Salesforceは、コアバリュー(大切にする価値観)の1つとして平等(イクオリティ)を掲げ、企業として婚姻の平等を推進する活動を行ったり、企業人事制度の整備やLGBTQ+当事者を支援するコミュニティにの運営によって、LGBTQ+への理解促進に取り組んでいます。2023年4月25日、社会課題についてまずは学ぶことからソーシャルチェンジの第一歩としていく社内ボランティア活動の一環として、前デジタル大臣 牧島かれん衆議院議員をSalesforce Towerにお招きし、ご講演いただいたとともに、Salesforce社員とのパネルディスカッションにご参加いただきました。
ダイバーシティーの包摂と平等の実現に向けてどのような政治の動きがあるのか、そしてそのために私たち一人ひとりができることは何なのかについて牧島議員から様々なお話を伺いました。今回はご講話の中から一部ご紹介させていただきます。
牧島 かれん
衆議院議員 前デジタル大臣
神奈川県横須賀市出身、国際基督教大学卒業後、米国ジョージ・ワシントン大学、ポリティカルマネージメント大学院にて修士号を取得。日本に帰国後、国際基督教大学行政学研究科にて博士号取得。2012年の衆議院議員選挙において神奈川17区より立候補し、初当選。2016年の熊本地震の際には、内閣府大臣政務官として現場対応。2021年から2022年までデジタル大臣として、日本のデジタル化を牽引。今では自民党でのデジタル関連の政策などで力強くリーダーシップを発揮。
——牧島議員がLGBTQ+の課題に取り組もうと思われたきっかけについて教えてください。
私自身、LGBTQ+の方々を巡る課題に取り組もうと決めたのは、実は国会議員になる前からです。私は国際基督教大学(ICU)とアメリカのワシントンD.C.にあるジョージ・ワシントン大にそれぞれ通っており、そこでの経験が大きく影響しています。
まず、ICUなのですが、そこでは様々なバックグラウンドを持った学生や日本人以外の学生も数多く生活をしており、人種、考え、育った環境が自分と異なる多様な人が周りにいるということが当たり前の光景でした。
また、私は小中高は女子高に通っていたんですけども、一人一人が伸び伸びとその人らしく振る舞うような学生生活を送らせてもらえました。女子しかいない女子高ですから、女の子だから重たいものは持てませんとかということもなく、文化祭であろうが、体育祭であろうが、何でも自分たちで完結させるという気概が学校中に溢れていました。女子しかいない環境は一見すると多様性が乏しいように見えるかもしれませんが、むしろみんなが自分の個性に合った形で輝く場所だったと思いますし、それもダイバーシティーだと思っています。
ワシントンD.C.に留学してからも、人種や性別など色々なカップルが楽しく過ごしてる風景やメトロで同性カップルが手を繋いで出勤、通学してるっていう世界を、自然な光景として日々を過ごしてきました。
これまでは当たり前の光景だと思っていたものを大きく覆す出来事がありました。それが、9.11の同時多発テロ事件です。
2001年の9月11日に私はワシントンD.C.にいて、ペンタゴンからほど近いところで、あの日を迎えました。ペンタゴンが攻撃されたことが大きなショックでしたが、その後、ニューヨークやD.C.で被害を受けた方の中に同性カップルの方たちがいて、二人で築き上げてきた家や財産がなくなってしまったり、残念ながらそのカップルの片方の方が、テロの攻撃によって命を奪われてしまったりしたということを知りました。そしてその時、残された方が、大変な悲しみと苦しみの中にいるにもかかわらず、その二人が同性カップルで婚姻関係ではないから、二人で築き上げてきた家とか財産を引き継ぐことができないかもしれないという問題や、実は家族にカミングアウトしていなかったために、亡くなってしまった方のパートナーである自分の存在を、パートナーの家族にどうやって伝えたらいいんだろうかと悩んでいるということも知りました。
9.11という日は私にとって、世界的な悲劇の日であると同時に、同性であるが故に他の男女のカップルでは直面しないような苦しみに直面している人たちがいるということに気づかされた日でもあったんです。そしてそれは、日本でも同じだと気づきました。もし友人の同性カップルの片方が病院に搬送され、パートナーの方が婚姻関係ではないという理由で手術の同意書にサインができなかったら、この友人の命はどうなってしまうんだろうかとか、二人で暮らしたいと思っているけど、不動産屋さんに同性カップルでの同居を断られてしまったら、その方たちは違う理由をつけて、二人での暮らしを営まなければならないのかとか。
9.11の時のような最悪のシナリオを考えたとき、同性カップルを取り巻く社会のあり方に、私は政治家としては取り組まなければいけないなと思い、2012年に当選して以来、ずっと取り組んで来ました。
ですので、9.11が様々な意味で私の国政に対するチャレンジの原点です。
——牧島議員が政治家になってからこれまでどのような形でLGBTQ+の課題に取り組んで来られましたか。
2012年に国会議員になった当時は今のように様々な団体が実施しているアンケート調査などがなく、他のどの議員の先生がこのLGBTQ+を巡る課題に関心があるか全く分からないところからのスタートでした。
