現在、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が企業の命題となっています。総務省や経済産業省でもその必要性を説いており、各企業が懸命にDXに取り組んでいる状況です。
しかしながら、DXがうまくいかない、失敗したというケースもよく耳にします。それは一体なぜなのでしょうか。
そこで本記事では、DXを実現、成功させるためのポイントについて解説します。
DXは、今後の産業を支えるための課題として国を挙げて推進されており、総務省の「令和2年版情報通信白書」や経済産業省が2018年に出した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」などでも、その必要性が強く訴えられています。また、経済産業省の出した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」は、“もしDXが進まなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある“と警告する内容が記載されており、日本の企業に大きな衝撃を与えました。
日本におけるDX推進の動きは、アメリカ、欧州、中国などの諸外国と比較し一歩も二歩も遅れているとも言われており、諸外国を参考としながらも、追い越していけるよう取り組まなければなりません。また、グローバル化の流れにおいては既にDXに成功した諸外国の企業がビジネスの競争相手となっていくため、DXの実現とそれによるビジネス力の強化は、今や避けては通れない大きな課題です。
DXの実現へ向けて、具体的な施策としてCDO(最高デジタル責任者、Chief Degital Officer、Chief Data Officer)と呼ばれるポジションを置く企業も増えています。CDOは、古い体質の企業において専門的な見地からDXの必要性を説き、その推進に説得力を持たせる役割を担います。
全社的にDXに取り組むためには、部門を横断した変革への協調が欠かせません。その先導者として、CDOというポジションが必要とされているのです。
業務のデジタル化として、コンピュータ(PC)やインターネットが用いられるようになって十数年が経ちました。しかし現在、そこからさらなる効率化を図るべく、下記のような先端デジタル技術を導入し、有効活用していくことが必須となっています。
IoT | 「Internet of Things」の略。 各種の機器、設備をインターネットで接続し、データの収集及び機器等の制御を行う仕組み。 |
クラウド (クラウド・コンピューティング) |
インターネットを経由して各種のサービス、環境などを提供する仕組み。 |
AI | 「Artificial Intelligence」の略。 人工知能とも呼ばれ、ソフトウェアやコンピュータによりこれまで人間の脳で行われていた知的な作業を行う仕組み。 |
5G | 第5世代と呼ばれる高速な通信規格およびその実現に向けて必要な基盤。 |
モバイル | スマートフォンをはじめとした持ち運びのできる通信媒体の総称。 |
DXの実現に向けては、その成功のために企業が意識して取り組むべきポイントが存在します。そのポイントを以下に解説していきます。
DXの実現においては、IT技術を持ち、業務へのIT技術の適用を行い、DXを模索する「IT人材」の存在が不可欠です。しかしながら、労働人口の減少とIT技術の高度化により、IT人材の確保が難しくなっているのが実情です。
また、IT人材は育成に時間がかかるという問題もあります。IT分野においての横断的な知識に加え、自社のビジネスに精通する必要があり、短期間で容易に育てられるものではないのです。
だからといって、外部からのリソースでIT人材をすべて補う方法にも問題があります。外部リソースの人材も必要量の確保は難しく、リソースが確保できたとしても社内にノウハウが蓄積されないという問題があります。したがって、時間とコストをかけて人材を育成しつつ、外部リソースの利用も検討していくといった柔軟かつ複合的な体制によってIT人材を確保することが必要となります。
DXの実現においてそのスタート地点となるのが、明確な経営戦略の立案です。その経営戦略で立てたビジネスの目標を実現すべく、DXを導入し、構築していきます。経営戦略が起点とならずに導入されるITシステムやデジタル技術は単なる業務のデジタル化に終わり、DXにはなり得ません。
まずは経営者がDXに対しその本質を理解することが必要であり、そのうえでDXと繋がる経営戦略を練り、その目標の実現手法としてDXを作り上げる、という流れが重要となるのです。
DXを既存のIT関連部署、情報システム部門に任せるケースは、企業において多く見られます。しかし、DXについて成果の高い企業を見てみると、DX専門組織を立ち上げて取り組んだケースが多いというデータがあります。
DXを本気で実現したいのであれば、専門組織を立ち上げつつ既存の情報システム部門と協力して推進する体制を作り上げることが大切になります。
IT人材を確保し、経営戦略を組み、専門の組織を立ち上げてDXに挑むところまで準備ができているのであれば、あとはその取り組みを成功するまで続けることが必要となります。
古い体質や固定観念が強く残った企業であればあるほどDX実現への壁は高く、その取り組みが一度のチャレンジでスムーズに実現する可能性は低いでしょう。しかし、そこで諦めることなく、経営戦略で立てた具体的な目標に到達するまでPDCAを回し続けなければ、DXを実現することはできません。
デジタル技術を導入して効率的に業務が行えるようにすることは必須です。それに加え、新たなより良い仕事、サービス、価値を求めて、変化を恐れずに既存のビジネスを作り変えていける風土が企業になければ、革新といえるような大きな変化は生まれません。企業を形成する社員の意識さえも、DXにおいては変えるべき事柄の一つなのです。
なお、組織風土の改革についてはこちらの記事でも解説していますので、ぜひご参照ください。
DXの現場から〜Salesforceプロフェッショナルメンバーが語る課題と解決策 Vol. 5:DX成功のカギを握る「組織風土変革」と実現のためのフレームワーク
DXの実現には、デジタル技術の導入はもとより、DXを推進するための責任者を置き、専門部署を立ち上げ、会社の風土から変えていくことが必要となります。困難なミッションですが、DXが実現できなければ、近い将来に企業の競争力が低下し、苦しい経営状況となる可能性があります。
この記事をもとに、DX実現のために必要な要素を再確認しながら、ぜひその取り組みを進めてみてください。