柔軟性を持たせる。
初回購入なのか、リピーターなのかなどのタイプに合わせ、マニュアル通りの対応から、One to One マーケティングを意識した柔軟な対応へ変更し、顧客の満足度を高めるやり方もあります。
このように、顧客への対応方法を変えることで、競合他社との差異化を図ることができます。この顧客サービスを実現するのに、有効な手段が SFA(Sales Force Automation)や CRM(Customer Relationship Management)と呼ばれる IT システムです。これらのシステムを活用することで、顧客がなぜ買わなかったのか、どのようなタイプの人物で、どのような興味があるのかを蓄積していくことができます。その記録をもとに顧客対応を変えることで情緒的価値を引き出し、コモディティ化したなかでも他社と差異化を図ることができるのです。
SFA や CRM の導入効果は、企業によって異なりますが、一般的に次のような課題に効果があります。
コモディティ化が進み、差異化のはかりにくい時代に投資すべきは、「顧客に最も近い現場とそれを支える IT システム」です。セールスフォース・ドットコムのクラウドサービスは、従業員数名の企業規模から大企業まで、あらゆる業種・企業規模でご利用いただけます。これらの課題を解決する SFA / CRM を正しく選択し、失敗せずに運用する方法については下記 eBook をご参照ください。
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