ソーシャルメディアを使ったマーケティングは、ブランドの認知度の向上に役立つほか、自社の製品やサービスに興味を持つユーザと接触して関わりを持つことを可能にします。これにより、ソーシャルメディアは顧客対応の窓口として機能するようになります。 しかしながら、ソーシャルメディアがビジネスにどんな成果をもたらしているのかを正確に評価することは、必ずしも容易ではありません。

ソーシャルメディアチームでは、ソーシャルメディアというものが従来利用されてきたチャネルと同じようにビジネスに役立つということをきちんと証明する必要があります。しかし、いったいどこから手を付ければよいでしょうか。

何をモニタリングすべきか

指標や KPI を検討するときには、何に対する答えを出したいのかがわかっていなくてはいけません。 個々の指標によってさまざまな問いに対する答えを出し、複数の指標を組み合わせて検討することで、ソーシャルメディアキャンペーンのパフォーマンスをより包括的に把握します。

チャーリー・オズモンド氏

"ソーシャルメディアの成果や価値を評価、測定する方法としてもっとも有効なのは、KPI (主要業績指標) をはじめとする指標を、自社の主要な事業目標に合わせて定義することです。"

1. ソーシャルメディアサイトのトラフィックとコンバージョン率
トラフィックのソースとトラフィックの量は、非常に容易に測定できる指標の 1 つです。 多くの分析パッケージでは、トラフィックのソース別にデータを集計することが可能であり、どのソーシャルメディアサイトからどの程度のリードを獲得できたかを確認できます。 また、トラフィックがその後何らかのコンバージョン (製品の購入やメールマガジンの会員登録など) につながったかどうかもわかります。

2. ファンやフォロワーの数
多くのソーシャルメディアサイトでは、ファンやフォロワーの総数しか把握できません。ファンやフォローの登録や解除がいつ行われたかをトラッキングするには、サードパーティのツールが必要です。

3. 会話への参加
自社のソーシャルメディアキャンペーンにユーザがどのように関わっているかを数値化して把握するための指標です。 ユーザのコメント、Facebook の投稿への「いいね!」、ツイートへの返答などが追跡対象になります。

4. ソーシャルリーチの状況
企業のコンテンツがリツイートでどのくらい言及されているか、ソーシャルメディアキャンペーンがブログでどのくらい取り上げられているかといった観点から、ソーシャルリーチの状況を把握します。

目指すべき姿は?

多くの企業では、ソーシャルメディアへの取り組みに対してしかるべき目標を設定しておらず、これが、具体的に達成状況を評価したり改善可能な領域を特定したりすることを難しくしています。 取り組みの第一歩として、トラフィック、会話への参加状況、ファンやフォロワーの数などの指標で目標を設定するのがよいでしょう。

目標を定めることで、どのような活動が成果を上げているかを容易に追跡できるようになります。 ソーシャルメディアに対するあらゆる取り組みが成功するということは難しいかもしれませんが、指標の改善につながった活動を基盤にしながら、次第に効果的な戦略を立てることが可能になります。

企業が参加しているソーシャルメディアが効果的かどうかを判断する場合にも同じことが言えます。 明確な指標を定めておけば、成果を上げているソーシャルメディアや、ROI が非常に低くリソースの無駄使いに終わっているソーシャルメディアなどを非常に簡単に特定できるようになります。

目標設定のヒント

イアン・ルーリー氏

"企業は、フォロワー数を過大評価し、参加の度合いを過小評価します。 実のところ、金を払って 1,000 人のフォロワーを獲得することもできるでしょう。 しかし、その全員から無視されたとしたら、何の価値もありません。"

1. ファンやフォロワーの数
ファンやフォロワーの数を増やすことは大事ですが、成果を測る物差しとしてはやや信頼性に欠けます。 目標として相応の数は設定しますが、より重視すべきはエンゲージメント (会話への参加、共有) であるということを忘れないでください。

2. 会話への参加、共有
フォロワーによるエンゲージメント、つまり会話への参加や共有が「十分に多いかどうか」という判断は相対的なもので、常に改善していく余地があります。 たとえば、Twitter での共有について、リツイートがこの数に達したら成功、と言えるような絶対的な基準値は存在しません。 