そのような中で、当時性同一性障害特例法の起草メンバーとして超党派の活動を色々とされていた馳浩先生(現石川県知事)とお会いし、まずは小さな勉強会を行うことから始めました。勉強会と言っても当事者の方とアライになっていただけそうな先生を集めた5人程度の本当に小さな意見交換会です。(このようなところから始めたのは)法律案を作るというよりは、まずはLGBTQ+の方々が事実として存在しているということ、そしてどのような思いでいらっしゃるかを知っていきましょうということが、必要だと思ったからです。
当時他の議員にお話をすると多くの議員が「自分はLGBTQ+の方々に会ったことない」、「自分の周り、選挙区にはそういった方々はいない」とおっしゃっていたこともあります。きっとその先生の周りにいなかったというよりも、話しかけられなかったというのが事実だろうと思いますが、まずはLGBTQ+の皆さんのことを、一緒に知ることから始めようと思いました。勉強会では、参加した先生からは「女性同士のカップルの場合には、どっちが家事をしてるんですか」のような、素直で率直な質問が出るなどのやり取りを通して当事者の皆さんのお話を伺っていきました。
その後、自民党が大きく動き始めたのは、今の超党派の議員連盟会長代行を務めている稲田朋美衆議院議員が自民党の政調会長になったことがきっかけです。稲田政調会長は当事者のお話に触れたことがあったので、党内での正式な政策の議論を行う場である、特命委員会を作りましょうということへとつながったんです。
——牧島議員が今まさに取り組まれているLGBT理解増進法案の活動について教えてください。
まず、おそらく皆さんの中には「理解増進」って何?なぜ差別禁止じゃないの?と思っていらっしゃる方がいるかと思います。
これには、いくつか理由があります。まず、法案を審議するにあたり、議員が提案をする議員立法というものは、全会一致による可決が望ましいという慣例があることです。
各政党には色々な思いがあります。また、通常国会では会期の関係などもあり、内閣提出法案の審議が優先されます。つまり、議員提出法案はその短時間の隙間で多くの関係者と議論、合意し、委員会、本会議での採決を迎えなければならないのです。そして、全会一致での可決ということはつまり前提として、私も所属している自民党議員全員が一致する法案が必要ということです。
自民党も他の政党と同じく、内部で様々な考えを持った先生がおられます。それでも、社会に寛容な精神で、あらゆる人々の暮らしてゆく環境を整えていこう、そしてその寛容な社会を作り上げるためには、まずは理解を増進していこうという部分は皆さん合意いただいています。
一方で、差別禁止ということになりますと、特定の行為は差別にあたると定義することになるため、その定義と解釈によっては社会の萎縮を生んでしまうのではないかと懸念され、賛成できないという先生もいらっしゃいます。ですので、結果として何の法案も成立しないという状態になってしまいます。よって、理解増進法案とすることでより多くの賛同者を集め、結果として法案成立に至るということになります。ただ当事者の方の中にも様々想いがあることは受け止めておく必要があると考えています。
私たちは、2年前にLGBT理解増進法案をどうしても成立させたかったので、国会提出できず、この時は本当に悔しかったです。
2年前はオリンピック・パラリンピック東京大会があり、これが法案成立の絶好のチャンスと私たちは信じてました。なぜなら、東京はソチとは違うぞと全世界に伝えたかったからです。2014年ソチオリンピックの時には、ロシア国内でLGBTQ+コミュニティへの抑圧行為が行われており、これに抗議するためにアメリカを初めとする主要国は首脳レベルを開会式に送りませんでした。そのようなそのソチ大会とは、東京大会は違うということを示すためには、理解増進法案をやっぱり大会前に通すべきとずっと訴えていたのですが、自民党の総務会が通らず結局は通すことができませんでした。
今年2023年は、G7が日本で開催されます。私たちは今度こそ、このG7サミット前までに法案成立という目標を掲げてきました。私たちのメッセージを一つにまとめて、法律として、国内の皆さんにも、そして国際的にも全世界に胸を張って提示できるように、また今日から頑張ってまいります。ぜひ応援してください。
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著者
オカタケ ユウキ
株式会社セールスフォース・ジャパン
コンテンツエディター
ハードな体育会系から何故かSalesforceにやってきた異色の新人エディター。マーケティングはまだまだヒヨッコだが、何かと社内で「よろしく!」と頼まれがちな苦労人だったりする。(ニア)Z世代の風を社内に吹かせるべく、色々企んでいるらしい。
監修
河津レナ Lenna Kawazu
株式会社セールスフォース・ジャパン
D&I Recruiting Team
ノンバイナリーを自認し、交際15年目の女性のパートナーと暮らしている、D&I Recruiting Teamメンバー。子どもの頃からオーストラリアで暮らした後、帰国し日系のメディア業界に飛び込んで、様々なカルチャーショックを受ける。2022年4月にSalesforceに入社し、自分らしく働けることに喜びを感じている。
勉強会運営・記事監修(Supported by)
Outforce
OutforceとはSalesforce内のLGBTQ+への理解促進に取り組む従業員グループで、社内向けの勉強会やSalesforceも協賛しているイベント「東京レインボープライド」(TRP)への支援、従業員の参加促進などの活動を行っています。