国内企業において積極的な推進が求められているデジタルトランスフォーメーション(DX)。総務省や経済産業省もその必要性を強く発信しており、日本の企業にとっては喫緊の課題となっています。
DX実現への取り組みはただのIT化ではなく、企業にとって大きな変革となるものです。そのため、世界の企業でもその成功率は1割以下といわれています。この記事では、DXの失敗の理由について分析し、改善案を考察していきます。
IPA独立行政法人情報処理推進機構の2020年のレポート「DXの実現に向けた取り組み」によると、一部の先行企業を除き日本の大企業・中堅企業の多くがDX実践に足踏みをしている傾向があると報告されています。国内での取り組みでも、DXを始めたという声は聞かれますが、成果が上がったという情報は多くはありません。
一方で、DXや業務のデジタル化に成功した企業は他の企業の2倍以上のスピードで業績が伸びているというデータもあります。
それほどの成果が見込めるのであれば、よりいっそうDXを成功させたいものですが、なぜ失敗してしまうのでしょうか。また、その対策はどのように打てばよいのでしょうか。ここで具体的に見ていきましょう。
ITが発達した今の時代、顧客のニーズや希望に合った製品、サービスを作りあげるためには、業務のデジタル化、ビジネスプロセスの刷新、そして企業風土の変革などは欠かせません。
しかし、ITシステムやビジネスプロセスを刷新することがDXの最終的な目標ではありません。新たな仕組みを作った上で、その運用に対応できる体制を作り、その体制のもとで何を果たすかということが大切になります。その指針がないことでDXが失敗するケースは多々見られます。
■ 改善案
自社にとってDXの定義を定めることがスタート地点となります。DXの定義を定め、その定義にのっとってマイルストーンを設定し、仕組みづくり、運用体制づくり、利益の上がる運用ができるところまでを目標としてスケジュールを立てましょう。
DXを成し遂げるまでの道のりは長く険しいものです。しかし、変革とはそれだけのコストがかかるものなのです。その覚悟を持ちながら取り組みを続け、いつか先進的な変革を実現できた際には、ビジネス競争において大きなアドバンテージを得ることができるでしょう。
DXの実現には業務のデジタル化が必須です。たとえ現場担当者の長年の経験と勘に支えられた業務が存在したとしても、そのプロセスを可視化し、デジタルで扱えるものに変えていかなければなりません。デジタル化が行われていない業務はDXの実現において「足かせ」となってしまうのです。
■ 改善案
現在、紙ベースやアナログの運用で行っている業務をすべてデジタルで管理できるようにすること。いわゆるデジタライゼーションを行う必要があります。デジタル化したデータを活用して効率化、高収益化を図ることこそがDX実現へとつながる取り組みだといえます。
DXには業務のデジタル化が不可欠です。しかし、デジタル化をするだけでDXは実現できません。DXとは、ビジネスへの考え方そのものを変えることでビジネスに変革をもたらす取り組みだからです。
DXには、企業の体質、ビジネスへの考え方の変更なども求められ、各企業に合った方法で行われる必要があります。他社の取り組みをそのまま適用しようとしても、うまくはいかないでしょう。
■ 改善案
企業におけるDXの必要性を確認し、経営層からDXの実務担当者、現場にまでそれを共有して、企業におけるDXの定義を明確にすることが大切です。その後、実現に向けて何をする必要があるのか、具体性のある目標や目的を、中期・長期の目線で設定し、継続的に取り組んでいく必要があります。
失敗するケースも多いといわれるDX。その失敗は、ビジネスの停滞や部門の閉鎖などにつながるケースもあり、企業や働く人にとって大きな影響が出かねません。それでもDXの推進が求められ、それに挑む企業は多いのはなぜなのでしょうか。
それは、単純にDXを失敗した場合のリスクと比べても、DXに成功した場合のメリットの方が大きいというのが一つの理由でしょう。DXを成し遂げた先進企業が実際に大きく業績を伸ばしている姿を目の当たりにした際、経営者であれば「その効果を得たい」と考えるのが当然です。
また、企業経営の視点から考え、DXを実現できなければ将来的に競争力を失い、企業の存続が危ぶまれてしまうことへの危機感の現れともいえるでしょう。
DXは、ビジネスプロセスや企業風土、従業員の意識改革など、企業の考え方そのものの変革であり、業務のデジタル化という基盤と正しい認識、目標設定などをしっかりと行い取り組む必要があります。
失敗するリスクはあっても、取り組みを避け続けるわけにはいきません。今DXに取り組み、実現できなければ、近い将来に企業間の競争力で大いに後れを取ってしまう可能性があります。その危機感を持ち、本質的な変革を成し遂げることが、企業には求められているのです。