will-critchlow-thumb

Bob Marsh

ePrize 社上級副社長

コカ・コーラ、Gap、アメリカン・エキスプレス、P&G、マイクロソフトなどのコンシューマブランド向 けに競争、営業戦略、ロイヤリティなどのビジネスプログラムを提供する ePrize 社の上級副社長。 同時に Salesforce アプリケーションと連携して企業内の販売競争をサポートする全く新しいビジネス、Sales Contest Builder 部門のゼネラルマネージャーも務める。ePrize 社は Salesforce とそのパートナーアプリケーションの主要ユーザ企業の 1 つ。

Twitter アカウント: @bobmarsh5      LinkedIn アカウント: linkedin.com/in/bobmarsh5

イギリス発 ―― Sales Contest Builder が見込み客を開拓する際、ソーシャルメディアがどのように役立ったか。CRM (顧客関係管理システム) 導入を成功させるソーシャルの「ゲーミフィケーション (gamification)」理論とは。Bob Marsh に聞いた。

―― まずは Sales Contest Builder を知らない読者のために説明していただけますか?

そもそも営業担当者には競争がつきものです。そこでそれを利用して、企業が動機付けをしたいと考えているキー・ビヘイビア (購買につながる行動) をめぐる競争を作り出すのです。私たちが開発したアプリは Force.com に完全準拠しており、誰が一番売り上げを伸ばしたかというような古典的な販売競争だけでなく、採用業務を改善したり、クライアントとのミーティングを促進させたり、新製品を売り込んだりといった業務の中にもごく簡単な操作で競争を取り入れることができます。

―― この新しいコンセプトを広めるにあたって、ソーシャルメディアをどのように利用しましたか?

ePrize のクライアントのソーシャル・キャンペーンをお手伝いさせていただいた経験は何度もあります。ですが、注目や興味を引きたいと考えるビジネスオーナーの立場からそこにアプローチをしたのは初めてでした。

私たちがソーシャルチャネルを使う動機はたったひとつ、それは購買決定のうち 7 割は販売員や営業担当者に話しかける前にすでに行われているという統計です。この統計を知ってしまったら、ソーシャルを始めないわけにはいけません。

始めてみればすぐに、ソーシャルチャネルの成功は偶然には起こり得ないとおわかりになるでしょう。ただお知らせを Twitter でつぶやいて、それが拡散していくのをのんびり眺めていればいいというわけではないのです。

市場の鼓動を感じ、見込み客が何を話題にしているのかを見きわめること、それがソーシャルのすべてです。そうして、彼らの注意を引くコンテンツを作り、購買プロセスに持ち込むのです。

―― ふさわしいトピックをどのように見つけましたか?

ePrize ではソーシャルメディアのモニタリングに Radian6 を使っています。Sales Contest Builder は少しばかり立ち遅れています。最初は私自身が Twitter や LinkedIn や Facebook で情報収集を行っていましたが、プロジェクトが成長するにつれて、専任の担当者が必要だと分かりました。

そこで、ソーシャルメディアの中で人々の声を聴き、それに答え、弊社コンテンツに誘い、導くスタッフを 1 名置いています。プロジェクトの規模がより大きくなれば、そのためのツールも増やしていくことになると思います。今のところはひとりのスタッフに任せています。

―― 御社のインバウンドマーケティング (魅力あるコンテンツを揃え、顧客を待ち構えるマーケティング手法) においてコンテンツはどのような役割を果たしていますか?

コンテンツこそがすべての中心です。そしてそれは循環的な効果をもたらします。一件のブログ記事で取り上げられることが SEO (特定のサイトを検索エンジンの上位に来るようにすること) 効果を呼び、いくつかのトピックの検索を通じて弊社のサイトへのアクセスが増えるかもしれません。そして私たちはそれを Twitter でつぶやいたり Facebook や LinkedIn でシェアしたりします。そこでの食いつきが、どのコンテンツを伸ばせばいいかの判断の材料となります。

ホワイトペーパーのようにより重要なコンテンツがダウンロードされるようになれば、選んでいただいたコンテンツに応じたナーチャリング (見込み客の啓蒙活動) を行います。

またコンテンツをダウンロードしていただいた方にはコンタクトを取ります。特にその方が Salesforce のユーザだと分かれば。そうすれば、たとえそれが単なるお礼の連絡にすぎないとしても、私たちの即応性を証明することになるからです。ホワイトペーパーを ダウンロードしたからといってその人が確実な見込み客だとは限りません。そのため、具体的に製品デモをリクエストした人とは全く異なった対応になります。

最近のマサチューセッツ工科大学の研究によれば、このような即時対応によって、コンバージョン (利益に繋がる成果) が劇的に増加するそうです。

―― 御社の商品のどこにゲーミフィケーションを取り入れていますか?

