Salesforceを導入している業種も規模も様々な企業が、自社の活用事例を発表し、技術・定着化・業務改善の3つの観点で審査され、日本一が決まる、「SFUG CUP 2021(第9回Salesforce全国活用チャンピオン大会)」の決勝大会が9月8日に開催されました。
2011年に初めて開催されて以来、Salesforceのユーザー同士がノウハウを共有し、お互いを高め合う場として、毎年盛り上がりを見せてきた当大会。
第9回目となる今回も昨年に引き続きオンラインで実施され、4,000名を超える視聴者が見守るなか、予選会を勝ち抜いた6社が熱いプレゼンバトルを繰り広げました。そして見事第1位に輝いたのは、株式会社日立ソリューションズです。さらに第2位には、株式会社インターネットイニシアティブ、第3位には有限会社珊瑚建材がランクインしました。
今回はその大会の様子と、決勝に出場した6社のプレゼン内容をレポートします。
決勝に出場したのは、「三菱電機株式会社」「株式会社リプライス」「有限会社珊瑚建材」「株式会社ROBOT PAYMENT」「株式会社日立ソリューションズ」「株式会社インターネットイニシアティブ 」の6社です。
プレゼン時間は、各社30分。審査は「定着化」「技術」「業務改善」の3つの観点で、審査員と視聴者による投票で行われました。
それではさっそく各社のプレゼン内容を発表順にご紹介します。
プレゼンター:上村亜津子さん
三菱電機株式会社のFA 海外事業部が、Salesforceを導入したのは約2年前。顧客情報を一元管理することで、部門間連携を強化しグローバルサポートを強化すること。そして各地域での営業効率を向上させることを目的として、取り入れることとなったといいます。
Salesforceの担当となった上村さんは、まず定着化のために尽力しますが、その際に意識していたことがあります。それはイソップ物語の「北風と太陽」の風のように、力づくで人を動かそうとせず、太陽のようにゆっくりあたたかくアプローチをすることです。
「誰も利用してくれないなら自分がやる、ということで、Chatterに『ここが課題なのでこうしていきたい』と毎週、課題と対策について投稿することを習慣化しました。そしたら真似してくれる人も出てきたんですよね」
こういった努力が実り、導入から約1年後、ログイン率90%、営業報告件数160%、Chatter投稿520%となり、Salesforceの定着を実現しました。
上村さんはこの2年間について、「Salesforceで情報だけではなく、思いもオープンにしていった結果、仲間ができてチームが強くなったと実感しました」と振り返り、
今後は「Salesforceを使ってカスタマーサクセスに貢献していきたい」と語りました。
プレゼンター:村中菜都美さん
株式会社リプライスは、再生住宅を専門とした不動産会社です。Salesforce を導入するまでは、物件などの情報をすべてExcelで管理していて、年間数万件も蓄積される情報を生かしきれていないことが課題だったそうです。
そんな状況下で、Salesforceを定着させていくこととなった村中さん。
「導入初日からエラーが発生するなど、完璧なサービスインではなかったからこそ、相談グループを作ったり、毎週勉強会を開催したり…。みんなの意見を聞き、それに応えていくことでSalesforceはさらに良くなっていくという雰囲気を醸成しました」
そんな地道な取り組みでサービスインを乗り越えた後、活用のフェーズで行ったのが「個別のSalesforce相談会」です。そこで出たユーザーの要望と改善策の一部がこちら。
このように社員の要望に対応した結果、導入から1年後のユーザーログイン率は100%を達成。約3万件もの情報がSalesforceに集約され、ワンクリックで必要な情報にアクセスできるようになりました。
今後の展望について、村中さんはこのように語ります。
「今後はSalesforceをSalesforce に蓄積されたデータを活用するだけではなく、戦略に生かしたり日々の運営に生かしたり組織づくりにも生かしていきたいです」
プレゼンター・村岡孝明さん
有限会社珊瑚建材は、沖縄県特産の琉球石灰岩を用いた建設資材の販売事業を行う会社です。現在Salesforceは、車両・機械類の管理や、顧客管理、売上分析などに利用し、売上、従業員満足度の向上、費用削減のために欠かせないシステムになっているそう。
そんな珊瑚建材が成果を出せた理由は、3つのこだわりを持って構築カスタマイズを実施したことにあります。
1. 情報の一元管理
事務所に行かないと確認できなかった情報もSalesforce上で一元管理し、すべてを見える化
2. データビジュアライゼーション
画像、グラフ、色を取り入れたテーブルで、直感的な理解を促す
3. 分析
Tableau CRMを使いこなし、車両・機械類の稼働状況から売上までを分析
そのうえで、村岡さんはさらなるデジタル化のために、社内会議にもTableau CRMを活用します。
そうした努力によって、約1年半で固定費5%を削減し、業務工数をひと月あたり50時間も削減を実現。そして村岡さんは、「定量的な効果はもちろんのこと、一番の成果は従業員の意識改革だった」と振り返りました。
