データについて、あるべき姿のビジョンを持つことは、マーケティング戦略において非常に重要です。そして、信頼できるデータ基盤の構築は、そのビジョンを実行するための最初のステップとなります。
企業によるユーザーデータの収集方法が注目される昨今、AppleやGoogleの発表も加わり、企業は全面的なマーケティングの変更を余儀なくされています。
これらの変化は驚くべきことではなく、消費者のプライバシー保護に向けた継続的なトレンドの一部なのです。また、ヨーロッパのGDPRやカリフォルニアのCCPAといった 地域のデータプライバシー規制(英語)を補完するものでもあります。これらの改正は、企業がデータを活用して顧客体験を理解し、構築する方法の変化を反映したものであり、マーケティングデータ分析に新たな時代が到来したことを示しています。
この変化により、マーケティング担当者の仕事は、目にみえるよりもずっと複雑化しています。表向きには、マーケティングチームはこれまで通り、有意義なカスタマージャーニーの一部である多様なエンゲージメント、キャンペーン、およびアクティベーションを実施、構築しています。しかしその水面下では、新たなマーケティングチャネルとテクノロジーが出現し、変化する規制や消費者の期待に企業が対応するために、さらに複雑な世界が広がっているのです。
この新時代において成果を達成するには、マーケティング担当者がデータを利用して、情報を提供し最適化することが極めて重要です。Cox Automotive社とSobeys社で最先端のマーケティングを行う担当者に、どのように独自の道を切り開き、それが今日のデジタルファーストの状況においていかに企業を成功へと導いているのかについて、お話を伺いました。
今回は、両企業がマーケティングデータ分析をどのように適応させ、より効率化を実現して、カスタマージャーニー全体の成果を向上させたかを紹介します。
Sobeys社がどのようにコネクテッドかつパーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを生み出しているかをご紹介します。
消費者のプライバシー保護に向けた動きは加速しており、それ自体は正しいことです。しかし、データ収集の規制が強化されたことの影響は出ており、開封率や成功のベンチマークに使われる測定方法など、さまざまな指標が信頼できなくなったことを意味します。このため、マーケティング担当者は戦略を転換せねばなりません。
これまでの成功指標が廃れ、顧客がますますデジタルファーストになるなか、マーケティング担当者は、真にクロスチャネルでパフォーマンスを見ることの重要性に気づいています。
マーケティングチャネルを個別に評価するのではなく、統一された戦略の一環として、すべての投資案件のパフォーマンスをまとめて評価するようになっています。昨年は68%のマーケティング担当者が、クロスチャネルの連携はサイロ化または重複とは対照的にダイナミックだと述べており、2018年のわずか31%だったところから上昇しました。
また、マーケティング担当者はファーストパーティデータをより重視するようになっています。オーディエンスデータを購入するためにオープンデータエクスチェンジのような旧式のシステムに頼るのではなく、ユーザーの同意というレンズを通してファーストパーティデータ資産を構築する方法へと近代化しているのです。
Cox Automotiveは過去2年かけて、見込み客や顧客の全体像を把握し、各ブランドから集めた役割、エンゲージメント、製品購入に関するデータを一元化しています。現在では、特定のオーディエンスをターゲットにして、製品やサービスのメッセージをカスタマイズできます。
Cox Automotiveはその進化したデータ戦略により、アウトバウンドコミュニケーションにおけるオーディエンスのセグメンテーションを改善できました。セグメントや役割ごとに価値を定義して、解決すべき問題や各製品に伝えるべきメッセージを明確に把握できるようになったのです。
データに対するビジョンを持つことは、あらゆるマーケティング戦略において非常に重要なことです。信頼できるデータ基盤の構築は、そのビジョンを実行するための最初のステップとなります。世界中のマーケティング担当者の約5人中4人が、マーケティング主導の企業成長と顧客体験を実現するための鍵は、データ品質にあると回答しています。
マーケティング担当者は広告、顧客エンゲージメント、デジタル体験の提供、コンバージョンの促進などのために、テクノロジースタックでさらに多くの異なるプラットフォームを使用するようになっています。この複雑さにより、チームは取り組みの最適化ではなく、信頼できるインサイトを作成するためのデータの接続と調整に多くの時間を費やすことが多々あります。