ゲーミフィケーションとは聞きなれない専門用語ですが、私たちが何年も前から行ってきたことです。人々にどのような行動を取ってほしいかを考え、それらの行動を楽しく、見返りのあるものにするのです。

そこで、Sales Contest Builder では、営業担当者が Salesforce の中でできることなら何でもゲーミフィケーションして順位付けできるようにしています。たとえば取引先責任者の連絡先として携帯の番号を登録すれば報奨金 が出るようにしたいとお考えなら、それも競争にできますし、とにかく何でもですね。

―― 「ゲーミフィケーション」を、ソーシャルメディアでの分析対象キーワードや、SEO 対策キーワード(検索結果に上位表示させるキーワード)に設定していますか?

その通りです。ただ、ゲーミフィケーション をめぐるアクティビティの多くはまだ理論の域を出ません。 なので"営業モチベーション"や"CRM 導入"周辺の会話にも注目しています。これらの会話は私たちが解決の手助けを出来る悩みや課題を抱えていることを示唆しているからです。

あるいは、営業担当者の持つ競争的な性質を私たちが提供するサービスに結びつけるというようなアイデアにもとづいたコンテンツやソーシャルアクティ ビティを構築出来るかもしれません。ですからゲーミフィケーション周辺の会話はコンテンツとしてきわめて有益なものになりえるのです。

―― ゲーミフィケーションはもう実用に耐えるように思えるのですが。

そうですね、かれこれ 13 年もこれを続けて、ようやく商品化できそうです。それをこの目で見られると思うと興奮しますが、それがどうやって実用化にこぎつけたかを知らないまま理論だけをいいとこ取りする人々には用心しています。

消費者プログラムや動機付けプログラムを通じて、重要なのはシンプルさを保つことだと分かりました。営業担当者は多忙ですし、やたらに多くの物事に競争プログラムや動機付けプログラムを作ってしまうと、混乱するばかりで何にもなりません。

このようなコンセプトが機能するのは、お金を稼ぐことや仕事で認められることを人々が好むからです。誰しも競争やランキングが好きなのです。それが原動力です。ただ、結局はひとつの便利な道具にすぎないので、正しく使う必要があります。

―― ソーシャルメディアで効果的にターゲットを見つけるにはどうしたらいいですか?

本当に知らなければならないのは、誰が自社のオーディエンスなのかということです。だから、私たちはチームに動機付けを与えようとしている営業マネージャーと話し合いたいのです。あるいは CRM の導入を検討している営業管理部門の人々と。

目下、もうひとつターゲットにしているのはセールスフォース・ドットコムのアカウントエクゼクティブ (広告担当者) たちです。彼らは私たちの重要なチャネルです。最近私はブログに 「私たちをよりよい企業にするためにセールスフォース・ドットコムが取った 3 つの方法」 という記事を書きました。それは彼らにとって大きなトラフィック・ビルダーとなり、特別なチャンスをもたらしました。

自社が誰に声を届けたいのかを知り、そしてその人たちが何に関心を持っているのかを理解することが、ソーシャルメディアで成功するために絶対に必要です。

―― ソーシャルメディアは営業担当者の役割をどう変えるでしょうか?

セールスとは、今も、そしてこれからも、人間関係を築くことであり、自分の分野のエキスパートであることであり、人々の決断を助けることであるのは変わりません。

たしかにソーシャルメディアはリード・ジェネレーション (リードの獲得) にとって有益ですし、営業担当者やマーケティング担当者がクライアントの要求を知るのにきわめて有効なツールですが、所詮は優秀な営業担当者とそうでない 者とを区別する新しい道具のひとつにすぎないと思っています。ソーシャルメディアを効果的に使うための鍵は、心から人々に関心を抱き、自社のオーディエン スにとって真に有用なコンテンツを共有することだと思うのです。

もしあなたのチームがソーシャルメディアの外にいるクライアントに心から興味を抱くなら、ソーシャルメディアの中でもそうなるでしょう。 Twitter や LinkedIn にちょっと質問を投稿したら、たちまちしつこい営業に悩まされた経験は何度もあるでしょう。彼らはあなたを手助けしようとしているのではなくて、ただ反射 的にメッセージを送りつけているだけです。誠実に、心から興味を持つことです。そうすればソーシャルメディアを思い通りに使うことができるでしょう。

―― 営業担当者を動かすに当たって、CRM はどのように役立っていますか?