投稿に対するコメント、「いいね!」、リツイートなどの平均値が増えるように目標を設定してください。 どのようなタイプのコンテンツがユーザの共感を呼び、数多く共有されるのかを追跡し、得られた情報をソーシャルコンテンツ戦略に反映して、エンゲージメントの度合いを高めてゆきます。

3. トラフィックとコンバージョン率
広告のインプレッション数で収益を上げている場合を除き、トラフィックはそれほど役に立つ指標ではないでしょう。 トラフィック数自体を増やそうとするのではなく、どのソーシャルメディアサイトからのトラフィックのコンバージョン率が高いかに注目しましょう。

マクロコンバージョンとマイクロコンバージョンの両面から考えることが必要です。マクロコンバージョンは製品の購入などが該当し、マイクロコンバージョンはメールマガジンの会員登録やホワイトペーパーのダウンロードなどが該当します。

コンバージョン率が特に高いトラフィックのソースになっているサイトを、ソーシャルメディア戦略の主軸に据えるとよいでしょう。

ソーシャルメディアへの取り組み財務面に与える影響を見きわめる方法は数多く存在します。企業の目標を踏まえたうえで検討してください。

主要ソーシャルメディアのモニタリング方法

ここからは、利用者数の多い主要なソーシャルメディアサイトやソーシャルネットワークを取り上げ、ソーシャルメディアキャンペーンをモニタする方法を紹介します。ただし、「自分たちのビジネスにはある特定のソーシャルメディアがより効果的だ」ということも当然出てくるはずです。 企業は、顧客がいるのであればどんな場所にも出向かなければならず、今回取り上げていないニッチなソーシャルメディアであっても、自社のビジネスに関係がある場合には、参加して、モニタリングの対象にする必要があります。

ジェニファー・セーブル・ロペス氏

"1 つのサイトやツールですべてのデータをまとめて取得できるということはなく、自分たちがデータを収集して、適切に集約する必要があります。"

ブログ、フォーラム

ブログやフォーラムは、リンクビルティングのための格好の場ですが、自社サイトへのリンクを貼れるという点以外にも大きなメリットがあります。 つまり、今後ブランドに興味を持ってくれそうなユーザやすでに何らかの製品を購入してくれているユーザが集うコミュニティとして機能するのです。 コンテストなどの宣伝に効果的であるほか、活発なコミュニティを構築したり、自社コンテンツへのフィードバックを集めたりできます。

各種指標のモニタリング方法

リンク
リンク数はさまざまなツールで追跡可能です。SEOmoz の Open Site ExplorerMajestic Site ExplorerGoogle のウェブマスターツールなどが有名です。

これらはすべて無料で、使い方も簡単です。リンク元やスコアなどの有益な情報を得られます。

メンション
メンションのモニタリングには Google アラートを使用できます。追跡したいキーワードを登録しておくと、Web 上でそのキーワードへのメンションが見つかったときにメール通知を受け取れます。 たとえば、あるブログ記事でメンションが行われていることがわかったら、その記事のトーンを確認したうえで、適切な対応をとることができます。評価してくれているのであればブログライターに感謝の意を伝えます。ブランドに否定的な印象を持っているようであればフォローのために接触を図ります。理屈が通らない相手であれば無視することもありえます。

トラフィック

トラフィックは Google アナリティクスなどの分析パッケージを使ってモニタリングします。Google アナリティクスは完全に無料で、分析に必要な機能がそろっています。 トラフィックのソース、ユーザの行動、経時的な変化などを追跡できます。

こうした情報は、ダッシュボードに表示されるか、ダッシュボードを数回クリックすることで確認できます。フィルタを設定して、特定の種類のトラフィックやアクションのみを追跡することも可能です。

Twitter

Twitter は既存顧客や見込み客と直接対話できるすばらしいツールです。 カスタマーサービス部門がサポートを迅速に行ったり、ブログのコンテンツや最新情報をアピールしたり、顧客の意向を大きくつかんだりするのに役立ちます。

