蓄積されたデータの分析結果を経営判断や意思決定に活かすデータドリブン。経営戦略に有効であるとして、営業やマーケティングの分野でも注目を集めています。
これまでも経営策略においてデータの裏付けは標準的におこなわれてきましたが、大変に手間と時間がかかる作業でした。データドリブン経営では、この経営戦略立案におけるデータの利活用を効率的に実現してくれます。
本記事は、データドリブン経営の概要やメリット、組織作り、ツール等について紹介します。
データドリブン経営実現のためには、自社の業務をあらゆるシーンを切り出しデータ収集することが必要です。収集したデータを蓄積・分析しデータドリブンツールを活用し可視化します。可視化することによりデータを客観的に捉え共有することが可能となります。
各種アルゴリズムやAIなどを利用し、データから有益なパターンやルールを抽出し経営層の判断、意思決定につなげることでデータドリブン経営が実現します。
世界中の企業が課題にあがるDXの推進。DXにおいてデータドリブン経営は必須の要素といえるでしょう。DXをおさらいすると「デジタル技術の活用により組織や企業のビジネスに変革をもたらし、新たな価値を創造すること」です。デジタル技術には業務のIT化やデジタル化が含まれます。
データドリブン経営では、その情報の塊を分析・可視化することで経営判断につなげていきます。時にビジネスモデルの変革にもつながるデータドリブンのデータ解析ですが、データの活用によりビジネスに変革を起こすことができるならば、それはまさにDXが意味する「デジタルによる新たな価値の創出、ビジネスの変革」の実現であるといえるでしょう。
データドリブンに関しては下記の記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
マーケティング担当者必見!! データ・ドリブンマーケティング分析で組織革命
かつてのデータ分析は、データアナリストが既存のビジネスモデルに仮説を立て検証結果をもとに改善を図るものでした。
一方、データドリブン経営のデータ分析では、データサイエンティストがデータの分析をおこないます。データサイエンティストは、データ分析だけでなく経営層の判断、意思決定に関わることもある重要なポジションです。データサイエンティストがビジネスモデルの将来的な変化も念頭に置いたデータの分析をおこなうことで、既存のビジネスモデルや仮設にとらわれない経営的判断へとつなげることができます。
データドリブン経営には多くのメリットが存在しています。代表的なものを紹介します。
従来のデータ収集や分析、経営戦略立案などの業務を効率化できます。データに基づく正確な判断で経営の意思決定をスピーディにおこなうことが可能です。データ分析結果はさまざまなアルゴリズムやAIにより最適と考えられる選択肢を抽出したものです。属人的な経営からロジカルな経営へシフトを希望するならデータドリブン経営を目指すことが一番の近道でしょう。
絶えず変化する市場動向へスピード感をもって対応できます。データドリブンでは企業が扱うあらゆるデータを収集・一元管理し、ビジネスモデルの将来的な変化まで視野に入れた分析をおこないます。分析の過程ではデータから自ずと最新の消費者ニーズや市場動向の変化を把握できるため、現在の市場に対応した経営戦略を立てることが可能です。
「業務効率化」と「市場動向の把握」の2点により、企業はかつてないほどにフットワークの軽い経営を実現できます。旧態依然の経営を続ける同業他社に対してビジネス上の大きなアドバンテージを得られるでしょう。
データドリブンな経営がうまく機能していないという企業には、いくつかの共通した特徴があるようです。その特徴を3つピックアップします。
社内全体にデータドリブン経営への意識付けが落とし込めているでしょうか?データドリブン経営は経営者単独でも部門単独でも実現しません。データドリブンの基盤になるビッグデータの収集には各部門を横断する必要があるからです。
会社の隅々までデータ収集への理解を行き渡らせるためには、まず経営層が必要性を認識し率先して動きましょう。
データ収集にはデータを格納するためのサーバーやストレージなどが必要です。データを継続的に集め続ける仕組みづくりが重要になってきます。例えば、工場の情報を取り続けるためにはIoTを使ってデータを収集する仕組みを構築するなどの整備が必要です。こうした環境を整えずデータドリブンツールだけを導入しても効果的なデータの分析は実現しません。
また導入したデータドリブンツールの使い方がわからない、間違っているなどの場合も問題があります。データドリブンは目的や業務領域に合ったツールを選び有効に利用できて初めて経営のプロセスとして成り立ちます。データドリブンという言葉に振り回され、理解がないままデータを分析してもうまくはいかないのです。
労働力不足が叫ばれるなか、人材確保を大きな課題と捉える企業は少なくありません。とくに日本ではIT人材の不足が長年の課題です。データドリブンの知見を持つ人材が確保できずに導入そのものを見送る企業もあるでしょう。働き方改革の推進で労働環境にも配慮しなければならないため、複数名のデータドリブン人材を長期的な視点で育成する努力も企業には求められます。
データの収集、可視化、分析のタスクを手作業でおこなう場合は多大なコストが発生します。そのコストを削減し効率化に貢献するのがデータドリブンツールです。具体的な機能などを見ていきましょう。
データドリブンツールとは、データの収集や可視化、分析といったデータドリブンな経営を実現するためのステップを効率的におこなうためのツール(ソフトウェア)です。BIツール、MAツール、SFA、CRMツールなど適用対象の領域によって種類が分かれています。経営的な観点の領域で利用するにはBIツールが適しています。次の項でBIツールの詳細を解説します。
BI(Business Inteligence)ツールには主にどのような機能があるのかを見てみましょう。
収集、蓄積されたデータのレポートを出力し可視化します。データおよび分析結果を客観的な情報として理解しやすい形にします。このレポートによりデータ分析をおこなうメンバーと経営層で認識を共有し、経営判断や意思の決定につなげます。
データマイニングは、ビッグデータに対して統計学の手法や機械学習を用いて有効な傾向やルールを発見するプロセスです。大量のデータの相関関係やパターン、異常値を見出すことで「知識」を掘り出します。
またデータマイニング機能では、仮説を立てる統計分析、仮説を立てない機械学習の両方の技術を用い、収集されたデータから知識や法則を得るためのプロセスを短縮かつ自動化します。
収集したデータをもとに売上や利益などのシミュレーションをおこなう機能です。過去の実績などのデータからパターンを把握し将来の予測データを出力します。予算計画を立案する際にそのベースとなるデータを予測する場合、マーケティング戦略を立てる場合などに利用可能です。
データトリブン経営はデータから経営判断をおこない利益や価値を生み出すことから、デジタル技術の活用によってビジネス上の新たな価値を生み出す「DX」にもつながります。その半面、企業全体でデータドリブンへの理解を高めデータ分析のための環境を整えなければ、十分な分析結果が得られないことも紹介しました。
メリットや注意すべきポイントをしっかり踏まえたうえで会社のあらゆる部署や人材を巻き込んで取り組みを進めることがデータドリブン経営実現においては非常に重要です。行動を共にできる仲間と将来を見据えたデータ分析の必要性を組織に浸透させていきましょう。