営業部門を運営していれば、人々をある方向に向けたいと思うことがあるものです。CRM がそれを可能にします。ですが、チームが CRM のツールを使ってアクティビティを管理する動機付けは、あなたがしなければなりません。「あとはおまえがやれ」的なアプローチでは動機付けは起きません。

私たちのバックグラウンドである ePrize のビジネスの特徴を一言でいえば、顧客が行動を起こす動機やその見返りを作るトリガーにデジタルを用いるということです。Facebook で「いいね!」ボタンを押してください、Twitter でつぶやいてください、写真をアップしてください、そしてこのフォームに記入してください、というふうにね。CRM を、リードのフォローアップ、電話連絡や顧客とのミーティング、新商品の売り込みや商談の創出と進展、そして成約と、あらゆるセールス・アクティビティを モニターするのに利用する企業は多いのです。でも、私たちはただ、それらをデジタルなトリガーとして使います。

企業にとって、CRM があらゆるアクティビティを評価しモニターしてくれるというのは目からうろこだったでしょう。さらに、それらはすべて CRM で追跡されているのですから、すべてに競争を作り出すことができるのです。

つまり、クライアントとのミーティングの記録だろうと新製品の売り込みだろうと、どんな業務にでも、競争を設定することができます。CRM がなかった頃は、それを評価する信頼性の高い共有システムがありませんでした。今はそれがあります。

―― すると、ePrize の内部でも Sales Contest Builder を使っていると?

もちろん。弊社の営業部門には 100 名あまりのスタッフがいます。開発したアプリは私たちの業務にも使って、さまざまな業務の動機付けをしていますよ。数ヶ月前、取引先レコードの[業種]項目を記入するよう、営業チームに動機付けをしました。

このことは、ターゲットを明確にしたマーケティングキャンペーンのための良質なデータを与えてくれ、さらなるリードを開拓するのに役立ちました。業 種を記入された取引先レコードは全体の 45% だったのが、10 日足らずで 90% 以上にもなり、合計で 1500 件の取引先が更新されました。その賞品は何だったと思います? スターバックスの 10 ドル分商品券ですよ。それを競うことが動機付けになったのです。新製品の売り込みの動機付けにも競争を取り入れ、それは売り上げに直結しました。私たちの ケーススタディはこの記事でご覧になれます 「インセンティブ・セールス/売り上げに繋がる行動とは?」

―― 他にクラウドやソーシャルツールで利用しているものはありますか?

そうですね、Sales Cloud を使っています。リードの状況、クライアントデモ、ミーティング、商談、そして今すべきことを正しく把握するためのリアルタイム・ダッシュボード、こう いったすべてをこれで管理し、モニターしています。Data.com も使っていますね。私たちのターゲットリストにある企業の適切な取引先担当者を見つけるのに役立ちます。

InsideViewHubSpot の製品も使いました。InsideView は私たちの取引先についてのさらなるインテリジェンス (情報分析能力) を与えてくれます。HubSpot は Web サイトや SEO、ブログといった、マーケティングファネルの上部にある業務を管理するのにうってつけです。それをシームレスに Salesforce に関連づけることが効率を上げる鍵です。

加えて、より大きな組織となるePrizeでは、多くのスタッフが Chatter を利用していますし、クライアント向けのソーシャル・リスニング (ソーシャルメディア上での消費者の動向分析) キャンペーンには Radian6 を使っています。最近では、カスタマーサービス部門を運営するために Service Cloud を追加しました。

―― 顧客や見込み客とよりよい関係を築くためにソーシャルメディアを利用したいと考えている企業に、アドバイスをお願いします。

まずは始めてみて、しばらくじっくり観察してみるのがいいと思います。誠実に、なおかつ自分を失わないように。人々が知りたいと思うようなコンテン ツを作ることです。自分自身や企業を前面に出さなければなりません。それを必要以上に恐れないで。それからもうひとつ。あなたも早くこの流れに加わったほ うがいい。今までのやり方ではあと数年で時代遅れになりますよ。

翻訳: 辻村永樹 (Eiju Tsujimura)