各種指標のモニタリング方法
Twitter の主な指標は、会話への参加状況、ソーシャルリーチ、フォロワー数、サイトへのトラフィックです。 残念ながら、Twitter は効果的なモニタリングという点では扱いにくいプラットフォームです。Twitter 社から分析パッケージが提供されていますが、現時点では広告主しか利用できません。

会話への参加状況、ソーシャルリーチ
Twitter で会話への参加状況を追跡するには、返信とダイレクトメッセージに注目します。 通常、これらの数や頻度は、Twitter の検索機能を使って確認できます。Twitter の検索結果に表示されなくなった古いツイートは、Topsy などの検索ツールで確認できます。

また、Crowdbooster などの高度なツールを使うと、インプレッションとリツイートにもとづいてソーシャルリーチのデータを把握できます。

フォロワー
Twitter で獲得したフォロワー数は、Twitter のプラットフォームをどの程度活用できているかを示す値としては有効ですが、会話への参加状況やソーシャルリーチの方がすぐれた指標であることは確実です。 何のアクションも起こさないフォロワーが 10,000 人いるよりも、ブランドに愛着を持ち、企業についてメンションしたりリツイートでコンテンツを広めたりしてくれる1,000 人のフォロワーがいる方が、はるかに成果は上です。

トラフィック
トラフィックは、Google アナリティクスなどの分析パッケージ で把握できます。 なお、ここで 1 つ覚えておいていただきたい点があります。以前、Twitter によるトラフィックの中にはソースが www.twitter.com でないものが存在していました。 Twitter へのアクセスで多くの人が利用していたデスクトップアプリケーションやサードパーティ製ソフトウェア (HootSuiteTweetDecktwitterfeedなど) が、別のソースとして表示されていたのです。

Twitter 社はその後 URL 短縮サービス t.co を発表し、今後は分析パッケージの刷新を行うことが見込まれています。これにより、さまざまな指標を追跡できるようになると考えられます。 短縮サービスによってさっそく変わった点もあります。 2011 年 10 月 10 日現在、Twitter とサードパーティ製アプリケーションからのクリックスルーはすべて t.co 経由となっており、Twitter からのトラフィックを追跡しやすくなりました。 また、個々のツイートによって企業サイトにどれだけのトラフィックが生じたかも把握できるようになりました。

Facebook

Facebook は、ソーシャルメディアマーケティングにとって、最高の成果を上げられる場だと言えるでしょう。 Facebook グループでは企業コミュニティに参加してくれる可能性のあるユーザと簡単に接触でき、Facebook ページでは企業や経営陣がフォロワーと直接対話でき、さらに、ターゲットを絞った広告が可能です。

各種指標のモニタリング方法
Facebook には、Facebook インサイトという独自の分析ツールがあります。

Facebook インサイトでは、コメントが多かった投稿やシェアが急増したタイミングを確認して、どのようなタイプの投稿によってリーチを効果的に拡大できるのかを把握できます。

傾向をつかんだら、投稿に工夫を加えて影響力を高めることができます。 ファンやリーチ、自社について言及しているユーザのデータなども参照できます。

ファン
さまざまな観点から、ファンの数やファンのタイプを追跡できます。 たとえば、居住地や使用言語などの属性情報にもとづいてファンを把握し、現時点でもっとも多いユーザ層、今後強化していきたいユーザ層などをターゲットにしたコンテンツを作成できます。 「いいね!」を獲得した数、タイミング、後から「いいね!」を取り消したユーザの情報なども追跡可能です。

リーチ
ファンの場合と同様に、コンテンツにアクセスしたユーザの属性や数、ユーザがコンテンツを見た頻度などを参照できます。

企業について言及しているユーザ
ユーザの属性のほか、言及の方法 (「いいね!」、企業の投稿、メンションや写真へのタグ付け、ほかのユーザの投稿、チェックインなど) に関するデータを確認できます。