マーケティングリーダーはデータガバナンスの自動化に投資して、キャンペーンのネーミングや分類、トラッキング要件、データ配信、QAの管理など、手動でのデータ集計からチームを解放しようとしています。
適切なマーケティングインテリジェンスプラットフォームはコーディングを必要とせず、クリックだけで容易にデータ接続が可能です。こうすることでマーケティング担当者はデータの準備に費やす時間を短縮できます。ですが、データの接続だけが重要なポイントではありません。マーケティングインテリジェンスは、データを統合して一貫したフレームワークを作成し、生データを充実させるうえで役立ちます。すなわちデータポイントの海に迷い込むことなく、実用的なインサイトを見出す手がかりを得られます。この取り組みは、自動化された分類管理、柔軟な整合ロジック、包括的なデータガバナンスツールにより、さらに強化できます。
データエコシステムの変化に合わせて進化する正確なデータ基盤があれば、マーケティング担当者は運用を効率化し、より多くのテストや学習を行うための時間を確保できるのです。その結果、時間とプログラムのROIの双方が最適化され、ビジネスに大きなインパクトを与えられます。
クロスチャネルとファーストパーティデータにアクセスできれば、マーケティング担当者はマーケティングジャーニー全体にわたって顧客ベースの成果を測定できます。そしてそのインサイトを活用して、目標達成に向けた取り組みを推進できるのです。たとえば、マーケティング担当者は、クリック数や開封数などのアッパーファネルの指標に注目するのではなく、登録や購入などのダウンストリームの成果を中心としたKPIにシフトすることができます。
食料品チェーンのSobeys社は、定性および定量データを使用して、顧客ライフサイクル全体にわたる目標達成の測定方法を改善しています。
マーケティングコミュニケーション担当バイスプレジデントのErika De Haas氏は、「測定できれば、目標を達成できるのです」と述べています。「Salesforce Marketing Cloud を使ってフルファネル体験を構築するなか、ファーストパーティデータに基づく明確な基準値を設定することは、体験をつなげるだけでなく、その効果を促進し、ロイヤルカスタマーベースを拡大する上で非常に重要になります。」
Sobeysの戦略は、セールスファネルを1つのつながった体験としてアプローチし、すべてのタッチポイントをロイヤルカスタマー創出に向けて推進する、というものです。
「ファネルの最上部では、カナダの家庭がSobeysを選ぶ原動力となる、感情的なメリットに着目しています。ブランド嗜好について調査したところ最も重要なポイントは、ブランドの当事者意識と資産価値だとわかりました。」と、De Haas氏は語ります。「同じお客様がファネルを通過するとき、私たちはより機能的なメリットを提供するようなコミュニケーションと体験を構築します。そして、成功の評価はそのお客様との取引量ベースに偏りがちです。」
De Haas氏は、Sobeysの成果は常に一つの指標で測定されるのだと言います。「家族に必要なものを提供し、買い物をする場所としてSobeysを選び続けてもらえるかどうか?」という指標です。現在、チームはカスタマージャーニー全体でその指標を達成するための新たなツールを手に入れました。
「お客様がファネルの最上流で当社のブランドと関わりを持ちながら途中でやめてしまうケースと、途中から関わりを持ちながら、店舗でやめてしまうケースでは、異なる戦略が必要になります」と、De Haas氏は続けます。「データを総合的に監視することは、お客様の当社におけるジャーニー全期間を通じて、当ブランドとお客様を確実に結びつけていく差別化要因となります。」
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製品マーケティング担当シニアディレクター
Loretta Shenは、Salesforceの製品マーケティング担当シニアディレクターです。マーケティングインテリジェンス製品のGTM、メッセージング/ポジショニング、営業育成、カスタマーマーケティング、コンテンツ戦略、キャンペーンにフォーカスしたチームでリーダーを務めています。
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