さらに今後の展望については、このように続けました。
「費用削減のカスタマイズで、利益の追求弊社にあった弊社らしい Salesforce の構築。それによって『会社と従業員の未来を変える』ということを目指していきたいと思います」
プレゼンター:丹羽紗貴子さん
株式会社ROBOT PAYMENTは、企業の請求業務や債権管理を行う会社です。Salesforceを導入して約10年ですが、特に2020年からはセールスイネーブルメント室を設置し、3つの課題解決に向けて取り組んでいるそうです。
その課題と解決策がこちら。
1. 営業に関する活動が可視化されていない
Salesforceの拡張機能「Gmail インテグレーション」と「Sales doc」を活用
2. 新人の初受注までの期間が長い
「myTrailhead」を導入し、100以上の教育コンテンツを制作。
属人的な育成の体制から体系的な育成の体制にチェンジ
3. 営業プロセスが体系化されていない
オブジェクト構造の見直しと、フロー活用による入力工数の削減で改善
このようにSalesforceで様々な課題解決を行った丹羽さんは、最後に「ROBOT PAYMENTにおけるSalesforce」について、次のように語りました。
「弊社におけるSalesforceは、単なる商談進捗管理ツールではなく、営業の成果と紐付け、セールスeラーニングとしても活用するものとして位置づけています。私たちセールスイネーブルメント室はこれからも営業の成長を一番に考えて、一緒に併走する組織でありたいなと感じています」
プレゼンター:秦和男さん
株式会社日立ソリューションズは、2005年からSalesforceを導入。主に未発注案件のパイプライン管理に活用し、毎年度、営業利益率が上がり続けています。しかし秦さんは、導入してからの約10年間は黒歴史だったと振り返ります。
「当時は予算の99~101%しか、表に出さない文化が根付いたうえに『会議のための会議』も散見され、数値操作や社内の駆け引きは当たり前でした。そんな状況を打開すべく、思い切った目標を設定したんです。それが『10年以内にすべての情報を見る化し、業績会議をゼロにする。そしてリアルタイムのデータで経営会議をする』というものです」
その目標を達成するために、秦さんは以下の3つに取り組みます。
1. Lightningを新インスタンス環境を立ち上げ
10年以上Classicで取り組んだけれどうまくいかなかった。だからこそLightningに移行し「今までとは違うんだ」という本気度を見せるという戦略のもと実施。
2. SFA(フロー情報)と基幹システム(ストック情報)をあえて切り離す
受注できるかどうかもわからない柔らかいフロー情報を、堂々と入力できる環境を整える
3. データレイク&BIを稼働
入力したデータが活用される「夢」を実現する
秦さんはこのような前例のない施策で改革を行うことで、10年目標の達成に向けて順調な滑り出しができているそうです。そしてプレゼンの最後には視聴者へ粋な一句を贈り、プレゼンを締めくくりました。
「SFA入れるだけならただの箱。使いこなして業績アップ!」
プレゼンター:林賢一郎さん
株式会社インターネットイニシアティブは、主に法人向けのインターネット接続サービスやWeb 版クラウドセキュリティサービスを提供している会社です。2018年4月から「営業活動の最適化」と 「営業業務の分業」を目的に、Salesforceを導入しました。
導入後、林さんがまず取り組んだのが「自然と営業がSFAを使いたくなるような環境を整える」ことです。実際に取り組んだ内容がこちら。
これらの積み重ねによって、約1年半で「営業デフォルト」から「SFAデフォルト」への移行を達成。
最後に林さんは視聴者に向けて、次のようなエールを送りました。
「定着化までの長い道のりです。弊社は約1年半かかりました。しかしその価値は期待以上なので、粘り強く行っていくことが大切です」
いかがでしたでしょうか? 6社のプレゼンを通してわかった、Salesforceで業務を改善するために大切なことーーそれは推進者自身がSalesforceによって会社がより良くなっていくことを信じ、諦めないことです。推進者の熱量なくして、現場の社員の心は動かせません。だからこそ基本的なことではありますが、現場の社員に寄り添い、粘り強く声をかけ、熱量を伝播させていくことが大切なのです。
そのうえで一方的にならずに、社員一人ひとりの声を聞くことも必要です。「自分の声を汲み取ってもらえる」という実感があってはじめて、人は協力的になってくれるからです。
これらを徹底しながら、新しいツールを取り入れるなど常に試行錯誤し、ときには前例のないことにも果敢に取り組む。その姿勢こそが現場の信頼につながり、Salesforceで業務を改善する秘訣であるということを、6社の発表者がそれぞれの言葉で伝えてくれました。
ビジネスの成長と定着化のヒントが詰まった「SFUG CUP 2021 (第9回Salesforce全国活用チャンピオン大会)」。振り返りたい方も、見逃してしまった方も、こちらの動画から決勝の様子をご覧ください!
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