トラフィック
ほかのソーシャルメディアサイトの場合とは異なり、Facebook のトラフィックは 2 つの観点から追跡できます。1 つは、Facebook から企業のサイトに遷移したトラフィックの量の追跡で、もう 1 つは、企業の Facebook ページに遷移したトラフィックのソースとなるサイトの追跡です。

Facebook から企業のサイトに遷移したトラフィックは、Google アナリティクスなどの分析パッケージを使って追跡します。 一方、企業の Facebook ページへのトラフィックのソースは、Facebook インサイトを使って追跡できます。

LinkedIn

LinkedIn は、仕事で使う Facebook だと考えるとわかりやすいでしょう。多くの B2B 企業では、サービスや製品を売り込む目的で LinkedIn を利用できます。ほとんどの個人ユーザは、LinkedIn を職歴やスキルをアピールする場として位置付け、人材を探したり、仕事のオファーを受けたりする目的で利用していますが、 企業のコミュニティを構築したりブログのコンテンツを売り込んだりするために活用することは十分に可能です。中でも、仕事を進める過程で企業の製品やサービスを利用するユーザに対しては、特に効果的であると言えます。

さらに、LinkedIn グループを作成している場合は、ブランドを中心に据えたコミュニティを構築し、ブランドとの関わりを深めてもらうことができます。

各種指標のモニタリング方法
LinkedIn では、ページビュー、フォロワーとつながり、上位のキーワード、トラフィックを追跡できます。 これらはすべて、LinkedIn の企業向けアカウントで提供される分析機能で実行できます。 個人プロフィールの分析機能も用意されています。

ページビュー
プロフィールページのページビュー数とユニークビジター数の総数を追跡できます。 ページを見たユーザが自分とつながりのあるユーザだった場合は相手の名前を確認できます。それ以外の場合でも相手の職種を確認できます。

フォロワー、つながり
自分のプロフィールをフォローしているユーザの数、1 次コンタクト、2 次コンタクト、3 次コンタクトがそれぞれ何人いるかを追跡できます。これにより、自分やフォロワーの影響力の大きさを把握できます。

上位キーワード
LinkedIn の分析機能では、ユーザがどのようなキーワードを使って自分のページにアクセスしてきたのかを把握できます。

トラフィック
B2B 企業は、LinkedIn を大量のトラフィックを安定的に獲得できるソースにすることができます (特に、プロフィールの更新やグループでのディスカッションなどが要因になります)。 こうしたトラフィックは、通常の分析パッケージで追跡可能です。

Google+

Google+ は登場して間もないソーシャルメディアであり、本記事の執筆時点では企業ブランド向けの Google+ ページが立ち上がったばかりです。 したがって、現在のところ、ほかのソーシャルメディアサイトほど詳細で高度な分析は行えません。 しかし、Google 社は今後 Google+ をランキングの要素に組み込む意向ですので、おそらくこの数ヶ月から数年で、パフォーマンスのモニタリングははるかに容易になると予想されます。

また、ユーザ数がすでに 2,500 万人を超えていることから、企業のソーシャルメディアマーケティング戦略を推進するうえで大きな位置を占めるようになると見込まれます。

各種指標のモニタリング方法
Google+ の主な評価指標には、フォロワー、自社サイトのコンテンツに対する「+1」、トラフィックがあります。 今後の拡大に伴い、さらに多くの指標が加わっていくことは必須と考えられます。

フォロワー
Google+ では、フォロワーは「あなたをサークルに入れているユーザー」と表現されており、プロフィールページで確認できます。

コンテンツへの「+1」
Google のウェブマスターツール (http://www.google.com/webmasters/) で確認できます。 Web 検索で「+1」がクリックスルー率に及ぼす効果を評価します。サイト全体の「+1」や特定のページのみの「+1」をトラッキングできます。

トラフィック
Google+ から企業サイトに遷移したトラフィックは、Web の分析パッケージを使って確認できます。 現時点で Google+ を利用しているのは、ソーシャルメディアのアーリーアダプターたちです。彼らはたいていかなりの IT 通で、この新しいソーシャルメディアに積極的に参加しています。そのため、技術系のサイトやエンゲージメントを重視する企業のサイトへのトラフィックが多く発生する可能性があります。