シェアリングエコノミーと呼ばれる新たな経済の仕組みをご存知でしょうか? 働き方の不一致や労働力不足を解消し、社会に豊かさをもたらす仕組みとして、今大きな注目を集めています。
ここでは、そのシェアリングエコノミーによりもたらされる影響、メリットやデメリットについてご説明します。
自家用車、自社ビル、正規雇用など、かつての日本では人やモノを独占的に所有することが当たり前とされていました。しかし、時代の移り変わりとともに「シェアする」考え方が広がってきていることを、日常の中で感じることがあるのではないかと思います。
まさにシェアリングエコノミーは、そうした時代の流れに沿った仕組みだといえます。矢野経済研究所によると、2018年度のシェアリングエコノミーの市場規模は、前年比132.2%の1,012億8,700万円でした。また、2023年度には1,691億4,000万円にまで拡大すると予測しています。このようにシェアリングエコノミーは、急成長しているマーケットなのです。
シェアリングエコノミーは、使いたいものを使いたいタイミングで借り、使わないものを使いたい人に貸す、非常に合理的な経済のあり方として注目されています。使わずに眠らせている乗り物や道具、利用用途のない土地や不動産など、現時点で不要なものを貸し借りすることで、すべての利害関係者に経済的なメリットがもたらされます。
そうした資産やスキルをインターネットを通じて共有するのがシェアリングエコノミーです。
シェアリングエコノミーの普及拡大は、以下の点で社会に大きな影響をもたらすと予想されます。
-働き方の多様化
-潜在的な労働力の活用
-可処分所得に対する幸福度の向上
従来の就労環境は、病気や家庭事情により十分に働く状況を確保できない人には適さない環境であると意見されていました。しかしシェアリングエコノミーは、働き方や収入を得る方法の多様化を促し、これらの課題の解決や負担軽減に効果を発揮すると考えられています。
また、休眠状態にある資産やスキルを活用する仕組みは、使用者にとって「最小限の支出で必要なものを揃える」ことに適しており、可処分所得の少なさによって資産の取得・所有ができないという課題を解決します。
このような点から、シェアリングエコノミーは多くの人に精神的・経済的な豊かさをもたらす画期的な仕組みだと期待されています。
シェアリングエコノミーにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。提供者や使用者にとっての魅力、懸念点についてご説明します。
使っていないけれど廃棄するつもりのない資産の存在は、多くの人に心当たりがあるはずです。いま社会にあるものを無駄なく活用し、すべてのものに新たな価値を与えられる点が、シェアリングエコノミーにおける最大の魅力だといえます。
たとえば複数本のギターを持っている人であれば、普段使っていないギターを、「買えるほどのお金はないけれどギターを習得したい」という学生に対して少額の料金で貸し出すとします。
そうすることで、ただ眠っていただけのギターが少額ながら持ち主の収入源となり、また学生はわずかなお金でギターの習得を目指せます。提供者・使用者ともに、win-winな関係を築ける仕組みなのです。
すでに所有しているものを貸したり、スキルを提供したりといった価値提供が主となるため、基本的に大きな初期費用はかかりません。休眠状態にしている資産さえあれば参入できるため、非常に始めやすい仕組みだといえます。
デメリットとしてあげられるのは、トラブルが発生した際の対処についてです。この仕組みに適用される法律の整備、あるいは保険や補償のあり方は、いまだ確立されていません。したがって、自己責任で利用しなければならず、提供者と使用者が互いに相手を見極めなければいけないため、安全面にはややリスクがともないます。
すでに日本国内で一定のシェアを獲得しているシェアリングエコノミー。その一例を分野別にご紹介します。
自宅や別荘など、家の一部・全部を宿泊客に貸し出す「Airbnb(エアビーアンドビー)」は、民泊系のシェアリングエコノミーとして有名です。
日本国内では、空き家の増加が以前より問題視されていました。一方では、インバウンド需要により訪日観光客が増えているにもかかわらず、外国人を受け入れる宿泊施設が不足しており、その確保が大きな課題となっていました。
そこで、空き家を宿泊施設としてリフォームし提供するサービスを始めたのが、Airbnbです。観光産業において人とビジネスをつなぎあわせる方法として期待されています。
訪問介護サービスの「CrowdCare(クラウドケア)」、人手不足の介護施設と協力者をマッチさせる「Sketter(スケッター)」など、介護分野におけるシェアリングエコノミーも盛んになってきています。今後、少子高齢化がますます加速する日本において、その課題を解決する1つの力になりそうです。
ベビーシッターや家事代行サービスを提供する「KIDSLINE(キッズライン)」、料理や掃除など家事全般を依頼できる「タスカジ」は、家事代行におけるシェアリングエコノミーの代名詞だといえます。
家事経験のある主婦や専門知識を持ったアドバイザーに家事代行を依頼することが可能です。また、自身の家事スキルを活かして技術や知識を提供する側になることもできます。
「CrowdWorks(クラウドワークス)」や「coconala(ココナラ)」は、特定のスキルを持ったスペシャリストと、スペシャリストに依頼したい人を結びつけるスキルシェアに特化したサービスです。
発注者が求人広告のような形式でスペシャリストを募集する、あるいはスペシャリストが自身のスキルを商品としてサービス内に掲載することで、利用者のマッチングが発生します。
いずれのサービスも、プラットフォーム内で受発注から納品・検収が完了し、トラブル発生時にはサービス運営者のサポートを受けられます。
レンタカーを借りるほどではない極めて短距離の移動や、憧れの高級車を運転してみたいといったニーズは、シェアリングエコノミーと相性の良いケースの1つです。
相乗りサービスとして有名な「Uber(ウーバー)」や、乗ってみたい自動車の貸し借りができる「Anyca(エニカ)」などのサービスが、車をもちいたシェアリングエコノミーに該当します。トヨタなど自動車メーカー大手もこの動きには注目しており、今後大きな注目を集めそうです。
駐車場のシェアリングエコノミーは、自宅などで空いている駐車スペースを貸し出すようなケースが当てはまります。
国内では「akippa(アキッパ)」が大手サービスとして知られており、2020年4月時点での利用者は約180万人に上ります。使っていないスペースがある人は、該当場所を撮影してパソコンやスマホから駐車場として登録するのみ。使用者も、パソコンやスマホからの簡単な操作だけで駐車スペースを利用できます。
シェアリングエコノミーの領域は今後ますます成長することが期待されており、令和時代の新たな価値観として定着することが期待されています。また、価値観が変化してゆくこれからのビジネスシーンにおいて、事業戦略の大きなカギとなりうる仕組みでもあります。ぜひ積極的にアンテナを張り、今後の動きに注目してみてください。